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25 レベル上げは楽勝にゃ~

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「も、もうダメです……」

 ハルトの剣に、わしが小姑かってくらいダメ出しを続けて小一時間。けっこう頑張ったハルトに限界が来たようで、膝がゲラゲラ笑って立っているのもやっとだ。

「じゃあ、次の一撃で勘弁してあげるにゃ~」
「お、鬼……」
「猫だにゃ~。にゃはは」

 わしはいちおう角を生やせるが、猫で間違いないので即訂正。ハルトは渋々だが、息を整えて剣を中段に構えた。

「すぅ~~~……行きます!」

 ハルトはまた馬鹿正直に突っ込んで来たので軽くあしらってやろうと思ったが、わしの背中がぞわっと来たので全力回避。紙一重でハルトの剣をかわした。

「おお~。すっごい威力にゃ~」

 後ろを見たら地面に大きな亀裂が入っていたので、わしの勘は正しかった。

「な、なんですかこの威力は??」
「それは勇者の剣に聞いてくれにゃ。でも、これこそが勇者の剣の力……いや、使い手が引き出した力じゃないのかにゃ? 無駄にゃ力が抜けて、いい太刀筋だったにゃ~」
「やっと褒めてもらえました~」

 わしが褒めるとハルトはへなへなっと尻餅をついたので、わしは水筒を投げ渡した。

「いつでもその力を引き出せるように精進するんにゃよ~?」
「はい!」

 そして、肩をポンッと叩いてコリス達の元へ戻るわしであった。


「お疲れ」

 ハルトの元へ勇者パーティが集結してわいわいやっている姿をわしが見ていたら、べティが寄って来た。

「最後のって必死に避けたように見えたけど、あたしの気のせい?」
「気のせいではないかにゃ?」
「なによそれ」
「わしもにゃんか嫌な予感がしたから避けちゃったんにゃ。勇者の気迫か、はたまたこの世界特有の何かがあるのかもにゃ~」
「あ~。アレね。電球出るもんね。さっきなんて、勇者君の両膝から笑い声が出てたわよ」
「真面目にゃことしてたから、ツッコミをこらえるの大変だったにゃ~……あ、そうにゃ。クイズ大会でもしてみるにゃ~?」
「それ面白そうね! 写真も撮って!!」

 わしとべティは出そうで出て来ない銀幕俳優の名前の当て合い。コリスには料理名を当てさせて、謎現象の写真撮影。上手く思い出せた時には必ず電球が頭の上に出現するので、辺りが明るくなる。
 記憶力が異常に高すぎるノルンだけは、どんな問題を出してもすぐに答えるので面白くなさそう。でも、電球が出た瞬間にその上で写真に映ろうとする遊びを思い付いていた。

 わし達がきゃっきゃっと遊んでいたら、サトミ達がこれからどうするかと聞きに来た。わし達の遊びには興味ないみたいだ。
 とりあえずハルトのスタミナを聞いてみたところ、スタミナ回復アイテムを飲んだから大丈夫だとのこと。なので、3時のおやつを食べてから、シルバースライム狩りを再開するのであった。


「みんにゃにこれ渡しておくにゃ。スライムに突き刺してやれにゃ」
「針ですか??」
「たぶん効くと思うにゃ。ハルト君は剣で倒すんにゃよ~」

 サトミ達に白銀の針を渡し、フェンリルのレオには針を四角い木に固定して口で噛んで持てるようにしてから歩き出したら、さっそくシルバースライムを三匹発見。コリスとわしで捕まえて来て、二匹はサトミとノルンに倒させる。

「あっ……一発です……」
「ノルンちゃんは聖剣を手に入れたんだよ~!」
「ただの針にゃ~」

 ノルンが大袈裟なことを言っているのでわしは訂正したが、本当はただの針ではない。わしが腰にぶら下げている神剣【猫撫での剣】と同じ製法で作った針なので、ノルンの聖剣発言はあながち間違いではないのだ。

