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09 アルタニア帝国
215 アルタニアの魔王10
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空には、金色の全身鎧を纏い、背中から生えた真っ白な翼を羽ばたかせるイロナ。地上には、触手剣を全て斬り落とされた魔王と、ボロボロのヤルモと勇者パーティ。
この場にいる全ての者は、バッサバッサと翼を羽ばたかせ、空から舞い降りるイロナに釘付けになっていた……
「イロナ……だよな?」
さすがに見たこともない容姿になったイロナがヤルモたちの目の前に舞い降りたならば、確認せざるを得ない。
「我に決まっているだろう。もう顔を忘れたのか」
「いや、天使が舞い降りたのかと思って……」
「クックックックッ。初めて会った時のような顔をしているぞ」
「本当に、イロナは美しい……」
「そう褒めるでない」
ヤルモがべた褒めすると、イロナは珍しく頬を赤らめる。だが、そんなイチャイチャは、いまはやってほしくないオスカリが前に出た。
「嬢ちゃんには驚かされてばかりだが……ちょっといいか?」
「「ん?」」
「魔王の触手がくっついているんだけど……」
「ああ。すぐに終わらせる。下がっていろ」
「う、うん……」
イロナが金色の剣を振って構えたら、オスカリはヤルモとトゥオマスに目配せする。
「「「逃げろ~~~!!」」」
そして、すたこらさっさ。全力疾走で逃げ出した。
だって、剣を軽く振っただけで地面を削っていたんだもん。こんなに近くにいたら、余波で体が真っ二つになりかねないと思ったらしい……
ヤルモたちが逃げ出すと、イロナはツカツカと歩き、触手剣をくっつけていた魔王に近付いた。
「さあ! 第5ラウンドと行こうじゃないか!!」
「グオオォォ!!」
イロナ、魔王、両者の掛け声と共に、戦闘の開始。先手は、触手剣を伸ばした魔王。
「??」
その触手剣は、イロナの手前で粉々。何かの間違いかと魔王は他の触手剣でイロナを斬ろうとしたが、三本の触手剣も同じ結末となった。
これは全て、イロナが素早く斬ったのだ……
イロナの奥の手とは、【戦女神化】。
翼を生やして飛ぶだけが能力ではない。
鎧を着て防御力を上げるだけが本来の力ではない。
金色の剣を何本も作れたり攻撃力を上げるだけが真骨頂ではない。
【戦女神化】とは、イロナの身体能力を十倍も跳ね上げるのだ。
あのイロナの身体能力が十倍も跳ね上がるのだから、ただのチート。魔王は一方的に斬られ、ダメージが蓄積されるのであった。
* * * * * * * * *
「おいおいおいおい。なんだありゃ……」
城壁まで撤退した勇者パーティは、イロナの攻撃力を見て蒼白。そりゃ、今まで苦労して傷を付けるのがやっとだった魔王の触手剣が、イロナに触れるぐらい近付くと消えているのだからそうなってもおかしくない。
「ヤルモ……お前は知っていたのか??」
異次元の強さのイロナを見たからには、オスカリも誰かに質問せざるを得ない。
「いや……初めて見た……」
ヤルモも知らないことだったから呆気に取られているので、オスカリも信じざるを得ない。
「てか、なんなんだよお前ら……どっちも変な姿になるし、攻撃力も防御力も異常だし……」
「俺に聞かれても知らん」
「お前のことも言ってるんだよ!」
もちろんヤルモも自分のことを言われていると気付いていたが、言うわけがない。それよりも、イロナの戦闘に見入っている。
「もう発狂になった……」
「嘘だろ……てか、俺たちもダメージ与えてたし、そのおかげだろうな~」
「それだといいな」
「んなわけないだろ! ツッコめよ!!」
オスカリだって誰のおかげで魔王のHPが減っているのかは、わかりきっていたこと。ヤルモが思い通りのことを言ってくれないので、ツッコムのであったとさ。
* * * * * * * * *
イロナVS魔王は、【発狂】が発動したからには佳境。
魔王が放つ地面からそびえ立つ赤黒い槍は、イロナに接触する前に斬られて霧散。辺り構わず振り回される触手剣も、イロナに近付くと消え失せる。その他の触手剣も、イロナは何本もの金色の剣を放ち、斬り刻んで消滅。
魔王は幾度も触手剣を復活させるが、その都度イロナが消滅させ、胴体には金色の剣が幾百と突き刺さる。
もう、巨大な魔王の姿なんて見えないぐらい多くの金色の剣を突き刺し、端から見たら金色の剣山のような巨大な山が出現した。
そうして金色の剣山は徐々に小さくなり、消え去った中心には、最初の姿の魔王ただ一人が立ち尽くしていたのであった……
魔王の前に舞い降りたイロナは、無言で剣を向けた。
「フハハハハ。ここまで強い者が地上にいたとはな。余の完敗だ」
「貴様もなかなか強かった。楽しかったぞ」
「楽しむ、か……余も、最後に楽しい最後を迎えられたのかもしれん……しかし、負けは負けだ。トドメを刺してくれ」
「その意気も天晴れ! さらばだ!!」
魔王の言葉に、イロナは笑顔で首を刎ねて終わりとする。
「フハハハハ。これで終わりではない。いつかまた余は復活して、貴様の前に立とうじゃないか! フハハハハ」
