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05 カーボエルテ王国 王都2
108 特級ダンジョン11
しおりを挟む特級ダンジョン攻略は大詰め。地下へと向かう長い階段で休憩した勇者一行は、地下100階のダンジョンボスの部屋に足を踏み入れた。
「あれ? ボスが居ないよ??」
「本当です。おかしいですね」
「これでやっと地上に戻れるんですね。疲れました~」
クリスタとオルガは不思議に思い、リュリュはダンジョン攻略の終わりだと緊張の糸を切る。
「何を言っている。見えているではないか」
そこにイロナの叱責。ヤルモも話に入る。
「マジか~。ラスボスって、こんなデカイのもいるのか~」
「へ? デカイ??」
「ほら、二本の柱があるだろ? 辿って上を見てみろ」
クリスタたちはヤルモの指を差した先を見上げ、大口を開けて尻餅をつく。
「何あれ……」
「ひと??」
「サイクロプス……」
呆気に取られるクリスタたちの中で、正解はリュリュ。
ジャイアントサイクロプスを遥かに超えるサイクロプス。ダンジョンエネルギーが豊富な場所のダンジョンボスになることで、その体長は50メートルに届きそうなギガントサイクロプスだ。
尻餅をついたクリスタは、ギギギっと首を回してイロナとヤルモを見る。
「アレ……倒せるの?」
「デカイだけの木偶の坊だ」
「イロナさんは倒したことあるんだ……ヤ、ヤルモさんも??」
「攻略本で見た気はするんだけど……倒し方を忘れているから、個人的には避けたいかな?」
クリスタの質問にヤルモが不甲斐ないことを言うと、イロナの目が妖しく光る。
「ドラゴンどもで我は満足したから、主殿に譲ってやる」
「はい? 一緒に戦ってくれるんじゃ……」
「なんだ……我が譲ってやると言っているのに断るのか……」
「やらせていただきます!!」
イロナから殺気が放たれるので、ヤルモの返事はイエスしかないのであった。
「しかし、どうやって戦ったものか……」
イロナ頼りで戦う予定だったから余裕の表情をしていたヤルモだが、一人で戦うとなったら緊張する。
何やらシミュレーションしているが、あまりいい戦略が思いつかないので、イロナに質問してみる。
「勇者たちに手伝ってもらうことなんかは……」
「足手まといになるだけだぞ?」
「ま、上手く使うよ」
「主殿が足枷を付けて戦いたいなら好きにしろ」
「わかった。好きにする」
ヤルモはクリスタたちを集めると、作戦会議を始める。
「あんなの、私は無理だからね?」
ヤルモが喋る前に釘を刺すクリスタ。常識人のヤルモなら通じると思っているようだ。
「勇者には期待していない」
「うっ……イロナさんといい、ひどくな~い?」
「ちょっと言いすぎたけど、これからはお前がアレと戦うんだぞ? イロナじゃないけど、勇者がそれでいいのか??」
「あ……そうね。ヤルモさんたちから卒業したら、私が倒さないといけないのよね……」
さっきまで不甲斐ない顔をしていたクリスタは、真面目な顔に変わったのでヤルモは指示を出す。
「アイツは俺一人で相手をする。だからリュリュと聖女は支援魔法を切れ目なくお願いな」
「「はい!」」
「あと、勇者は攻撃魔法を撃てるだけ撃っておけ。ちょっとは経験値の足しになるだろう」
「そっか。そのために私たちも参加させようとしてたんだ。わかったわ」
「よし! 行くぞ!!」
「「「はい!!」」」
珍しく気合いの声を出して歩き出したヤルモ。後方から支援魔法が届いたら走り出し、中華包丁みたいな大剣を振りかぶる。
「おおおお~! うらああぁぁ~~~!!」
バレてもかまわない。ヤルモは大声を出しながら突撃し、飛び込んでの渾身の一撃。ヤルモの全力、全体重、遠心力まで乗せた斬り付けは、ギガントサイクロプスの左足にぶつかり、一歩後退した。
「グキャアア~!!」
それで怒ったギガントサイクロプスは、ドデカイ棍棒を振り下ろして戦闘が始まった。
「あれ??」
残念がら、棍棒はヤルモの後方に着弾。地面が揺れるほどの衝撃はあるが、ギガントサイクロプスは体が大きすぎて懐に入ってしまえば安全地帯があるようだ。
なので、ヤルモはもう一度渾身の一撃。ギガントサイクロプスの左足、先程と同じ場所を斬り付け、ダメージが蓄積される。
しかし、ギガントサイクロプスも馬鹿ではない。ヤルモの位置を特定し、素早く数歩下がった。さすがにダンジョンボスということもあり、ヤルモよりスピードがある模様。ヤルモが追いかける前に棍棒が振り下ろされた。
「たしかに木偶の坊かも?」
ギガントサイクロプスが巨大ということは、それだけ着弾までの距離があるということ。いくらヤルモより速くとも、予備動作も大きい上に、振り下ろす距離が長いので、前に出れば簡単に避けられる。
「もういっちょ!!」
また同じ場所にヤルモの渾身の一撃。ヤルモの馬鹿力で三度も斬られたならば、ギガントサイクロプスも少しよろけた。
「そうきたか! うおおぉぉ~!!」
ギガントサイクロプスも学習能力はある。いきなり棍棒を杖にするように縦に打ち下ろされては、ヤルモは避けられず盾で受けるしかなかったのであった。
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