「柄と鞘も作ってだよ~」
「目の前でパタパタするにゃ~。あとで作ってやるにゃ~」
「やっただよ~!」

 ノルンの大きさにはピッタリの針なので、ノルンに取ってはマジで聖剣になるかもしれない。とりあえず適当なことを言って追い払ったら、残りのシルバースライムをハルトの目の前に投げてやった。

「きえ~~~!!」
「そんにゃ掛け声出してたにゃ?」

 すると、ハルトは気合いの袈裟斬り。その会心の一撃で、見事にシルバースライムは真っ二つとなった。

「できました! 師匠!!」
「いつから師匠になったかわからにゃいけど、師匠命令にゃ。さっきの『きえ~』ってのはにゃに??」
「きえ~はきえ~です」
「だからなんにゃの~~~??」

 師匠の力を使っても「きえ~!」の正体は聞き出せず。だから破門にして先に進んだ。

「さってと、テンポよく行くんにゃよ~?」
「「「「「にゃ~~~!!」」」」」

 第2フロアに上がったら、目に付くシルバースライムをわしとコリスで捕まえてポイポイ投げる。するとハルトは勇者の剣で倒し、その他は針でつついてトドメを刺す。
 ちなみに皆の返事が「にゃ~!」なのは、べティが何かやりやがったと思われる。わしが睨んだら、目を逸らして鳴らない口笛を吹いていたから確実だ。

 シルバースライムの虐殺をしながら歩いていたら、セーフティーエリアに到着。時間的に夜営の準備をしたほうがよさそうなので、今日の迷宮攻略はここまでにするのであった。


「わかったにゃ。わかったから順番守れにゃ~」

 セーフティーエリアでは、わしが大人気。料理を手伝おうと思っていたけど、お昼と同じくハルトとアオイを食事係のべティの元へと送り込んだ。
 これで作業ができるようになったので、ノルンと妖精モカ用の針に、つばを鉄魔法でちょちょいのちょいで付けて、握りは丈夫な糸をグルグル巻きにして柄っぽく仕上げる。
 鞘は木に針をぶっ刺して、外側から風魔法で綺麗に削ってやればそれっぽくなったはず。貫通すると危ないから、底にだけは白魔鉱を付けてやった。

「これでいいにゃ?」
「「やっただよ~」」
「モカはノルンちゃんの口癖うつってにゃい?」

 なんだかノルンが増えたように見えるので、うっとうしい。それに目の前でチャンバラごっこしないで欲しい。

「あぶにゃいから!!」
「「えへへ~」」

 超頑丈なわしでも怪我する物をこいつらに与えたのは失敗かもしれない。こんこんと危険性を説いたけど、誰かに突き刺さないことを祈るしかできないわしであった。


 そんなことをしていたら、料理ができたと呼んでいたのでわしはそちらのほうへ。しかし、誰かに尻尾を掴まれたので止まった。

「私にも剣を教えてくれないだろうか! 師匠!!」
「ごはん食べてからにゃ~」

 大人気の理由のもうひとつは、この女騎士リン。ハルトを簡単にあしらうわしに惚れ込んでいるのでうっとうしい。
 料理を食べてる間も、流派がどうのこうの聞かれて面倒くさい。いちおう猫又流を名乗っているけど、思い付きで適当に言っているだけなのでそんな流派はこの世にないから、入らないほうがいいよ?

