【R18】前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配

ma-no

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05 カーボエルテ王国 王都2

100 特級ダンジョン3

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「ふざけるな!」

 ヤルモに正論を叩き付けられたクリスタが泣き出すと、テッポがいきどおる。

「何が勇者様が最下位だ。ただのオッサンが勇者様や侯爵家の俺様を評価できるわけがない! 発言を取り消せ!!」
「なんで教師を任されている俺が評価しちゃダメなんだ?」
「平民だからだ! 勇者様はこの国の王女様でもあらせられるのだぞ。それに俺様は侯爵家だ!!」
「お前な~……」

 ヤルモが苛立った顔を見せると、クリスタが二人の間に割り込む。

「ゴメンなさい。私が全て悪いの……」
「勇者様!?」
「テッポ君は黙って」
「で、でも!」
「これは命令……」
「はい……」

 テッポを睨み付けたクリスタはヤルモに目を戻す。

「それで……私はどうしたらいい?」
「切り替えが早くて助かる。そこはプラス材料だな」
「茶化さないで」

 ヤルモは真面目に採点したのだが、クリスタには不真面目に見えたようだ。

「実はこの班分けは、勇者がどうやってダンジョンを進むかを見ていたんだ」
「……どういうこと?」
「わざと俺は助言しなかった。人数も減らして指示しやすくした。その結果、勇者はダンジョン攻略のド素人ってのがわかったわけだ」
「うっ……それはわかりきっていたことでしょ~」
「まぁな。でも、実際に見ないことにはわからないこともあるってもんだ。教えるにも、実力がわからないと教えられないだろ?」
「そうだけど……」

 クリスタが反論の言葉を探していると、ヤルモはニカッと笑う。

「ここからは、一から教えてやる。ただ、俺は教え方がわからないから、目で見て覚えろ。気になった点は質問しろ。わかったな?」
「はい!」
「お前たちもだからな?」
「「はい!」」
「チッ……」

 クリスタに続き、残りの三人にも確認を取ったら、オルガとリュリュはいい返事。テッポは舌打ちしていたが、ヤルモは無視してコソコソと付け足す。

「あと、イロナがお怒りだ。不甲斐ないところを見せると酷い目にあうから気を付けろ」
「「はいぃぃ~~~!!」」
「「??」」

 イロナが怒っていると聞いて、クリスタとオルガは悲鳴のような返事。リュリュとテッポはその声の意味がわからなかったが、その先の部屋で少しはわかることとなった。

「え……これをイロナさん一人で?」

 大量のオーガジェネラルがダンジョンに吸い込まれる姿を見て、リュリュはヤルモに尋ねた。

「そうだ。とりあえず、ドロップアイテムを回収してくれ」

 クリスタたちが動き出すと、ヤルモはイロナに近付く。

「遅い!!」
「すまん。ちょっと話し込んでしまった」
「ただでさえ足が遅いんだ。喋っている暇はないぞ」
「ああ。こっからスピードを上げる。イロナは……」

 ドロップアイテムが回収できたら超片寄った班分け。イロナ以外は全てヤルモ班となって、リュリュが大丈夫かと質問していたが……

「これでもイロナに勝てない」
「「うんうん」」

 ヤルモの台詞にクリスタとオルガがめっちゃ同調するので、信用するしかなかった。


「じゃ、行こうか」

 イロナと腕を組んだヤルモを先頭に出発。最後尾にはクリスタを置いて、全体を見るように歩かせる。
 ヤルモは道が分かれている場合は足を止めて、慎重に辺りを見回してから先を進んでいるので、いつもより進行速度が遅くなっている。しかし、それがイロナには気に食わないようで、ヤルモの腕が締め付けられる。

「こないだまで、そんなに慎重に動いてなかっただろう?」
「まぁここ最近は、ここまで慎重じゃなかったな。でも、昔はこうやって進んでたから、それを勇者たちに見せているんだ」
「そういえば……我も同じようにやっていた時期があった。懐かしいな」
「ホントに……角を覗き見た瞬間、同じことやっている奴がいて、お互いめちゃくちゃ驚いたこともあったぞ」

 なんだか駆け出し時代の話で盛り上がる二人。ヤルモはできるだけ面白い失敗談を出して、イロナの機嫌を取っているだけだが……

 そんな二人を見て、リュリュはオルガに質問していた。

「あの二人、慎重に進んでいるように見えますけど、緊張感がないですね」
「二人は慣れていますからね。本当はあんな進み方しなくても、モンスターや罠のある場所なんて気付いているはずです」
「そうなのですか?」
「前回一緒に潜った時なんて、知ってる道かってぐらい無防備に歩いていましたよ」
「ほへ~。あ、だから勇者様も、あんなに無防備に歩いていたんですね!」
「私って、そんなに無防備だったの!?」

 突然、後ろからクリスタの声が聞こえて、リュリュは焦って言い訳する。

「違います違います! その……違いますからね!!」
「リュリュ君までひど~い」
「違うんです~~~」

 いや、まったく言い訳が思い付かず同じ言葉を連呼して、クリスタの心にダメージを入れるリュリュであったとさ。
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