上 下
135 / 360
06 カーボエルテ王国 王都3

123 マッピング5

しおりを挟む

「不甲斐ない勇者でゴメンね。幻滅したでしょ?」
「わっ! 違います違います。ちょっと驚いただけです!!」

 ヤルモより弱いとバレたクリスタはテンションダウン。そのせいでヒルッカは焦って弁解しているが、クリスタはますます気落ちして行っている。

「ここまでけっこう時間が掛かってるんだから急ごうぜ」

 そこに、ヤルモからの我関せずの言葉。クリスタは「誰のせいで!」とか思って睨んでいるが、ヤルモには通じないのでヒルッカにチクる。

「あのオジサン、私より遥かに強いのよ。魔王を倒したのもあの二人」
「うそ……」
「勇者! 誰彼かまわず言いふらすなと言ってるだろ!」
「誰彼かまわずじゃありませ~ん。パーティメンバーですぅぅ。そんなに大声出すと、ヒルッカちゃん怖がるわよ?」

 ヒルッカはそんな表にも出せない新事実を聞かされて怖がっていただけだが、ヤルモは女の子を怖がらせていると勘違いして顔を緩める。

「怖くないよ~? おっちゃんとおばちゃんはケンカなんてしてないからね~?」
「キモッ! そしてなんで私がおばちゃんなのよ!!」
「「あはははは」」

 ヤルモとクリスタのやり取りがおかしかったのか、オルガとリュリュが笑ったので、少しは怖さが和らぐヒルッカであった。


 地下11階からも、相も変わらず手分けしてマッピング。ただし、ヒルッカのヤルモを見る目が変わったので、少しやりにくそうにしている。

「おっちゃんの顔、なんか付いてるのか?」
「いえ! よく見たら凛々しい顔だな~と思いまして」
「アメちゃんが欲しいのなら、普通に言ってくれたらあげるぞ。ほい」
「子供扱いしないでくださいよ~」

 普段なら、褒めて来る女なんて何か企んでいると飛び退くヤルモであったが、怖がらせたくないから子供対応。ヒルッカもツッコんでいるけど、貰ったアメをすぐに食べて幸せそうにするから、ヤルモに子供扱いされていると思われる。
 ちなみに、特級ダンジョンには少なからず冒険者が入っているので、ヤルモとヒルッカを見た冒険者からは、こう思われていた……

「おい……オッサンが女の子を連れて歩いているぞ?」
「親子? こんな危険な場所で何してるんだ??」
「装備からして強い戦士だとは思うけど……子供の教育かな??」
「子供なら、オッサンにも耳と尻尾がないとおかしい」
「なんかアメをあげてるっぽいな。誘拐して来たのかも?」
「うん。あの顔は、誘拐犯顔だ」
「「「「「うんうん」」」」」

 大半の冒険者は、ヤルモを誘拐犯だと決め付けていた。

「どうする? 通報するか??」
「チッ……転送魔法陣がある階の真ん中じゃすぐに通報できない」
「モンスターも強いのに、人助けは辛いな」
「少しつけて様子を見るか……」
「だな。危なくなったら女の子だけは助けよう」

 冒険者は無理をしたくないらしく、ヤルモたちをつけてヒルッカを見守る。

「あのオッサン、つえぇ~。一人でモンスターを薙ぎ払ってるぞ」
「それに女の子のレベリングしてるっぽいな」
「親子の線は薄いけど、知り合いなのかも?」
「いや、まだわからないぞ。人の少ない場所でいたずらする気かもしれない」
「ありえる……見張り継続だ」
「「「「「おう!」」」」」

 ヤルモたちを見掛けた冒険者は、近親者3割、誘拐犯7割と考えて様子見。ハイエナプレイをしていると受け止められても構わないと割りきってヤルモたちをつけ回し、人数が増えて行った。
 しかし、地下に向かう階段でヤルモ班がクリスタ班と合流すると、誤解は解けて見守り隊は解散。階を下る度に、クリスタとオルガは見守り隊の説得に明け暮れるのであった。

「もう! ヤルモさんが怪しいからキリがないじゃない!!」
「す、すまん。でも、俺は普通にやってるだけなんだが……」

 助けてもらった手前、ヤルモは謝っているようだが解決案はない。しかしその時、クリスタの目が妖しく光った。

「もう、ダンジョンにいる間は親子で通したら?」
「見た目が違うだろ。すぐにバレる嘘はよけい拗れる」
「こんなこともあろうかと、ケモミミセットを用意しておきました~!」
「はあ!?」

 クリスタはアイテムボックスからケモミミカチューシャと尻尾を取り出してヤルモに付けた。

「プッ……似合って、るよ」
「いま、笑おうとしただろ? そしてそこ! 肩が震えているぞ!!」
「「「「「あははははは」」」」」

 クリスタたちが笑いを堪えても、ヤルモがツッコんでしまったがために大爆笑。イロナまで目を擦って笑っている。

「やっぱ似合ってないよな?」
「フフフ。ちょっと新鮮なだけだ。今日はその姿でヤッてみよう」
「イロナが付けてくれよ~」

 イロナも助けてくれないので、ヤルモはヒルッカに意見を聞いてみる。

「こんな変なオッサンが父親じゃ嫌だよな?」
「いえ……頼もしさなら、わたしのお父さんの比じゃありません! パパ、と、呼んでもいいですか??」
「お……おっふ」

 ヒルッカに上目使いでパパと呼ばれたヤルモはノックダウン。もう子供を持つことを諦めていたヤルモには強烈なインパクトだったのか、ヒルッカに片膝をつかされるのであった。

「チョロ……」
「チョロイですね……」
「ヒーちゃん小悪魔みたい……」

 あまりにもあっさり受け入れたヤルモを見た、クリスタ、オルガ、リュリュは、ヤルモ取り扱い説明書に「ロリコンかも?」と書き加えて出発するのであった。


  *   *   *   *   *   *   *   *   *


 一方、冒険者の反応は……

「あのケモミミのオッサンと女の子は親子かな??」
「う~ん……どちらかといえば誘拐犯に見える」
「「「「「うんうん」」」」」

 あまり変わらないのであったとさ。
しおりを挟む
感想 225

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

処理中です...