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06 カーボエルテ王国 王都3
135 謁見1
しおりを挟む特級ダンジョンで手に入れたアイテムを売り捌いた翌日、ヤルモたちは居ても立っても居られないからか、庭に集まって訓練をしていた。
「おお~。ヒルッカはめちゃくちゃ速くなってるな」
「はぁはぁ……でも、余裕で受けられちゃいました」
「もうちょっとフェイントを入れような」
しかも、珍しくヤルモから訓練をつけると言い出したのだ。
「次、自分もお願いします!」
ヒルッカが疲れると、パウリにチェンジ。今度はヤルモが攻めて盾で受けさせる。
「ぐっ……」
「違う違う。もっと初期動作を捉えろ。力で負けてるんだから前に出て受けろよ」
「はい! ぐあっ……」
「できてないから、一番力が乗った攻撃を受けてしまうんだ」
「つつつ……」
パウリに対しては、厳しいヤルモ。手加減はしているが、防御が甘い場合は容赦なく模擬刀やケンカキックで吹き飛ばしている。
「では、次は我だな」
「マジで手加減してくれよ? ぎゃああぁぁ!」
そんな現場を見ていたら、イロナもやりたくなってついつい参加。しかも、ヤルモの鉄壁を抜こうと本気を出すので、受け切れないでいる。
「速すぎる……ヒルッカさんは見えていますか?」
「止まったところだけです。なんとか致命傷は避けているようですよ」
「あんなの、自分だったら一瞬で挽き肉にされますよ……」
「わたしもです。てか、あんな速さで動いて攻撃なんてできるんですね……」
ヤルモでも化け物クラスに見えていたパウリとヒルッカは、化け物を超えたイロナを青ざめて見ている。
そんななか、ヤルモを吹っ飛ばしたイロナはドヤ顔を見せる。
「ようやく一本入ったな」
「はぁはぁ……俺対策のフェイントはやめてくれ……」
「フフン。ネタさえわかればこんなものだ。もう一本やるぞ」
「ちょ、ちょっと待って……まだ立てそうにない……」
「チッ……力加減をミスったか。致し方ない」
ヤルモは起き上がることもできないので、イロナはぐるんと振り返る。
「そこの二人! 二人でかかってこい!!」
「「ええぇぇ!?」」
テンションの上がったイロナ軍曹は標的を移して、ヒルッカとパウリの稽古。攻撃しないことには殺されると察した二人は、イロナにぶつかって何度もダメ出しを喰らう。
いちおう手加減はしていたようだが、ヒルッカは何度も後ろを取られて涙目。パウリも力負けして涙目。何もさせてもらえず、体力の限界となった。
「主殿! もう回復しただろ!!」
「はっ!」
殺気を飛ばされたヤルモは、またイロナブートキャンプ。そうして皆が疲れ果てて倒れた頃に、クリスタがやって来た。
「緊張をほぐしたいからって動きすぎじゃない?」
「ちょうどよかった! 勇者もかかってこい!!」
「私も!?」
イロナブートキャンプの生徒に拒否権はない。止めに来たはずのクリスタもイロナにしごかれ、仲良くヤルモたちと一緒に倒れるのであった。
「ゼェゼェ……も、もう一度言うけど、緊張をほぐしたいからって、動き続けても死ぬだけだよ? ゼェゼェ……」
「あ、ああ。失敗した……」
どうやらヤルモたちは国王との謁見に対して緊張しているので、動いて緊張を打ち消そうとしていたようだ。リュリュも緊張しているので仲間に入れて欲しそうだったが、魔法職だったので端っこで魔法の練習をしていた。
それが失敗と気付いたヤルモたちは、重たい体を引きずってウサミミ亭の中に戻る。
死ぬほど疲れたヤルモたちは、昼から爆睡。夕食を取ってからも動けず、イロナは奉仕ができないとガッカリしながら眠りに就いた。
そして翌日……
朝から仕立屋がフォーマルな衣装を持って現れ、皆は無理矢理着付けされ、食堂にて集合となった。
「わっ! ヤルモさんに無精髭がない……」
「いいって言ったのに剃られたんだ」
「王様に謁見するのですから剃って当然です」
ヤルモのスーツ姿が珍しいからか、ドレスと化粧でバッチリ決めたクリスタとオルガはちゃちゃを入れていたが、遅れて現れたイロナに、この場にいる全員は息を飲む。
「「「「「きれ~~~い……」」」」」
「綺麗であります……」
バッチリメイクを決めたドレス姿のイロナは、皆に褒められながらヤルモの前に立つ。
「どうだ主殿?」
「初めて会ったその日を思い出したよ。いや、それ以上に綺麗で驚いた」
「フフ。主殿も見違えたぞ。似合うではないか」
「そうか~? なんだか自分が自分でないみたいだ」
お互いの見た目で盛り上がる二人であったが、盛り上がっているのは二人だけではない。
「勇者様よりお姫様に見えますね……」
「負けた……」
「ゆ、勇者様もドレス似合っていますよ!」
「せめて聖女様ぐらい胸があれば……」
オルガの呟きに素直に負けを認めるクリスタ。涙目で胸元が開いたドレス姿のオルガの巨乳を見ながら慰められている。
「リュー君、その服かっこいいね!」
「ヒーちゃんも、ドレス姿かわいいよ!」
幼馴染みのヒルッカとリュリュは、何やら見慣れぬスーツやドレス姿を褒め合い、ちょっと顔を赤らめていた。
「自分も誰かに褒められたいであります……」
「仕方ないな~。お姉さんが褒めてあげますよ。パウリ君もスーツ姿かっこいいですよ」
「ありがとうございます!」
蚊帳の外に置かれたパウリは悲しそうにしていたので、お情けでエイニに褒められるのであったとさ。
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