77 / 360
04 カーボエルテ王国 王都1
071 魔王討伐3
しおりを挟む
地下60階のセーフティエリアであんなことやこんなことはあったが、八時間の休息時間が迫り、各々テントから這い出す。
そこで夜営の撤収はタピオの仕事。昨夜はお楽しみではなく拷問を受けていたので、身体中が痛いようだ。特に股間が……
イロナはクリスタたちの料理を監視するように見ているが、クリスタとオルガは何かがおかしい。タピオたちをチラッと見ては頬を赤らめている。
どうやら昨夜、タピオたちの行為を覗いた時に見たタピオとイロナの裸を今ごろ思い出したようだ。特にタピオの裸……
それから静かな朝食が始まったが、誰も喋ることなく終了。片付けをして、地下61階に向かうのであった。
相も変わらず、タピオとイロナは『ガンガン行こう』。タピオは一度魔王の発生したダンジョンに挑戦したことはあるが、その時と比べてかなり楽そうだ。
あの時は足手まといの勇者パーティがいたことと、一人で全てのモンスターを相手にしていたから致し方ない。
今回はイロナが遊撃に出てくれているので、単体、多くて二匹相手するだけだから、かなり早く倒せている。
逆にクリスタとオルガは暇そう。魔王発生でモンスターが強くなっているので、イロナが張り切って倒しているから回って来ない。たまにタピオが回してくれるが、タピオは初心者設定のモンスターを送るので、危なげなく倒せている。
二人の仕事は、ほとんどドロップアイテム拾い。そのせいであまりレベルが上がらないし、暇なのでコソコソお喋りしている。
「ミミックがかわいそう……」
「踏み付けて一撃って……」
何匹も悲しそうな顔で死んで行く宝箱みたいなモンスターに同情する二人。最初は効率的だとは思ったのだが、一切仕事のできないミミックの切ない表情に哀れんでいるようだ。
「どれだけレベルを上げたら、あんなことができるんだか……」
「あの二人、間違いなく上級職でしょうね。勇者様は近くで戦闘を見ていたのですから、技から職業を見極められないですか?」
「いや、ほとんど力業で倒していたから……わかんないや」
クリスタはタピオとの約束もあるので、タピオの使った変形は秘密にするようだ。
「はぁ……タピオさんみたいな頼りになる戦士がパーティに入ってくれたら……」
「みたいなじゃなくてタピオさんじゃないの~?」
「ち、違いますよ! 違いますからね!?」
クリスタとオルガがガールズトークに花を咲かせていても、タピオとイロナはガンガン進み、地下80階のセーフティエリア手前まで到着する。
「じゃあ、あいつは勇者の獲物だ。一人で倒せ」
「ムリムリムリムリ!!」
ライオンの頭、羊の胴体 毒蛇の尻尾を持つ巨大なモンスター、キマイラエンペラーを前にして、イロナの無茶振りが来たのでクリスタは高速で頭を横に振っている。
「死ぬ前に助けるからさっさと行け!」
しかし、イロナから死の宣告が来てしまったので、クリスタは戦うしかない。そこに、常識人のタピオが止めに入る。
「アレはさすがに一人では厳しいぞ」
「何故だ? ここまででレベルが上がっているだろ??」
「イロナが倒しすぎて、勇者に経験値が回っていなかったんだよ」
「あ……しまった……」
タピオの指摘を受けて、イロナは失敗に気付いてくれたようだ。
「俺が盾役するから、攻撃に集中しろ。たぶん攻撃はあまり通じないと思うから、反撃には注意しろよ」
「タピオさ~ん!」
鬼教官から助けられたクリスタは涙目でタピオに抱きつき感謝していたが、そんな場合ではない。
イロナから殺気が飛んで来たので、二人はいそいそとキマイラエンペラーに突撃する。
タピオを先頭を走り、キマイラエンペラーから直接攻撃が来ると盾で受け止める。さすがはタピオ。何倍も体重が違っていても、1ミリも下がらない。
ここでクリスタは飛び出そうとしたが、タピオに止められて背中に回る。その直後、キマイラエンペラーから【燃え盛る火炎】が放たれ、辺りは炎に包まれた。
「俺の攻撃に合わせろ!」
「はい!」
タピオは盾を構えて【燃え盛る火炎】押し返し、キマイラエンペラーの懐に入ると斬り付け。その重たい攻撃がアゴに入り、キマイラエンペラーはのけ反った。
その隙に、クリスタは横に回って連続斬り。少ないダメージを手数で補おうとしたのだが、それは悪手。キマイラエンペラーの尻尾の蛇の攻撃範囲に入ってしまっていた。
「ぐわっ……」
「言わんこっちゃない」
【猛毒の息】をもろに喰らうクリスタ。タピオはキマイラエンペラーの足に重たい一撃を喰らわし、流れで盾を構えながら勇者の前に立つ。
「一旦下がるぞ」
「ゲホッゲホッ……」
クリスタは声が出せなかったがタピオの背中を叩いて返事とし、タピオはキマイラエンペラーの攻撃を捌きながら後ろに下がる。
「聖女! 出番だ!!」
「【キュア】!!」
タピオはオルガの魔法範囲内に戻って声を掛けると、すでに詠唱を終えていたオルガはただちに解毒。続いて治癒魔法を使ってクリスタのHPも回復する。
「ごめん……」
「いい。気にするな。次からはすぐに戻れよ」
「はい!」
ここからクリスタは慎重に動き、タピオの後ろから飛び出てはヒットアンドアウェイ。【猛毒の息】だけは完全に防げず少し吸い込むが、オルガに治してもらって戦闘に戻る。
そうして時間を掛けると、ほとんどタピオの攻撃だけでキマイラエンペラーは地面に倒れるのであった。
