【R18】前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配

ma-no

文字の大きさ
上 下
270 / 360
11 アルタニア帝国 帝都2

246 第三回特級ダンジョン攻略1

しおりを挟む

 ヤルモとイロナが特級ダンジョンから戻って三日。賢者ヘンリクも両国から来た使者への仕事の引き継ぎも終わったので、勇者パーティは特級ダンジョンに潜って行った。
 ヤルモたちはと言うと、今回は長めに休息を取り、のんびりとデートなんかも楽しんでいた。残念ながら本来の帝都の姿は拝めないが、日に日に人が増えて行くので、あのイロナでさえ驚いていた。

「どこからこんなに人族が湧いて来るのだ? 墓から這い出して来てるのか??」
「それだとゾンビだろ~」

 事実誤認。イロナは何か勘違いしているので、ヤルモは説明。元々の住人が戻って来たり、他の町や村から仕事を求めてやって来ていると予想を伝えていた。
 そもそもアルタニア帝国は、このヨーロミ―ル大陸のどの国よりも国土が広く人口が多いので、万単位の死者が出ても復興が早いのだ。

「あっちゃ~。噴水は壊れているみたいだな」
「残念だ。ヤマタノオロチを思い出せると思っていたのに」
「俺たちが滞在している間に復活するといいな~」

 イロナは残念がっていたけど、ヤルモとしてはあまり思い出したくない。勇者パーティでさえ聞いただけでドン引きしていたのだから、ヤマタノオロチの噴水を直に見たヤルモには、ただの恐怖体験だったのだ。


 そうして冒険者ギルドに報告してヤマタノオロチの魔石に驚かれたり、整備品を受け取ったり、買い物デートしたり、夜の生活にヤルモが苦しんだりして、勇者パーティから遅れること三日、ヤルモとイロナは特級ダンジョンに潜った。
 例の如く、上層はスキップ。ヤルモを先頭に駆け抜け、地下40階まで一気に走破する。

 セーフティーエリアで一泊し、地下41階からはモンスターの強さや宝箱のアイテムを確認しながら進み、地下60階で一泊。またモンスターを蹴散らして進んでいたら、地下80階のセーフティーエリアに辿り着いた。

「なんでお前たちがここに!?」

 そこでは勇者パーティが夜営の準備をしていたのだが、ヤルモたちの登場にオスカリは驚きを隠せない。

「普通に来ただけなんだが……」
「三日遅れて出発するって言ってただろ!」
「お前たちがマッピングしながら進んでいるから遅いだけだよ」
「お前たちが早すぎんだよ!」

 勇者パーティガックシ。いくらマッピングしていようとも、勇者パーティは攻略速度に自信を持っていたようで、ヤルモたちに絡んでしまう。
 そのついででオスカリはヤルモたちも食事に誘ってくれたので、そこまで怒っているわけではないようだ。

「いまいちだな」
「うむ。主殿の料理のほうが、まだ料理らしい」
「食わせてやってんだから文句言うな!!」

 勇者パーティの料理は、ザッツ男飯。ヤルモが昔作った料理に毛が生えた程度なので、二人はブーブー言いながら食ってるよ。

「つ~かよ~。どうやってこんなに早く追い付けたんだ?」

 オスカリがディナーに誘ったのはこのため。情報を聞き出すために料理を振る舞ったのに不評だったけど、そのままの作戦を続けている。

「イロナがいるんだから、早くなるに決まってるだろ」

 その作戦はヤルモも気付いていたので、いきなりのジョーカーでぶった斬り。

「それでもこの速度は異常だ。わかった! そのやり方、金貨一枚で買おうじゃないか!!」

 ヤルモの扱い方に慣れて来たオスカリ。金を払えば、ひょいひょい乗って来ると思って、金貨を親指で弾いてヤルモにぶつけた。
 そんな失礼な渡し方をされたら、さすがにヤルモでも怒り心頭……

「え? いいの??」

 いや、めっちゃ喜んでる。そして早い理由を説明したら……

「地下40階まで爆走しただと……」
「「「「「できるか~~~!!」」」」」

 勇者パーティの総ツッコミ。金を払ってまで得る情報ではないと、心底ガッカリするのであった。

「金は返さないからな!」

 もちろん、金に意地汚いヤルモは、正当な対価なのですぐにアイテムボックスの中に隠すのであったとさ。


 それから勇者パーティは、なんとかヤルモたちのマネができないかとわいわいやっていたが、頃合いになるとヤルモたちは席を立った。

「俺たちのテント、絶対に覗くなよ?」

 そして、注意勧告。

「ああ。わかってるって。てか、そんな遠くにテント張らなくても、俺たちが覗くわけねぇだろ」
「いや、信用ならん。覗いたら、イロナに殺されるぞ」
「わかってるって言ってんだろ~」

 さらに最後通告を残して、ヤルモとイロナはイチャイチャしながら、遠くのテントに向かうのであった。


「フッ……覗くなと言われちゃあ、覗かないわけにはいかねぇな~」
「「「「うんうん」」」」

 ヤルモたちが立ち去ると、勇者パーティは全員悪い顔。エロ親父の集団では致し方ない。

「こんなチャンスは滅多にない……あいつらがどんなプレイをしているか、今日こそ突き止めるぞ!」
「「「「おお!!」」」」

 いや、いつも睡眠を邪魔されていたからの仕返し。そりゃ、毎晩のようにヤルモが拷問でも必死に耐えているようなうめき声が漏れていたら、気になって寝てられるわけがない。
 その真実に辿り着くために、勇者パーティは心を鬼にして、こっそりとヤルモたちのテントに忍び寄るのであった……

「いや、これ、どんなプレイ?」
「「「「……拷問??」」」」

 残念ながらテントの隙間から見える風景は、ヤルモがイロナに体を力いっぱい拭かれる風景。ヤルモの肌から煙が上がっているのでは、拷問にしか見えない勇者パーティであったとさ。
しおりを挟む
感想 225

あなたにおすすめの小説

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...