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06 カーボエルテ王国 王都3
142 合同チーム5
しおりを挟むいつも通り地下80階のセーフティエリアで長時間の休息と温泉で疲れを落とした勇者一行は、元気よく出発。ヒルッカが先行してモンスターを見付けたら、パウリが『ガンガン行こう』。
しかし、ヤルモに「ガシッ」と肩を掴まれて止められた。
「どうかしたでありますか?」
「しばらくお前の出番は無しだ」
「ええぇぇ!?」
今まで散々褒められて物も貰っていたパウリは、いきなり戦力外通告をされてガッカリ。
「しばらくと言っただろ。あとで出番があるから、それまで力を温存していろ。頼んだぞ」
「はいッス!」
「それじゃあパーティ編成は……」
パウリが元気になったところで、準勇者パーティはモンスターに突撃。ここからはヤルモが一人盾役となって、パウリの代わりを務めるみたいだ。
もちろんパウリは戦力となっていなかったので、ヤルモ一人で余裕。なんだったら、足手まといが隣にいないので戦いやすい。クリスタたちも、ヤルモが動きやすいようにモンスターを崩してくれるから戦いやすいようだ。
パウリが抜けたおかげで、モンスターとの戦闘はさくさく進んで行くのであった。
「うぅぅ……師匠だけのほうが早く終わるって……あいてっ」
またパウリが自信を無くしていると、ヤルモが頭をゴツンと殴った。
「ちゃんと俺の戦い方は見てたんだろうな?」
「は、はいッス!」
「次の階からはお前の出番だ。しっかり勇者たちを支えるんだぞ」
「はいッス!!」
マグマフロアに侵入すると、パウリとヤルモはチェンジ。正勇者パーティでの戦闘を開始する。ここはフロアレベルが高い分モンスターは弱いので、盾役はパウリだけでもなんとか持っているようだ。
ただ、あまり戦闘し過ぎるとパウリの体力が心配なので、勇者パーティは真っ直ぐ階段へ向かわせる。
ヤルモとイロナはというと、勇者パーティが戦闘で足が止まっている内に宝箱漁り。正確な地図も持っているし、イロナとヤルモならここのモンスターは楽勝なので、勇者パーティとほぼ同時にマグマフロアを抜けるのであった。
ヤルモとパウリが入れ換わり、疲労の見えるパウリはしばし休憩。準勇者パーティで巨大モンスターを相手にする際には、ヤルモはぶつかられても1ミリも下がらないので、パウリは目をキラキラさせて「キャーキャー」言っていた。
ただし、イロナの順番の際には巨大モンスターが一太刀一太刀縮んで行くので「ゲーゲー」言っていた。
「ありえないッス……」
「わたしもまだ慣れません……」
クリスタたちは慣れたものだが、パウリとヒルッカには、イロナは恐怖の対象。「本当は魔王なのでは?」とか、コソコソ言っている。
「私たちにもあんな時があったよね~」
「怖かったですよね~」
「いまは安心感がありますよね~」
そんな二人を達観した表情で見ているクリスタ、オルガ、リュリュ。遠い昔のことのように懐かしいんでいるが、ここ最近の出来事である。
そうこう進んでいたら、地下93階のフロストフロアに到着。ここもモンスターレベルが低いので、パウリの出番。けっこう休めたこととレベルが上がっていたことで、少しだけ攻略速度が早くなった。
しかし、フロストフロアを抜けた階段には、イチャイチャしているヤルモとイロナを発見。二人は特に急いでいたわけでもないのに先に着いていたので、クリスタとオルガは何かコソコソ言っている。
「強いのはわかってるんだから、せめてそれっぽく待っていてほしいわ~」
「本当に……毎回イチャイチャしなくても……」
「当て付け? 恋人を作れない私たちへの当て付けなの??」
「そういえば勇者様って……教会から離れたからって、男性と付き合ったりしませんよね?」
「あ……そうだ! 私は自由だ~~~!!」
どうやら教会では純潔のルールがあるらしく、恋人を作ることは御法度だったようだ。しかし勇者となったクリスタは教会のルールに囚われていたので、自由の身になったことを気付いてなかったから、今ごろ喜んでいるよ。
「しまった……いらない情報を入れてしまった……」
仲間に塩を送ってしまったオルガはいらぬことを言ってしまったと、心底後悔するのであったとさ。
純潔という枷が外れた勇者は『ガンガン行こう』。なんだかテンション高く、巨大なヒュドラに突っ込んで行って、一人で戦ってるよ。
「チッ……また調子に乗りやがって。お前ら、俺を巻き込んでもいいから勇者を援護しろ!」
「「はい!」」
「はあ……」
クリスタの指示がないのでヤルモが代わりに指示を出すと、リュリュとヒルッカはいい返事。オルガはなんだか嫌そうに返事をしてヤルモたちに続く。
しかしその時、目の前の地面に亀裂が入り、ヤルモは急停止。次々にヤルモにぶつかって止まった。
「イロナ! 何するんだよ!!」
亀裂を作った者の正体はイロナ。ヤルモたちの前に素早く回り込み、斬撃を飛ばしたのだ。
「勇者もやる気を出しているのだからいいではないか」
「でもアレは……」
「うむ。勇者ではまだ早いな。だが、格上との死闘を制したあとは、レベルではなく違う物が手に入るってものだ」
「言いたいことはわかるけど……死ぬぞ?」
「死線を乗り越えた勇者がどれほど強くなるか……楽しみだ。クックックッ」
イロナが不敵に笑うので、ヤルモたちは怖くて体が強張る。
こうして勇者クリスタは、たった一人でヒュドラとの戦闘を余儀なくされたのであった。
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