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09 アルタニア帝国
205 新・四天王5
しおりを挟む「てか、いつまで見てるんだ?」
ヤルモVSアルヤとパウリーナとの戦闘に見入っていたオスカリであったが、三人の動きが止まったらイロナに質問した。
「ううむ……」
「おい。ヤルモのヤツ、よろけてるぞ! もう限界だったんじゃないか!?」
「そんなわけはないと思うが……まぁいい。そろそろ行くか」
ヤルモはグラマーな美女アルヤに、仲間から嫌われていると指摘されてよろけただけなのだが、オスカリは勘違い。イロナも飽きて来たらしく、腰を上げた。
「んじゃ……どっち行く?」
「ん? 二匹とも……」
「いやいや、魔王が待ってるんだから、スタミナを温存しろよ!」
「おっとそうだった。ならば剣士にしとこうか」
「よし! 俺たちは魔法使いだ!!」
「「「「おう!!」」」」
イロナにもスタミナ配分があるらしく……というか、魔王と聞いたから勇者パーティにも譲る。
こうして狙いが決まった二組は走り出したのであった。
「ご苦労」
「わっ!?」
まず最初に戦闘区域に入ったのは、イロナ。一瞬でヤルモの隣に立ったからには、ヤルモは驚いている。
「てか、遅くない??」
「すぐに助けては主殿も楽しめないだろう」
「聞いたか! 俺のためを思って見てただけだぞ!!」
ヤルモは苦情を言ってみたが、イロナが見ていた理由を教えてくれたからどうでもよくなった。アルヤに嫌われ者と馬鹿にされていたので、反論したくなったようだ。
「そういえば勇者たちは……」
「向かって来ている。我は剣士をもらうことになっているのだ」
「じゃあ俺は、しばらく女の子を相手取るか」
ヤルモとイロナは作戦を擦り合わせると、立ち位置を変える。
「なるほど。そう来ましたのね。では、わたくしたちは……」
元貴族でその見た目と護身術を嗜んでいたおかげで魔王から寵愛を受けるアルヤとパウリーナだが、強大な力と引き換えに絶対服従させられているのでは逃げることもできないので、せめてヤルモたちの策略だけは潰そうとしたが……
「面倒なことをするな」
「え? ……腕が」
一瞬で近付いたイロナに左腕を斬り落とされた。
「パウリーナ!」
「お前は静かにしてろ」
すでに二人の間合いだったのでアルヤはパウリーナを頼ったが、イロナに体を真っ二つにされたパウリーナ。そしてイロナは、アルヤを斬り付けて後退させた。
「オラァァッ!!」
そこにヤルモの突撃。地面に転がるパウリーナに、ヤルモの初めての攻撃が炸裂する。
ヤルモは見た目は少女のパウリーナの胴体に、何度も剣を振り下ろして張り付けに。容赦なく剣を振り続ける。
「えげつないことしてるな……」
そこに追い付いて来た勇者パーティが現れた。
「強いから当然だ。情けを掛けたいなら好きにしろ。あとは任せたからな」
「また丸投げか……もうお前がやれよ」
オスカリが愚痴っていても、ヤルモはタッチ交代。ドタドタと走って戦闘区域を離れて行った。
そのやり取りのおかげで、パウリーナは復活。いきなり巨大な氷をぶっぱなした。
「チッ……見た目通りとはいかねぇか。しゃあねぇ。覚悟決めんぞ!!」
「「「「おお!」」」」
バラディンのトゥオマスの大盾にて守られたオスカリは、パウリーナの少女らしからぬ魔法の威力に気を引き締めるのであった。
「はぁ~~~しんど」
戦闘区域を離れたヤルモは、崩れた石垣にどさっと腰を落とした。そして水筒を取り出し、ゴクゴク飲みながら皆の戦闘を眺める。
「さすがイロナ。何もさせないうちに終わりそうだ」
イロナVSアルヤは一方的。もう戦闘とは呼べないほど、イロナがアルヤを斬り刻んでいる。
「勇者パーティは……あんなこと言ってたクセに、甚振ってんじゃねぇか」
勇者パーティVSパウリーナは、五人のオッサンが一人の少女を甚振る残虐な絵。ヤルモも見てられずにイロナの戦闘に視線を戻した。
「あれ?」
そこには二人の姿が無かったのでキョロキョロしたら、イロナは隣に座っていた。
「あ、もう終わったんだ……」
「いましがたな。というか、主殿との戦闘で疲れていたから手応えがなかったぞ」
「なんかすんません」
イロナが楽しめなかったと聞いたからには、ヤルモも謝るしかない。
「まぁよい。主殿攻略法の参考になったからな」
「いや、すでに俺はボロ負けなんだが……」
「それにしても、奴らは本当に連携が上手いな」
イロナが話を変えるので、ヤルモも視線を勇者パーティのほうへ持って行く。
「勇者だけでも強いのに、仲間と共に研鑽を怠らなかったんだろうな~」
「もっとレベルが高ければ、我ともサシでやりあえるのに……残念だ」
「ホント、残念だ」
イロナはオスカリと一対一で戦いたいので残念に思い、ヤルモはそれだけ強ければ自分がイロナのターゲットから外れるのにと、心底残念がっている。
「終わりだ」
二人が喋っている間に、勇者パーティの戦闘は終了。パウリーナはヤルモと長時間戦ったせいでMPの残量が少なかったので本来の実力を発揮できず、勇者パーティのチームワークの前に灰となる。
こうして新・四天王との戦闘は、予定通りイロナのスタミナを温存して終了したのであった。
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