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11 アルタニア帝国 帝都2
246 第三回特級ダンジョン攻略1
しおりを挟むヤルモとイロナが特級ダンジョンから戻って三日。賢者ヘンリクも両国から来た使者への仕事の引き継ぎも終わったので、勇者パーティは特級ダンジョンに潜って行った。
ヤルモたちはと言うと、今回は長めに休息を取り、のんびりとデートなんかも楽しんでいた。残念ながら本来の帝都の姿は拝めないが、日に日に人が増えて行くので、あのイロナでさえ驚いていた。
「どこからこんなに人族が湧いて来るのだ? 墓から這い出して来てるのか??」
「それだとゾンビだろ~」
事実誤認。イロナは何か勘違いしているので、ヤルモは説明。元々の住人が戻って来たり、他の町や村から仕事を求めてやって来ていると予想を伝えていた。
そもそもアルタニア帝国は、このヨーロミ―ル大陸のどの国よりも国土が広く人口が多いので、万単位の死者が出ても復興が早いのだ。
「あっちゃ~。噴水は壊れているみたいだな」
「残念だ。ヤマタノオロチを思い出せると思っていたのに」
「俺たちが滞在している間に復活するといいな~」
イロナは残念がっていたけど、ヤルモとしてはあまり思い出したくない。勇者パーティでさえ聞いただけでドン引きしていたのだから、ヤマタノオロチの噴水を直に見たヤルモには、ただの恐怖体験だったのだ。
そうして冒険者ギルドに報告してヤマタノオロチの魔石に驚かれたり、整備品を受け取ったり、買い物デートしたり、夜の生活にヤルモが苦しんだりして、勇者パーティから遅れること三日、ヤルモとイロナは特級ダンジョンに潜った。
例の如く、上層はスキップ。ヤルモを先頭に駆け抜け、地下40階まで一気に走破する。
セーフティーエリアで一泊し、地下41階からはモンスターの強さや宝箱のアイテムを確認しながら進み、地下60階で一泊。またモンスターを蹴散らして進んでいたら、地下80階のセーフティーエリアに辿り着いた。
「なんでお前たちがここに!?」
そこでは勇者パーティが夜営の準備をしていたのだが、ヤルモたちの登場にオスカリは驚きを隠せない。
「普通に来ただけなんだが……」
「三日遅れて出発するって言ってただろ!」
「お前たちがマッピングしながら進んでいるから遅いだけだよ」
「お前たちが早すぎんだよ!」
勇者パーティガックシ。いくらマッピングしていようとも、勇者パーティは攻略速度に自信を持っていたようで、ヤルモたちに絡んでしまう。
そのついででオスカリはヤルモたちも食事に誘ってくれたので、そこまで怒っているわけではないようだ。
「いまいちだな」
「うむ。主殿の料理のほうが、まだ料理らしい」
「食わせてやってんだから文句言うな!!」
勇者パーティの料理は、ザッツ男飯。ヤルモが昔作った料理に毛が生えた程度なので、二人はブーブー言いながら食ってるよ。
「つ~かよ~。どうやってこんなに早く追い付けたんだ?」
オスカリがディナーに誘ったのはこのため。情報を聞き出すために料理を振る舞ったのに不評だったけど、そのままの作戦を続けている。
「イロナがいるんだから、早くなるに決まってるだろ」
その作戦はヤルモも気付いていたので、いきなりのジョーカーでぶった斬り。
「それでもこの速度は異常だ。わかった! そのやり方、金貨一枚で買おうじゃないか!!」
ヤルモの扱い方に慣れて来たオスカリ。金を払えば、ひょいひょい乗って来ると思って、金貨を親指で弾いてヤルモにぶつけた。
そんな失礼な渡し方をされたら、さすがにヤルモでも怒り心頭……
「え? いいの??」
いや、めっちゃ喜んでる。そして早い理由を説明したら……
「地下40階まで爆走しただと……」
「「「「「できるか~~~!!」」」」」
勇者パーティの総ツッコミ。金を払ってまで得る情報ではないと、心底ガッカリするのであった。
「金は返さないからな!」
もちろん、金に意地汚いヤルモは、正当な対価なのですぐにアイテムボックスの中に隠すのであったとさ。
それから勇者パーティは、なんとかヤルモたちのマネができないかとわいわいやっていたが、頃合いになるとヤルモたちは席を立った。
「俺たちのテント、絶対に覗くなよ?」
そして、注意勧告。
「ああ。わかってるって。てか、そんな遠くにテント張らなくても、俺たちが覗くわけねぇだろ」
「いや、信用ならん。覗いたら、イロナに殺されるぞ」
「わかってるって言ってんだろ~」
さらに最後通告を残して、ヤルモとイロナはイチャイチャしながら、遠くのテントに向かうのであった。
「フッ……覗くなと言われちゃあ、覗かないわけにはいかねぇな~」
「「「「うんうん」」」」
ヤルモたちが立ち去ると、勇者パーティは全員悪い顔。エロ親父の集団では致し方ない。
「こんなチャンスは滅多にない……あいつらがどんなプレイをしているか、今日こそ突き止めるぞ!」
「「「「おお!!」」」」
いや、いつも睡眠を邪魔されていたからの仕返し。そりゃ、毎晩のようにヤルモが拷問でも必死に耐えているような呻き声が漏れていたら、気になって寝てられるわけがない。
その真実に辿り着くために、勇者パーティは心を鬼にして、こっそりとヤルモたちのテントに忍び寄るのであった……
「いや、これ、どんなプレイ?」
「「「「……拷問??」」」」
残念ながらテントの隙間から見える風景は、ヤルモがイロナに体を力いっぱい拭かれる風景。ヤルモの肌から煙が上がっているのでは、拷問にしか見えない勇者パーティであったとさ。
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