魔王は頭だけとなり、灰となりながらも捨て台詞を残し……
「うむ! また会おう!!」
イロナは嬉しそうに再戦を約束する。
斯くしてアルタニア帝国に現れた魔王は、勇者パーティに討伐されず、イロナの手によって屠られたのであった……
この場にいる全ての者は、バッサバッサと翼を羽ばたかせ、空から舞い降りるイロナに釘付けになっていた……
「イロナ……だよな?」
さすがに見たこともない容姿になったイロナがヤルモたちの目の前に舞い降りたならば、確認せざるを得ない。
「我に決まっているだろう。もう顔を忘れたのか」
「いや、天使が舞い降りたのかと思って……」
「クックックックッ。初めて会った時のような顔をしているぞ」
「本当に、イロナは美しい……」
「そう褒めるでない」
ヤルモがべた褒めすると、イロナは珍しく頬を赤らめる。だが、そんなイチャイチャは、いまはやってほしくないオスカリが前に出た。
「嬢ちゃんには驚かされてばかりだが……ちょっといいか?」
「「ん?」」
「魔王の触手がくっついているんだけど……」
「ああ。すぐに終わらせる。下がっていろ」
「う、うん……」
イロナが金色の剣を振って構えたら、オスカリはヤルモとトゥオマスに目配せする。
「「「逃げろ~~~!!」」」
そして、すたこらさっさ。全力疾走で逃げ出した。
だって、剣を軽く振っただけで地面を削っていたんだもん。こんなに近くにいたら、余波で体が真っ二つになりかねないと思ったらしい……
ヤルモたちが逃げ出すと、イロナはツカツカと歩き、触手剣をくっつけていた魔王に近付いた。
「さあ! 第5ラウンドと行こうじゃないか!!」
「グオオォォ!!」
イロナ、魔王、両者の掛け声と共に、戦闘の開始。先手は、触手剣を伸ばした魔王。
「??」
その触手剣は、イロナの手前で粉々。何かの間違いかと魔王は他の触手剣でイロナを斬ろうとしたが、三本の触手剣も同じ結末となった。
これは全て、イロナが素早く斬ったのだ……
イロナの奥の手とは、【戦女神化】。
翼を生やして飛ぶだけが能力ではない。
鎧を着て防御力を上げるだけが本来の力ではない。
金色の剣を何本も作れたり攻撃力を上げるだけが真骨頂ではない。
【戦女神化】とは、イロナの身体能力を十倍も跳ね上げるのだ。
あのイロナの身体能力が十倍も跳ね上がるのだから、ただのチート。魔王は一方的に斬られ、ダメージが蓄積されるのであった。
* * * * * * * * *
「おいおいおいおい。なんだありゃ……」
城壁まで撤退した勇者パーティは、イロナの攻撃力を見て蒼白。そりゃ、今まで苦労して傷を付けるのがやっとだった魔王の触手剣が、イロナに触れるぐらい近付くと消えているのだからそうなってもおかしくない。
「ヤルモ……お前は知っていたのか??」
異次元の強さのイロナを見たからには、オスカリも誰かに質問せざるを得ない。
「いや……初めて見た……」
ヤルモも知らないことだったから呆気に取られているので、オスカリも信じざるを得ない。
「てか、なんなんだよお前ら……どっちも変な姿になるし、攻撃力も防御力も異常だし……」
「俺に聞かれても知らん」
「お前のことも言ってるんだよ!」
もちろんヤルモも自分のことを言われていると気付いていたが、言うわけがない。それよりも、イロナの戦闘に見入っている。
「もう発狂になった……」
「嘘だろ……てか、俺たちもダメージ与えてたし、そのおかげだろうな~」
「それだといいな」
「んなわけないだろ! ツッコめよ!!」
オスカリだって誰のおかげで魔王のHPが減っているのかは、わかりきっていたこと。ヤルモが思い通りのことを言ってくれないので、ツッコムのであったとさ。
* * * * * * * * *
イロナVS魔王は、【発狂】が発動したからには佳境。
魔王が放つ地面からそびえ立つ赤黒い槍は、イロナに接触する前に斬られて霧散。辺り構わず振り回される触手剣も、イロナに近付くと消え失せる。その他の触手剣も、イロナは何本もの金色の剣を放ち、斬り刻んで消滅。
魔王は幾度も触手剣を復活させるが、その都度イロナが消滅させ、胴体には金色の剣が幾百と突き刺さる。
もう、巨大な魔王の姿なんて見えないぐらい多くの金色の剣を突き刺し、端から見たら金色の剣山のような巨大な山が出現した。
そうして金色の剣山は徐々に小さくなり、消え去った中心には、最初の姿の魔王ただ一人が立ち尽くしていたのであった……
魔王の前に舞い降りたイロナは、無言で剣を向けた。
「フハハハハ。ここまで強い者が地上にいたとはな。余の完敗だ」
「貴様もなかなか強かった。楽しかったぞ」
「楽しむ、か……余も、最後に楽しい最後を迎えられたのかもしれん……しかし、負けは負けだ。トドメを刺してくれ」
「その意気も天晴れ! さらばだ!!」
魔王の言葉に、イロナは笑顔で首を刎ねて終わりとする。
「フハハハハ。これで終わりではない。いつかまた余は復活して、貴様の前に立とうじゃないか! フハハハハ」
魔王は頭だけとなり、灰となりながらも捨て台詞を残し……
「うむ! また会おう!!」
イロナは嬉しそうに再戦を約束する。
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