【R18】前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配

ma-no

文字の大きさ
上 下
281 / 360
11 アルタニア帝国 帝都2

256 友情1

しおりを挟む

「ほんじゃ、行きますか」
「おう!」

 勇者就任の儀式の終わった数日後、ヤルモとイロナは特級ダンジョンに潜るべく、宿泊場所を立った。

「つけるぞ!」
「「「「おう!」」」」
「「「「「はい!」」」」」

 それを見送ったオスカリパーティ+ニコパーティ&クラーラもつけて行った。

 そうしてヤルモたちが特級ダンジョンの地下1階に辿り着くと……

「ヤベッ! もう走り出した。お前たちはゆっくり追いかけて来い! 20階で合流な!!」

 ヤルモを先頭に走り出し、オスカリパーティはニコパーティを置いて走り出した。

「おいおいおい。モンスターを撥ねても全然スピードが落ちねえぞ」
「どうりで早いわけだ」

 どうやらオスカリたちは、ヤルモたちのダンジョン攻略方法を見ようとつけていたらしい。そこで見た物は、ヤルモが大盾でモンスターを撥ね飛ばす姿。その後ろで、イロナがたまにモンスターを斬り捨てている姿。
 その二人を追うオスカリパーティは、ヘンリクの隠蔽魔法によって姿を消しているので、楽してドンドン地下へ進んで行く。

「はぁはぁ……大丈夫か?」
「な、なんとか……はぁはぁ……」

 しかし、地下15階にもなると、前衛のオスカリたちは大丈夫だけど、後衛のヘンリクとリストの疲れが見える。

「くそっ! 全然スピードが落ちねぇじゃねぇか!!」

 鈍足のヤルモのペースで走っているからそこまで速度は出ていないが、長距離ではオスカリパーティのスタミナが持たない。

「もいいい! ここまでだ!!」

 なので、地下20階のセーフティーエリアで追跡の終了。全員、座り込んで息を整える。

「チッ。昼か……マジで40階まで一日で走破しているみたいだな」

 攻略速度を逆算したら、ヤルモの言葉は正しいと察したらオスカリ。ここで昼食を取って体を休め、ニコパーティと合流すると夜営に突入する。

「えっ……オスカリさんたちを置いて、今頃40階のセーフティーエリアにいるなんて……」
「マジだ。あの二人、どうかしてるぜ。だからお前たちはマネするなよ? どっちも前衛職だからできるだけだ」

 勇者パーティでも追いつけないのは、人数と職業のおかげだとオスカリは説明。というか、そうでも言っておかないと自分たちの立つ瀬がない。
 もしかしたら、パラディンのトゥオマスとオスカリだけでなら一日で地下40階まで辿り着けるかもしれないが、そこから最下層まで辿り着くのはしんどすぎるのでやる気もないみたいだ。


 それから数日、ヤルモたちは特級ダンジョンを制して宿泊場所で休んでいたら、オスカリパーティとニコパーティが帰って来た。

「ふ~ん。今回は一緒に進んでたんだ」

 ヤルモが質問すると、オスカリは今回の成果を語る。地下20階まではごまかしていたけど……

 地下20階まではそこまでモンスターが強くないから、ニコパーティにクラーラがいるから楽勝。クラーラの出番も数えるほどだったらしい。
 合流してからは、オスカリパーティとニコパーティで交互に戦闘をこなしていたから、ニコパーティのスタミナを温存できたとのこと。

 ちなみに勇者と聖女の転職は、元の職業レベルが引き継がれて補整もあるからパーティレベルが底上げされているので、前回よりは楽に進めたらしい。
 しかし後半になると前衛陣に限界が来たので、クラーラが盾役とアタッカーを兼ねて、ニコパーティをサポートしたみたいだ。

「まぁラスボスは、次回試してみる予定だ」
「へ~。カーボエルテの勇者パーティより、頼りになりそうなパーティだな」
「そいつらは気になるけど、おばちゃんがいるからだ。あのおばちゃん、ホントつえぇぞ」
「クラねえか……」
「お前らと同類じゃね?」
「俺たちは普通だ」
「どこをどう見たら普通って言えるんだよ!」

 クラーラの活躍はヤルモも信じられないようだが、オスカリのツッコミには上手く対応できない。見てもいないんじゃ仕方がないのだろう。

「ところで、今回の成果はどうだった?」
「レジェンドのマントが出たぞ。俺も欲しかったんだよな~」
「はあ!? 俺たちなんてレアボスも出たのに、宝箱も出なかったんだぞ!」

 またしても、オスカリパーティに美味しいアイテムが出ているのが納得できないヤルモ。勇者パーティが二組もいるせいで出ないのではないかと、めちゃくちゃ睨んでいたのであった。


 しばし宿泊場所で休息を取ったら、ヤルモとイロナはオスカリたちより先に出発。その数日後にはオスカリたちも特級ダンジョンに潜ってクリア。
 ニコパーティにクラーラを加えるとダンジョンボスでも余裕で倒していたので、次回からはさっそく別行動となっていた。


 月日が流れ、相も変わらず特級ダンジョン攻略を続けていたある日、地下40階のセーフティーエリアでオスカリパーティが夜営の準備をしているところに、ヤルモパーティが追いついてしまった。

「おお! こんなところで一緒になるなんて珍しいな」

 すると、オスカリは嬉しそうにヤルモたちに近付いた。

「いや、わざとここで合流するように宿を出ただろ?」
「なんのかとかな~??」

 オスカリパーティのこれまでの攻略ペースを考えると、今回はヤルモたちより一日遅れで出発しているのが通常。それなのに無理して早く出発していたのだから、そりゃバレる。なのに、オスカリはとぼけ続けてやがる。

「ま、まさか……俺たちのテントを覗こうとしてやがんのか!?」
「どうしてそうなんだよ!!」

 どうしてもこうしても、オスカリたちには前科があるからヤルモに疑われても仕方がない。
 本当はヤルモたちと一緒にダンジョン攻略をしたかっただけなのに、「オスカリパーティはエロ親父の集団」と、不名誉なレッテルをヤルモに貼られてしまうのであったとさ。
しおりを挟む
感想 225

あなたにおすすめの小説

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

処理中です...