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11 アルタニア帝国 帝都2
257 友情2
しおりを挟むオスカリパーティが無理して地下40階のセーフティーエリアで待ち構えていたからヤルモは怒っていたが、いるものは仕方がない。テントは十分距離を取ったところに張って、ヤルモとイロナはオスカリパーティの食事に参加する。
今日のディナーはオスカリパーティが協力して作ったらしいが、最近、道具屋が複数開店していたので、お湯を加えるだけで美味しく食べられる物ばかりが並んでいる。
「そんで……お前たちはこれからどうする?」
急にオスカリに話を振られたヤルモは食べる手が一瞬止まったが、口に入れて飲み込んでから答える。
「これからって??」
「ここの特級ダンジョンもだいぶレベルが下がって来ただろ?」
「あ~……」
ヤルモを含め、三組のパーティがニヵ月の間にダンジョンボスを倒しまくっているので、この特級ダンジョンは落ち着きを取り戻している。
ヤルモもそのことには気付いていたが、特にやることもないし、他のダンジョンより稼げるから自分から言わなかったようだ。
「やることがあるなら、もう帰っても大丈夫だぞ」
さすがは勇者。とても一般人には見えないヤルモとイロナにも気を遣って、あとのことは自分たちで引き受けようとしている。
「てか、お前たちはどうすんだ??」
「俺たちは、アルタニアのダンジョン巡りだ。いちおう他の町からは大丈夫と聞いているけど、信じられないから確認しとこうと思ってな」
「へ~。勇者様らしい仕事だな。でも、そんなのニコたちにやらせたらいいんじゃね?」
「あいつらは、しばらくここの特級ダンジョンを任せるんだ。二手に分かれたほうが早いだろ」
「ま、確かにな~」
「んで、お前たちはどうすんだ?」
ヤルモが納得してパンを口に投げ込んだところで、オスカリから最初の質問が再び来たので、ヤルモは頭をガシガシ掻きながら答える。
「つっても、特にやることないからな~……俺も、ダンジョン巡りしよっかな?」
「何がやることないだ。家族に顔を見せてやれよ」
「家族?? ……あっ!!」
「こいつ、完全に忘れてやがったな……」
「いや、ほら、十年以上会ってなかったから……」
あれだけ心配して助け出した家族なのに、ヤルモは酷い。十数年記憶から抜け落ちていた家族なので、ヤルモには会おうとする発想はなかったようだ。
「その目はやめろよ! 会えばいいんだろ!!」
オスカリパーティ全員から冷めた目で見られたヤルモは、今後の予定に入れるのであったとさ。
とりあえず、今後の予定だけ決めたら、今日もイロナとヤルモはテントで「ハァハァ」してから眠る。翌朝は、勇者パーティから何も言われなかったから、覗かれてはいなかったようだ。
「昨日、覗いてただろ?」
「しねぇって!」
それなのに、ヤルモは疑って酷い。これは以前、ヤルモが拷問を受けていることを覗いて知ったから、オスカリたちはもう興味がないのだ。それに、イロナに殺され掛けたし……
「なんだよ連れねぇな~。たまには一緒に行こうぜ~」
「離せよ! 馴れ馴れしいんだよ!!」
準備を済ませたら、オスカリたちがウザ柄み。ヤルモは囲まれて逃げ出すこともできないようで、仕方なく一緒に行動する。
「相変わらず嬢ちゃんはすげえな~」
戦闘は交互に。ヤルモパーティの時には、イロナの華麗な戦闘を見て惚れ惚れしているオスカリパーティ。
「やっぱ勇者パーティってのは、こうじゃないとな~」
「うむ。せめてこれぐらいやってもらわないと楽しめないからな。クックックックッ」
オスカリパーティの順番では、チームワークよくモンスターを簡単に処理する姿を見て、ヤルモの勇者象に合致していると褒めている。
イロナも褒めているようだが、その笑みは勇者パーティを震え上がらせ、無駄なダメージを負うことになっていた。
そうこう進んでいたら、早くも地下140階のセーフティーエリア。最強パーティふた組の共闘ということもあり、疲労はまったくないようで、通常の休息時間で次に挑むようだ。
「あんまジロジロ見んなよ」
「ちょっとぐらい目の保養をさせてくれてもいいだろ~」
温泉は水着着用のルールになっているのでオスカリパーティと混浴しているが、ヤルモはオッサンの集団がイロナの水着姿をガン見していることが許せないようだ。
「お前ら……このために一緒に行こうと言ったのか……」
「ちげぇよ!」
鼻の下を伸ばしまくっているオッサンの集団では、ヤルモが勘違いしても仕方がない。オスカリは否定して立ち上がったが、目線がイロナの胸元に行っているから間違いないのだろう。
「これで最後になると思ったから、一緒にダンジョン攻略したかったんだ。俺たちダチだろ?」
オスカリは恥ずかしげもなくそんなことを宣言するので、ヤルモもついに折れ……
「何度も言わせるな。ダチじゃねぇし」
「ひでぇ!? いったいいつになったら心を許してくれるんだよ~」
いや、折れない。オスカリも情けない声を出している。
「わはははは」
しかし、ヤルモは大きな声で笑う。
これまで同じ釜の飯を食い、酒を飲み、一緒に危機を乗り越えたのだ。さらに裸の付き合いもしているのだから、ヤルモの中ではすでにオスカリたちは友達になっているのかもしれない。
そのことを素直に言えないヤルモは、オッサンなのにツンデレをしたのだろう。
「笑ってないで、ダチと呼んでくれよ~」
「くっつくな! キモイんだよ、オッサン!!」
いや、オスカリに裸で抱きつかれて、やっぱり友達になりたくないと思うヤルモだったとさ。
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