【R18】前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配

ma-no

文字の大きさ
上 下
74 / 360
04 カーボエルテ王国 王都1

069 魔王討伐1

しおりを挟む
「待ってください!」

 タピオパーティに無理矢理加入させられた勇者クリスタが暗い顔をしながら準備していると、聖女オルガから待ったが入ったのでタピオが対応する。

「なんだ?」
「私も連れて行ってください!!」

 必死に巨乳を揺らして説得するオルガ。しかしタピオの答えは決まっている。

「足手まといだ」
「確かに戦闘では邪魔になるかもしれません……しかし、勇者様の怪我を治せるのは私だけです!」

 タピオは考える。

 イロナブートキャンプでは、二度も勇者は死に掛けた。
 これから先、イロナが無茶振りするのは確実。
 それに聖女は巨乳。
 勇者が怪我をする度に自分の回復アイテムを持ち出すのは少しもったいない。
 勇者のためとかいって、本当は俺に気があるのでは? ぎゃっ!?

 オルガの胸を見ながら考え事をしていたタピオは、イロナに「ドゴンッ!」と背中を叩かれてもだえているので、イロナが答えを言い渡す。

「よかろう。ついて来い」
「つつつ……いいのか?」
「勇者は弱いのだから薬箱は必要だろう」

 イロナが許可を出した瞬間、オルガはキラキラした目になったが、理由を知ったらズーンと肩を落とす。これでも人々に癒しを与える聖職者なのに、薬箱扱いされたらそうなるよ。
 同じように暗い顔をしているクリスタに肩を叩かれて、聖女オルガもタピオパーティに加入するのであった。


 それから勇者パーティは荷物を再分配し、食料の半分はタピオパーティに。回復アイテムは全てタピオパーティに分配された。
 これは、セーフティエリアは機能していることと、もうしばらくしたら転送魔法陣が使えるからの判断だ。

 残る勇者パーティの引率は賢者ヨウニ。現在は魔法学校の校長をしているのだが、若い頃は前々勇者のパーティ入り、ダンジョン探索をしていた経験があったのでアドバイザーとして連れて来られていた。
 上級職のほとんどは前勇者と共に旅立ったので、この老齢のヨウニしか頼りになる者がいなかったようだ。ただ、年齢に加えてブランクが長かったため、戦闘はあまり役に立たず、寄る年波には勝てないと気落ちしていた。

 これ以上、地下について行く体力も気力もないので、ここに残る決断に至る。ぶっちゃけ、生きて帰れてラッキーだと思っている。
 なので、先に地上に戻って国王に報告を入れるとしても、クリスタとオルガから出された箝口令は守ってくれるようだ。


 転送魔法陣が機能したらすぐに帰還する勇者パーティを残し、タピオパーティは地下41階に進む。

 睡眠時間を取ったこともあり、モンスターは復活しているがこの階層のモンスターはタピオとイロナの敵ではない。ただ、クリスタには強い敵であったので、イロナに群れに投げ込まれたりして怪我をしていた。
 オルガはめちゃくちゃ驚いてイロナを糾弾していたが、睨まれてタピオの後ろに隠れる。その時、聖女の柔らかい物がタピオの腕に当たったのでだらしない顔になり、イロナに殴られてタピオも怪我をしていた。

 先を進み、何度もクリスタが酷い目にあう姿を見たオルガは、タピオにこっそり相談を持ち掛ける。

「あの人、なんとかなりませんか?」
「俺には無理だ」
「このままでは、勇者様が死んでしまいます。タピオさんだけが頼みなんですよ~」

 オルガがタピオの両手を取って上目遣いで懇願するので、タピオはデレーンとなるが……

「そんなことをするから俺まで怪我するんだぞ? ぐわっ!!」

 イロナのせっかん。「ドゴーン!」と殴られて痛い思いをするタピオ。オルガは素でこんな小悪魔仕草をするので、タピオはたまったものじゃない。
 ダメージを減らすためには、イロナを説得するしかないのだ。

「てか、あまり勇者に戦わせると、進む速度が遅くなるぞ」
「むっ……一理ある」
「それに聖女のMPも限度があるんだから、ここはセーフティエリアの手前だけを勇者担当にしたらどうだ?」
「うむ。妥当なところか……」

 なんとかイロナが折れてくれたので、タピオはホッと胸を撫で下ろすが、感動したクリスタとオルガがタピオの腕に絡み付いて来たので、だらしない顔になった。

「ぎゃっ! なんで鎧がないところばかり狙うんだよ~」
「我というものがあるのに、デレデレしている主殿が悪いのだ」

 イロナは嫉妬しているようだが、タピオは蹴られた所が痛すぎて気付けていない。クリスタとオルガはというと嫉妬には気付いているようだが、イロナのローキックの音が凄すぎたので怖くなっていた。


 イロナブートキャンプの回数が減ったので、タピオパーティの攻略速度が上がり、さくさく地下へと進む。
 その時、タピオが道を知っているかのように歩くので、クリスタとオルガの質問攻めにあっていた。だが、タピオは自分の情報になると口を閉ざすので、せっかく仲が良くなったと思った二人は、それ以上の質問はできなかった。

 そうして地下59階、セーフティエリアに向かう階段の手前で、勇者はイロナに背中を押される。

「フフ……おあつらえ向きの奴じゃないか」
「オーガジェネラルにキング……」
「一度殺されかけた相手だ。復讐してやれ」
「はい!」

 こうしてイロナに発破をかけられたクリスタは、一人でオーガの群れに突撃して行くのであった。

「あんなことを言ってますけど……」
「五匹だし、一人でなんとかなるんじゃないかな?」
「タピオさんもあっち側ですか~」

 一人だけ超心配しているオルガを残して……
しおりを挟む
感想 225

あなたにおすすめの小説

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

処理中です...