 リンはどうしても猫又流に入りたいようだったので、わしに一発でも当てたら入れてあげると約束して、リンの名誉を守るわしであった。


 食後の運動でリンを軽くあしらったら、サトミにどうやって寝るのか質問してみた。

「ギルドから結界テントを借りて来ましたので問題ありません。いきますよ~?」

 サトミがボール状の物をグッと握ってから投げたら、そこそこ大きなテントがボフンッと登場。中も見せてもらったら、ベッドが四人分あったので、なかなか高性能のテントみたいだ。

「ベッドがあんにゃに小さい物に収まってたんにゃ~。不思議にゃ~」
「アイテムボックスのような機能が付いてるんですよ。あと、中から入口を閉じると、結界が発動しますので安心して寝られるんです~」
「にゃるほど~。ところでお風呂やトイレはどうするにゃ?」
「トイレは……知ってますでしょ!」

 ここまで来る途中で、もよおした場合は壁の隅でチョロチョロしているのをわしも見たしわしも見られていたから知ってるけど、バシバシ叩かないで欲しい。

「そんにゃに高性能にゃら付いてると思っただけにゃ~」
「外でお風呂なんて、お父様でも大移動する時でしかやりませんよ」
「にゃるほど~。じゃ、わし達はあっちで休ませてもらうにゃ。おやすみにゃ~」

 わし達は畳み敷きバスに布団を出して、ぬくぬく眠る。でもその前に、今日の疲れは簡易露天風呂で落とす。

「何をしてますの!?」
「お風呂にゃ~。てか、さっきろくろ首みたいになってにゃかった??」

 この簡易露天風呂は、横からはなんとか見られないが、壁を登れば余裕で中を覗ける。なので、ろくろ首みたいに首を伸ばせば余裕で見ることができる。
 てか、サトミの顔が浮かんでいると思ったら肩と合体したから、わしの見間違いではないはずだ。

「入っていいですか?」
「男のわしが出てからにゃ~」
「きゃっ」

 このまま壁からダイブしそうなサトミには、湯船から立ち上がってわしの性別を思い出させてあげる。毛のせいで大事な部分はぜんぜん見えないけど……
 そしたらサトミは今ごろ恥ずかしくなったのか、手で目を隠して落下して行った。たぶん、わしのたくましい体に見惚れてしまったのだろう。

「逞しい? このお腹が??」
「ポヨンポヨンなんだよ~」
「お腹さわんにゃいでくんにゃい?」

 わしのモフモフボディをけなすべティとノルンに文句を言い、コリス達も連れてお風呂から上がったら、サトミを呼びに行く。

「では、行きましょうか!」
「ボボボボ、僕は……」
「ハルト君は置いて行けにゃ~」

 ハルトとの既成事実は作らせねぇわし。リンとアオイを露天風呂に押し込んで、わしはバスの中でウトウト。ハルトからお風呂を上がった報告や悲鳴を聞いたような気がするけど、そのまま眠りに就くわしであった。


 翌朝は、なんかサトミとリンがずっと腕を組んでいるので「デキてるの?」と聞いたら、昨夜サトミがハルトを襲おうとしたから見張っているらしい。
 どちらかというとリンがサトミを襲っているように見えるけど気のせいだろう。ずっとサトミの髪の毛をクンカクンカしているのも気のせいなので、朝の身支度を整えるわし達であった。

 この日もシルバースライム狩りまくって、最上階に居たドデカいシルバースライムを時間を置いて何度も勇者パーティに倒させたら、夕方前にはセーフティーエリアに移動。

「これでどうかにゃ~?」
「ちょっと待ってくださいね」

 ここでレベルの確認。サトミはレベルアップ装置を広げて、勇者パーティの冒険者カードに処置を施して行く。

「最後の私も……来ました! 全員、レベル99で~す!!」
「「「「「おおぉぉ~」」」」」

 たった二日で、勇者パーティは限界レベル到達。

「あたし達のほうが早かったよね~?」
「うんだよ。お昼には届いたんだよ」
「「ね~??」」
「水差すようにゃこと言うにゃ~」

 それを嘲笑あざわらうべティ&ノルンに説教するわしであっ……

「私も勇者パーティの皆さんより早かったです!」
「アオイさんも自慢しにゃい!!」

 ついでにアオイも加えて説教するわしであったとさ。
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