【R18】前科三犯、現在逃走中のオッサンは老後が心配

ma-no

文字の大きさ
上 下
70 / 360
04 カーボエルテ王国 王都1

065 スタンピード7

しおりを挟む

「お前は上に戻っていろ」

 上級ダンジョン最下層のモンスターの大群では、クリスタでは足手まといになると思い、タピオは逃がそうとする。

「じゃ、じゃあ、私はこの辺で……」

 さすがに見たこともない巨大モンスターの大群では、足手まといになると思ったクリスタ。というより、イロナの無茶振りが来そうなので、タピオの言葉に甘えてペコペコ頭を下げて逃げる。

「何を言っている。お前もここに残って戦うのだ。それとも何か? お前は強くなることが嫌なのか??」
「い、いえ! 戦わせてもらいます!!」

 残念ながら、イロナに睨まれたからには逃げることも許されない。タピオと共に、イロナブートキャンプの餌食となるクリスタであった。
 といっても、一人だけレベルが段違いに低いクリスタ。これでは満足にレベルアップはできないし、あっという間に死ぬとタピオが説得すると、なんとかイロナも折れてくれた。
 なんだかイロナが「倒す前に死なれると困る」的なことを言っていたから、生きて戻れたとしても地獄が待っていると悟ってしまうクリスタであったとさ。


 作戦の概要はタピオに全て丸投げ。イロナは巨大モンスターの群れに辛抱堪らなくなって走り出してしまった。
 残されたクリスタとタピオは……

「ははは。強敵に臆せず突っ込むって、アレこそ勇者の姿みたいね」
「アレは蛮勇だ。絶対にマネするなよ?」
「だよね! タピオさんが常識人でよかった~」

 陰口を叩いていた。

「とりあえずパーティ申請な。あと、俺の背中に隠れておけ。チャンスがあれば声を掛ける。いまのお前なら、倒せなくても多く経験値が入るだろ」
「神ですか! タピオさんだけが私の味方です~」
「いいからさっさと準備しろ。遅れるとイロナに怒られるぞ」
「はい!!」

 イロナブートキャンプの難易度が高そうだと覚悟していたクリスタは、タピオに守られてレベル上げができると聞いて、感謝しかない模様。しかしイロナの名前が出たので、急いで準備をするクリスタであった。


「じゃ、命を大事に」
「はい!」

 タピオは勇者を背中に隠し、自分より遥かに大きな巨大モンスターの群れに突撃。次々と吹っ飛ばすと少し下がって、突撃して来た巨大モンスターを弾き飛ばす。それを繰り返し、タピオは勇者を守りながら階段まで後退した。
 ここから先は、一歩も通さない背水の陣。というわけではなく、今までまばらにダメージを与えた巨大モンスターを一ヶ所に集めただけだ。

 巨大モンスターにはある程度のダメージはあるので、クリスタの出番が作れる。MPがあるだけ攻撃魔法を撃たせれば、タピオに削られて瀕死の巨大モンスターならば、運が良ければトドメを刺すことができる。
 クリスタのMPが尽きれば剣に切り替え、タピオが弾き返して、かつ、単体になった巨大モンスターに突撃。何度か剣を振るい、これまた運が良ければクリスタにも倒せる。
 ただ、レベル不足のクリスタでは、時間が掛かるしたまに反撃も受けてしまうので、その場合はすぐにタピオの後ろに戻り、巨大モンスターはタピオがまた吹き飛ばす。

 こうしてクリスタは、タピオに守られながらも着々とレベルが上がって行くのであった。


 一方、巨大モンスターに我先に突っ込んだイロナは、縦横無尽に走り回り、空を駆け、笑いながら剣を振っていた。ただ、最下層のモンスターということもあり、一撃とはいかず、何度も斬り付けて倒す。
 一部は仕留めきれずに抜けられるが、そこにはタピオが待ち構えているし、逃げる手負いのモンスターを追うよりも、次々現れる強敵と戦うほうが楽しいようだ。


 戦い始めて30分。ついに……

「きゃっ!」
「オラッ! 一旦下がれ!!」

 クリスタの限界が来る。いくらレベル爆上げ中と言っても、スタミナは無限ではない。巨大モンスターの攻撃を受けたところをタピオのケンカキックに助けられ、階段を少し上がったところでクリスタは腰掛ける。

「はぁはぁ……情けない……」

 クリスタは次々と吹き飛ぶ巨大モンスターを見ながら自分の不甲斐なさを嘆く。そうしてタピオが用意してくれていたポーションやMPポーションを飲みながらしばしの休憩。

「てか、どうやったらあんなに強くなれるのよ!」

 疲れが取れて来ると、尋常ではない二人の強さに八つ当たり。本来ならばパーティで協力して倒すモンスターを、実質一人で倒し続ける二人に追い付けるか不安なようだ。

「はぁ……行かないとイロナさんに怒られるし……行くか!」

 こうして一通り愚痴って体力の戻ったクリスタは、渋々立ち上がるのであった。


 クリスタが戻り、必死に巨大モンスターを攻撃しているとタピオから声が掛かる。

「お~。調子が上がって来たじゃないか」

 クリスタは最初よりレベルが上がり、それに伴い動きが良くなって来たようだ。

「そうかな? 自分ではわからないけど……」
「段違いにいいぞ。もう少しレベルが上がれば、キングでも相手になるかもな。この短時間で成長するなんて、さすが勇者だ」
「あ、ありがとう!」

 タピオに褒められたクリスタは、嬉しそうに剣を振る。そもそも巨大モンスターの大群はタピオでもしんどい相手だったのだが、クリスタがトドメを刺すのに攻撃回数が減って来たので、無駄話をできる時間が作れたようだ。

 そして数が減って来たら二人で協力して倒したり、時にはクリスタひとりに戦わせたりと、タピオならではの訓練を施す。


 こうしてスタンピード第四波が終わる頃にはクリスタのレベルは爆上がりとなり、自信を持つ結果になるのであった。
しおりを挟む
感想 225

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...