【R18】前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配

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05 カーボエルテ王国 王都2

092 再会

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 完全休業の翌日、食事を終えたヤルモたちはエイニの出勤を見送る。

「逆じゃない?」
「さてと、今日は何しよっかな~」
「逆だったでしょ??」

 クリスタは宿屋の主人を見送ることにツッコんでいたが、ヤルモはいつものことなのでまったく相手にしない。

「装備の整備も終わっているだろうし、買い出しに行くか。お前たちはどうするんだ?」
「無視なんだ……もういいわ。私たちも買い出し。それと魔法アカデミーに行って仲間候補を探して来る」
「魔法アカデミー??」
「国が運営する学校よ。賢者様が学長をしているから、使えそうな人材がいないか探してもらっているの」
「ふ~ん……そいつらの分の買い出しも忘れるなよ」
「わかってるわよ」

 ヤルモはあまり興味なさそうだったが、クリスタは一度忘れ物をしているので注意していた。
 それから出掛ける準備が整った一行はウサミミ亭を出る。

「ねえ? だからあの子が宿の主人だよね??」

 ヤルモが戸締まりして鍵を閉めると、またクリスタの追及。

「あいつしかいないんだから仕方ないだろ。もう慣れろよ」
「ヤルモさんが適応能力ありすぎなのよ!」

 何を言ってもクリスタは納得できず、小言を聞きながら繁華街に繰り出すヤルモであった。


 町の中央辺りになるとクリスタたちとは別れ、ヤルモとイロナはブラブラ歩き、先日携帯食を買ったお店で買い出し。食料品が揃うと道具屋に向かうのだが、目的の店の道中にあった道具屋も覗いてみるヤルモ。

「やや! タピオさんじゃないですか!!」

 店に入るなり、杖を付いた老人が近付いて来たのでヤルモは顔をそむける。

「人違いだ」

 人間不信のヤルモならば、知り合いに会っても他人の振りをしてしまうのだ。

「またまた~。イロナさんもお久し振りですな」
「ん? じいさんか??」
「ははは。相変わらずですな」

 ヤルモに声を掛けた老人は、ハミナの町でお世話になったヨーセッピ。ヤルモの偽名もイロナの名前も知っていたので思い出したようだ。

「どうしてこんな所にいるんだ?」
「ここは馴染みの店でしてな。タピオさんを探すついでに寄ったのです」
「俺を??」
「ここではなんですから、奥に行きましょう。ちょっと部屋を借りるぞ」

 ヨーセッピが老店主に声を掛けると許可は簡単に出て、自分の店のようにズカズカと奥に行くのでヤルモたちも続く。
 そうして部屋にあったテーブル席に着くと、ヨーセッピは小声でヤルモを探していた理由を語る。

「どうやら、アルタニア帝国の聖女と名乗る者がタピオさんを探しているようなんです。もしも会うのに不都合があるのなら、お逃げするように言おうと探していたのです」

 ヨーセッピは、ハミナの町では様々な情報が入って来るほどの人物なので、聖女マルケッタの人となりを聞き、ヤルモを心配して探していたようだ。

「あ~……その件なら、半分ぐらい解決しているんだ。わざわざこんな所まですまなかったな」
「そうでしたか! 何やら物々しい雰囲気の聖女と聞いていましたからここまで来ましたが、老婆心でしたか」

 ヤルモは解決したようなことを言ったが、マルケッタの動向は気になるようで、二、三質問していた。

「なるほど……ダメ元だったけど、罠に引っ掛かったのか」
「聖女が何故、王都と逆に行ったか不思議に思っていましたが、さすがはタピオさんですね」

 ヨーセッピは、ヤルモがマルケッタに追われている理由をまったく聞かずに話を続けるので、ヤルモは少しだけ情報を出す。

「そうだ、タピオってのは偽名なんだ。いまはヤルモと名乗っている」
「ヤルモ……そうでしたか」
「その顔は知っていたみたいだな」
「まぁ、噂程度は……」
「筒抜けみたいだな」
「はあ。実は……」

 どうやらハミナの町ではマルケッタがヤルモの手配書をバラまいていたので、ヤルモのことは住人には凶悪犯だと伝わっているようだ。

「そうか……」
「でも、私はヤルモさんは無実だと信じています。そんな凶悪犯が無償で人助けするはずがないです!」

 ヨーセッピが擁護する発言をするのでヤルモは目頭が熱くなるが、気付かれないように話を続ける。

「別に俺は聖人ではない。だが、俺の罪は全て冤罪だ」
「その言葉を聞けただけで十分です。私はヤルモさんを信じます」
「そう言って騙すんだろ?」
「わははは。それぐらい慎重になるほうがよろしいですな」

 ヤルモが疑っても、ヨーセッピは笑うだけ。それほどヤルモのことを気に入っているのだろう。
 ヤルモは完全にヨーセッピのことは信じたわけではないが、以前売買をしたことがあるので安全かと思い、商談に乗り出す。

「ちょっとダンジョンでアイテムを手に入れ過ぎてな。いろいろ買い取って欲しいんだが、頼めないか?」
「喜んで! と、言いたいところですが、王都には支店しかないので、買い取れる物が限られます」
「それでかまわない。容量の大きなアイテムボックスも欲しいんだが、信頼できる者はいるか?」
「でしたら、この店でそこそこの物を扱っていたと思います。ここで売れそうな物も、私が高く売って差し上げますよ!」

 ヨーセッピは張り切って道具屋の老店主と交渉し、めちゃくちゃ暴利で売り付けようとして大喧嘩。それを見かねたヤルモが間に入って適正価格に落ち着いたので、今後の販売ルートの確保となるのであった。
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