そこで夜営の撤収はタピオの仕事。昨夜はお楽しみではなく拷問を受けていたので、身体中が痛いようだ。特に股間が……
イロナはクリスタたちの料理を監視するように見ているが、クリスタとオルガは何かがおかしい。タピオたちをチラッと見ては頬を赤らめている。
どうやら昨夜、タピオたちの行為を覗いた時に見たタピオとイロナの裸を今ごろ思い出したようだ。特にタピオの裸……
それから静かな朝食が始まったが、誰も喋ることなく終了。片付けをして、地下61階に向かうのであった。
相も変わらず、タピオとイロナは『ガンガン行こう』。タピオは一度魔王の発生したダンジョンに挑戦したことはあるが、その時と比べてかなり楽そうだ。
あの時は足手まといの勇者パーティがいたことと、一人で全てのモンスターを相手にしていたから致し方ない。
今回はイロナが遊撃に出てくれているので、単体、多くて二匹相手するだけだから、かなり早く倒せている。
逆にクリスタとオルガは暇そう。魔王発生でモンスターが強くなっているので、イロナが張り切って倒しているから回って来ない。たまにタピオが回してくれるが、タピオは初心者設定のモンスターを送るので、危なげなく倒せている。
二人の仕事は、ほとんどドロップアイテム拾い。そのせいであまりレベルが上がらないし、暇なのでコソコソお喋りしている。
「ミミックがかわいそう……」
「踏み付けて一撃って……」
何匹も悲しそうな顔で死んで行く宝箱みたいなモンスターに同情する二人。最初は効率的だとは思ったのだが、一切仕事のできないミミックの切ない表情に哀れんでいるようだ。
「どれだけレベルを上げたら、あんなことができるんだか……」
「あの二人、間違いなく上級職でしょうね。勇者様は近くで戦闘を見ていたのですから、技から職業を見極められないですか?」
「いや、ほとんど力業で倒していたから……わかんないや」
クリスタはタピオとの約束もあるので、タピオの使った変形は秘密にするようだ。
「はぁ……タピオさんみたいな頼りになる戦士がパーティに入ってくれたら……」
「みたいなじゃなくてタピオさんじゃないの~?」
「ち、違いますよ! 違いますからね!?」
クリスタとオルガがガールズトークに花を咲かせていても、タピオとイロナはガンガン進み、地下80階のセーフティエリア手前まで到着する。
「じゃあ、あいつは勇者の獲物だ。一人で倒せ」
「ムリムリムリムリ!!」
ライオンの頭、羊の胴体 毒蛇の尻尾を持つ巨大なモンスター、キマイラエンペラーを前にして、イロナの無茶振りが来たのでクリスタは高速で頭を横に振っている。
「死ぬ前に助けるからさっさと行け!」
しかし、イロナから死の宣告が来てしまったので、クリスタは戦うしかない。そこに、常識人のタピオが止めに入る。
「アレはさすがに一人では厳しいぞ」
「何故だ? ここまででレベルが上がっているだろ??」
「イロナが倒しすぎて、勇者に経験値が回っていなかったんだよ」
「あ……しまった……」
タピオの指摘を受けて、イロナは失敗に気付いてくれたようだ。
「俺が盾役するから、攻撃に集中しろ。たぶん攻撃はあまり通じないと思うから、反撃には注意しろよ」
「タピオさ~ん!」
鬼教官から助けられたクリスタは涙目でタピオに抱きつき感謝していたが、そんな場合ではない。
イロナから殺気が飛んで来たので、二人はいそいそとキマイラエンペラーに突撃する。
タピオを先頭を走り、キマイラエンペラーから直接攻撃が来ると盾で受け止める。さすがはタピオ。何倍も体重が違っていても、1ミリも下がらない。
ここでクリスタは飛び出そうとしたが、タピオに止められて背中に回る。その直後、キマイラエンペラーから【燃え盛る火炎】が放たれ、辺りは炎に包まれた。
「俺の攻撃に合わせろ!」
「はい!」
タピオは盾を構えて【燃え盛る火炎】押し返し、キマイラエンペラーの懐に入ると斬り付け。その重たい攻撃がアゴに入り、キマイラエンペラーはのけ反った。
その隙に、クリスタは横に回って連続斬り。少ないダメージを手数で補おうとしたのだが、それは悪手。キマイラエンペラーの尻尾の蛇の攻撃範囲に入ってしまっていた。
「ぐわっ……」
「言わんこっちゃない」
【猛毒の息】をもろに喰らうクリスタ。タピオはキマイラエンペラーの足に重たい一撃を喰らわし、流れで盾を構えながら勇者の前に立つ。
「一旦下がるぞ」
「ゲホッゲホッ……」
クリスタは声が出せなかったがタピオの背中を叩いて返事とし、タピオはキマイラエンペラーの攻撃を捌きながら後ろに下がる。
「聖女! 出番だ!!」
「【キュア】!!」
タピオはオルガの魔法範囲内に戻って声を掛けると、すでに詠唱を終えていたオルガはただちに解毒。続いて治癒魔法を使ってクリスタのHPも回復する。
「ごめん……」
「いい。気にするな。次からはすぐに戻れよ」
「はい!」
ここからクリスタは慎重に動き、タピオの後ろから飛び出てはヒットアンドアウェイ。【猛毒の息】だけは完全に防げず少し吸い込むが、オルガに治してもらって戦闘に戻る。
そうして時間を掛けると、ほとんどタピオの攻撃だけでキマイラエンペラーは地面に倒れるのであった。
11
お気に入りに追加
317
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる