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11 アルタニア帝国 帝都2
260 友情5
しおりを挟む「ああぁぁ~……しんどっ!」
ダンジョンボスを一人で相手にさせられたオスカリは、殺人ロボがダンジョンに吸い込まれる姿を確認したら、その場にドスンと腰を落とした。
倒せなくはないが、一人でやるのは勇者でもかなり疲れる作業だったようだ。
「お疲れさん」
そこにヤルモが労いの声を掛けた。
「お前、いっつもこんなことやらされているのか?」
「イロナのお眼鏡に適わないラスボスだったらな。それにレベルを上げないと痛いし……」
「痛い? ……あっ! そんなことのためにレベル上げさせられてるのか!?」
察しのいいオスカリ。一度ヤルモが拷問のような性的奉仕をされているところを見たことのあるから、ヤルモがムリヤリ戦わされていると気付いてしまった。
「てか、お前がトドメを刺したせいで、俺に経験値がちょっとしか入らなかったんだが……」
「いや、それは嬢ちゃんのせいだろ? ヤルモも止めてくれないし……」
「それでも大赤字だ。だからあの宝箱は、俺が貰ってもいいか??」
「お前!? 最初からそれが目的だろ!!」
ヤルモに関しては、察しが良すぎるオスカリ。しかしヤルモは横取りされたとブーブー言っているので、オスカリは譲ることになっていた。
「小躍りしてやがる……いったいいくらの借金があるんだ?」
金に意地汚いヤルモを残念な目で見ながら……
「あいつが倒したんだ……きっといい物が出るはず!!」
ヤルモが宝箱を横取りしたのは、勇者パーティと比べてレジェンド装備の出現率が極端に悪かったから。これでここのダンジョン攻略は最後になるのだから、どうしてもお高いレジェンド装備をヤルモは手に入れたかったのだ。
「なんだこれ??」
しかし、見たこともない物が出たので、ヤルモはガックシ。
「それって……殺人ロボの肩に乗ってたヤツじゃね?」
オスカリの言う通り、出て来た物はバズーカ砲。どう見ても戦士用の武器ではない。
「おお~い……勇者が倒したらいい物出るんじゃなかったのかよ」
「お前……やっぱそれが目的で文句言ってやがったのか……」
「くっそ~」
オスカリにツッコまれても、ヤルモは文句タラタラでバズーカの確認をする。
「あれ? レジェンドってなってる」
「レジェンドならよかったじゃないか」
「そうだけど……こんなの装備できる奴いるのか?」
「う~ん……見たこともない武器だからな~」
「てことは~……嘘だろ? これ、買い取ってもらえるのか??」
「知るか。俺たちはラスボス戦の準備するから、帰るならさっさと帰れ」
「冷たいこと言うなよ~。俺たちダチだろ~? いい物出たら交換してくれよ~」
「こんな時だけダチとか言うな! あと、心の声が駄々漏れなんだよ!!」
珍しくヤルモが甘えてオスカリが押し返している。オスカリは自分で肩を組むのはいいのだが、オッサンから来られたら嫌みたいだ。
とりあえずヤルモも諦めて帰ろうとしたが、イロナがオスカリパーティの戦闘を見たいと言い出したので入口に戻り、扉から出てしばし休憩。
ダンジョンボスの復活まで一時間の待ち時間があるので、この間にオスカリはできるだけスタミナを回復しようと努めていた。
「うっし! これだけ休めたら十分だ。行くぞ!!」
「「「「おう!!」」」」
オスカリパーティ再始動。全員気合いの入った顔をして、ダンジョンボスとの戦闘を開始するのであっ……
「邪竜だ!!」
「「「「「あ……」」」」」
レジェンドドラゴンと同じくらい強い邪竜の出現したからには、イロナに奪い取られるのであったとさ。
イロナVS邪竜は、いつも通り空中戦。
「俺たちの獲物……」
しかし、オスカリパーティは出番を取られて呆気に取られている。
「すまん。ドラゴンを見たらダメなんだ……」
なので、ヤルモが謝罪。イロナを止められないのだが、冒険者としてのルールを破っているのだから謝るだけはしたようだ。
「チッ……もういい。でもよぉ~。嬢ちゃんはいったい何をしてんだ?」
「あん?」
「嬢ちゃんなら、あっという間に倒せるだろ? なのに、何を手間取っているんだ??」
「あ~……趣味だ」
「趣味??」
オスカリたちは首を傾げているので、ヤルモはもう少し補足。
「何度か見たことあるだろ? ドラゴン相手だと、首を斬り落とさないと気が済まないみたいなんだ」
「あっ! 見た!! ラスボス相手でも同じことしてんのか!?」
「ラスボスは斬りごたえがあるから、そのあとはめっちゃ笑顔になるぞ」
「嬢ちゃんが機嫌が良くなるのはいいんだけど……」
どうしても、趣味が気になるオスカリたち。だが、イロナの戦闘は美しいので、そんなことはどうでもよくなる。
「「「「「おお~」」」」」
イロナは邪竜の首を中心に傷を負わし、発狂中でもお構い無しに刀を振り続け、ついには一刀両断で邪竜の首を斬り落としたからだ。
邪竜の胴体と頭が離れて地面に落ち行くなか、オスカリパーティは自然と拍手を送っていたのであった……
「こりゃまた綺麗に斬ったな」
「うむ。我の作品の中では、一、二を争うできだ。やはり、この刀はいい!」
邪竜だったオブジェに近付いたヤルモは、イロナにお褒めの言葉。いまだにヤルモに違いはわからないが、イロナが満面の笑みなので褒め続けている。
「マジかよ……あんなぶっとい首が一刀両断だぞ……」
「イロナにとっては、敵じゃなくて、銅像と変わらないのか……」
そこに近付いたオスカリやヘンリクたちは、ずっとコソコソやっている。「やっぱアレ、魔王じゃね?」とか言いながら……
「くっ! SSS級の刀か……イロナの予備に使えるからまだマシか」
ついでに宝箱を開けたヤルモは、「金の亡者じゃね?」とかオスカリパーティに言われ続けるのであった……
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