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10 アルタニア帝国 帝都1
236 アルタニアの魔王再び4
しおりを挟む「やっぱイロナは凄いな」
イロナVS魔王ゴリラバージョンの戦闘は、一方的。イロナが凄まじい速度で四方八方から魔王を斬り裂いているので、ヤルモは安心して見ている。
「う~ん……俺でも勝てる方法はないかな……」
ただ見ているだけでは収まらないヤルモ。自分だけでの戦い方を模索する。
これは、別にイロナが無茶振りして来ると思っての勉強ではない。ヤルモはトップクラスの冒険者だから、死なない方法を常日頃から考えているので、他人の戦闘を見るのはいい勉強になるからだ。
ただし、イロナだけは攻略法がないので、シミュレーションでも100%、死。なので、ヤルモは考えることをやめてしまった。
「おお~。もう来たな」
ヤルモがそんな勉強している間にイロナが斬り刻んで、魔王の【発狂】がスタート。
魔王の筋肉が倍以上に膨らみ、力も速さも倍。ずっと続けているめちゃくちゃな拳振り回しに加え、口からエネルギー波を撒き散らす。
そんなはちゃめちゃな攻撃、ヤルモでもノーダメージで対応するのは不可能。だが、イロナは簡単にやってのける。
魔王の拳を避けてカウンター。エネルギー波を掻い潜り、懐で連続斬り。
イロナは魔王の攻撃を紙一重で避けながら着実にダメージを積み重ね、ついにその時が来る。
魔王はHPが尽きて両膝を折り、ズーンと地面を揺らす。
そこにイロナが勢い余っての首刎ね。
その結果、魔王の頭は宙を舞い、ヤルモの前まで飛んで行った……
「次よぉ。次こそわぁ、あの女を殺してぇ、あなたを手に入れるわぁ」
「誰がゴリラの物になるか!!」
「んもぉうぅ。連れないわねぇ」
頭だけになった魔王はヤルモを勧誘していたが、サキュバスの美人な顔ならわかるけど、第二形態のゴリラのままでは落とせるわけがない。
「私がいいことして、あ、げ……」
「いいかげん死ね!!」
そこに追い付いて来たイロナがキレ気味に剣を頭に突き刺して、魔王は話の途中でダンジョンに吸い込まれて行くのであった……
「ふぅ~……一時はどうなることかと思ったけど、さすがはイロナだな~」
ヤルモはイロナが助けに来てくれなかったことを遠回しに言ってみたが、イロナはまたモジモジし出した。
「なあ? 距離が遠くないか??」
それも、離れている場所でモジモジしているので、ヤルモは近付く。
「なんで逃げるんだよ?」
しかしイロナはさっと避け続けるので、ヤルモは困ってしまう。
「俺が何かしたか?」
「いや……なんでもない。あとから行くから、宝箱を見て来い」
「……わかった」
イロナと鬼ごっこをしていてもヤルモでは永遠に捕まえられないので、魔王の体があった場所に向かい、大きな宝箱の蓋に手を掛けた。
「いい物出ますように!」
そして、いつもろくな物が出ないことが多いので祈るように開けると、そこには……
「おっ! これって剣じゃね??」
大きな魔石と長い剣。ヤルモは当たりが出たと喜びながら魔石をアイテムボックスに入れ、剣を握ると鞘から抜いた。
「なんだこれ? 片刃……」
その剣は見慣れない形だったので、鑑定グラスを使って確認する。
「ほう……刀か」
そうしてよく見ていたら、イロナがようやく近付いて来てくれた。剣と聞いて見に来たみたいだ。
「刀? あ、剣じゃなくて刀って書いてある。それとレジェンドだってさ。イロナなら装備できるのか?」
「うむ。以前、ドロップアイテムで出た。なかなか切れ味がよかったのだが、SS級だったからすぐに折れてしまってな。残念に思っていたのだ」
「へ~。じゃあ、イロナが使えよ。長さも十分だろ」
「うむ。有り難く頂戴する」
刀のおかげでイロナが通常運転に戻ってくれたので、ヤルモも安心したのは束の間。刀をイロナに渡したら、何やら心配事が生まれた。
「ほう……なかなか美しいなお前。うん? 名が欲しいのか? う~ん……【物干し竿】なんてどうだ?? そうかそうか。気に入ったか」
「誰と喋ってるんだ??」
そう。イロナが刀と喋っていたからだ。
「あと、武器が洗濯物を干す竿ってどうなの??」
それと、イロナのネーミングセンスが気になったからだ。
「なんだと……我が子を愚弄するのか……」
「そんなこと思ってないッス! いい名前ッス!!」
「そうだろうそうだろう。では、試し斬りと行こうではないか」
「はい??」
殺気を放つイロナに心にもないことを言って命の助かったヤルモは、試し斬りと聞いて首を傾げた。
「上に戻るぞ!」
「逆走!?」
こうして魔王を倒したにも関わらず、イロナはヤルモの首根っこを掴んで逆走。モンスターを倒して刀の切れ味に感動しているイロナをヤルモは追いかけ、地下140階のセーフティーエリアまで付き合わされるのであった。
「明日はラスボスも真っ二つにするぞ!!」
「ええぇぇ~」
さらに延長戦。冒険者ギルドで御法度の周回プレーに突入すると聞いたヤルモは、嫌そうにするのであったとさ。
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