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05 カーボエルテ王国 王都2
118 新メンバー発掘6
しおりを挟む「ヤルモさん……何してるの?」
何故か自分の後ろに隠れてまくし立てるヤルモは、クリスタに残念そうに見られる。
「いや、ちょっと補足をな」
「だったら堂々としなさいよ。あんなに強いのに、なんで隠れて……」
文句を言っていたクリスタはピキンと閃き、ブラックパーティのリーダーに目を向ける。
「そうだ! 賭けをしましょう。あなたがこのヤルモさんに勝ったら、私のパーティに入れてあげるわ。その代わり、負けた場合はヒルッカちゃんの借金はチャラ。ヒルッカちゃんも私がもらうわ」
「わかりました。その勝負、お受けしましょう!」
クリスタが突然言い出したことなのに、リーダーは即答。クリスタの陰に隠れた布の服のオッサンぐらいなら余裕で勝てると思ったのであろう。
だが、二人の合意にヤルモから待ったが掛かる。
「おい! 俺はそんな勝負は受けないぞ!」
「だから強いのに、なんでそんな弱気なのよ」
「だって、こんな町中で怪我とかさせたら逮捕されるかもしれないじゃないか」
「はぁ~~~……ヤルモさんの性格、やっとわかって来たわ」
冤罪でも疑われたくないヤルモの性格を理解したクリスタは、ヤルモに言い聞かせる。
「私が立ち会うし、衛兵にも立ち会わせるから大丈夫よ。それにきっちり証文も書かせるから、ヤルモさんが罪に問われることはありえないわ」
「……とか言って、あとから捕まえようとしてるとか?」
「そろそろ私のことも信じてくれないかな~?」
「お、おう……」
クリスタも限界。いまだに信用してくれないので、笑顔のままヤルモを脅す。その目はまったく笑っていなかったので、珍しくヤルモも怖くなって素直に返事するのであった。
クリスタは中級ダンジョンに立つ衛兵を呼ぶと、決闘をする旨を伝えて証文にもサインさせる。ここにクリスタとリーダーの名前を書くと決闘の受理。
ヤルモVSリーダーの戦いが開始した。
「へっ……まったくついてるぜ。こんなオッサン倒すだけで勇者パーティに入れるんだからな」
「はぁ……なんで俺が……」
「喰らえ~~~!!」
テンション低いヤルモに、テンションの高いリーダーは剣を振り下ろす。
「はい?」
しかしその剣は、ヤルモに素手で握られてしまった。
「なんだこの剣は? これならハミナにいたトウコって奴のほうが断然鋭いぞ。やっぱお前には、SSS級なんて買えるわけないな」
「くそ! 離せ!! なっ……」
押せども引けどもビクともしないリーダーの剣は、ヤルモに握り潰されて折れてしまった。
「これで決着か?」
「まだに決まってるだろ! お前、剣をよこせ!!」
諦めの悪いリーダーは、剣を取っ替え引っ替えしてヤルモに襲い掛かるが、全て握り潰されてしまう。それでも諦めないリーダーは殴り掛かって来たので、ヤルモはリーダーの拳を左手で握り、右手は顔面を掴んだ。
「お前の頭蓋骨って、剣より硬いか?」
「ヒッ……」
「おっ! まだ負けたと言わないか。じゃあ、グシャッとしてみよう、せ~の!」
「待て! 俺の負けだ……」
決まり手はアイアンクロー。頭が握り潰されることを想像させられたリーダーは、負けを認めるしかないのであった。
諸々の手続きをしたらヒルッカは自由の身。泣きながら喜ぶリュリュを見たヒルッカはこの時ようやく実感したらしく、遅れて泣き出していた。
その二人を横目で見つつ、クリスタはヤルモに近付く。
「消極的な感じだったのに、意外と残酷なことするのね」
「どこがだ? 誰も怪我をしてないじゃないか」
「精神的ダメージが凄いって言ってるのよ。でも、ボコボコにしてくれたほうが、スッキリしたのにな~」
「俺がやったら死ぬぞ。それに、ボコボコにしてやったから俺はスッキリだ」
「どゆこと??」
「あんなに武器を壊されたら大変だろうな~」
「プッ……あははは。そりゃ大変ね。あははは」
ヤルモがニカッと笑うとクリスタも大笑い。剣を全て折られたならば、冒険者として仕事ができない。もしくは新しく買わないといけないので、金銭面でボコボコにされたならばヒルッカの辛さを少しでも理解できると思ったのだろう。
ただ、周りの目があるのでヤルモはイロナを連れて、そそくさとその場を離れるのであった。
クリスタたちと別れたヤルモとイロナは、前回ドロップアイテムを買い取ってもらった店に出向いて売り付ける。
ヨーセッピ抜きの交渉でも、価格はある程度わかっているので騙されることはない。それどころか、ヤルモの卸す品は質がいいので喜ばれている。
冒険者ギルドからの手数料も取られないので、店側からしたら騙して来なくなるデメリットのほうが大きいようだ。
デートをするように商談をしながら王都内を歩き、適当な店で昼食。鍛冶屋にも寄って剣を受け取り、ウサミミ亭に帰るヤルモたちであった。
「あと一人か~~~」
食堂でわいわいと食事を済ませたクリスタは、ヤルモの隣に座ってわざとらしい声を出した。
「パーティ勧誘もいいけど、全然休めていないだろ。一日ぐらい体を休めろ」
「でも、できるだけ早く集めたほうがいいんでしょ?」
「まぁそのほうが俺は有り難いな。自分のペースでできるし」
「じゃあ、しばらく空席で……」
「いつまで俺たちを頼る気なんだ」
「だって~~~」
クリスタが情けない声を出すので、ヤルモはため息を吐きながら代案を出す。
「アタッカーなら、騎士から入れたらどうだ? たしか王様って、騎士を上級職に転職できるんだろ? いまいる強い奴じゃなくても、一から育てたら、文句は言われないんじゃね??」
「あ~……そっか。騎士なら簡単に強い職業につけるわね。パラディンとかなら、盾役にもなれる……」
「対人戦に慣れ過ぎている点を改善させれば、いい冒険者になると思う」
「あっ! それでか……レベルの高い騎士がいっぱい居たのに、なんでモンスターに遅れを取るのか不思議だったのよ」
「綺麗な剣では、ダンジョンでは生き残れないってことだ」
こうして最後の新規メンバーは城から募ることとなり、一段落ついたクリスタはホッとしながら眠りに就くのであった。
「さあ! 今日はやるぞ!!」
「お、お手柔らかに……」
イロナのお勤めからは逃れられないヤルモは、HPを減らしてから眠りに就くのであったとさ。
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