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拾肆 最終配信 其の三
86 復活の巻き
しおりを挟む「嘘だろ~!!」
ジヨンの身分を聞いた半荘は、信じられないからかジヨンを問い詰める。
「だってさ~。銃の扱いに慣れてたじゃないか~」
「そ、それは、仕事上、軍人さんに教えてもらった事があったからよ」
「え~! ぜったい嘘だ~。俺に毒を盛ったのに、そんな事をする案内人がいるわけないって~」
「ちょ、毒なんて持ち歩いてるわけないでしょ!」
「な、なんだ!?」
ジヨンは反論しながら半荘に抱きつき、耳元で小さく呟く。
(お願い。それ以上言わないで。配信中に本当の事を言えるわけないでしょ。あとで詳しく話すから。ね?)
それだけ言うとジヨンは離れ、半荘も了承する。
事実は、半荘の大正解。
独島の案内役は半分本当で、ジヨンの本当の仕事は独島観光に来た者の見張り役。
外国人が来た時には逐一チェックし、韓国人の場合はしっかり学んでいるか、もしくは否定する者を上に報告する。
否定した者は別の施設で再教育がなされ、韓国の歪んだ歴史を真実と記憶させられて世に放たれるのだ。
それ以前にも、暗い仕事をしていたジヨンだったが、半荘にわざわざ教える気もないようだ。
ジヨンが残っていた理由は、銃撃が起きた時に上司に確認を取ると、隠れていろと言われたから。
本来、二人で業務に当たるはずだったが、同僚の男が乗船前に腹痛でダウンし、残れる人物がジヨンしか居なかったのだ。
何が起きているかはわからなかったが上司に逆らう事もできず、他の人には黙っているように頼み、一人で残った。
その後、犯人が忍チューバーと知って、悩む事に。
悩んでいた理由は、これほど韓国に尽くしているのに待遇もよくならないのでどこかに亡命しようかと考えていたから、半荘の偽装結婚は魅力的に感じたから。
なので半荘を心配したり、上司からの指示に従ったり、どっち付かずの演技をしていたのだ。
結局は愛国心に負けて、ミサイルが迫る独島に残る事にしたようだが……
「えっと……ガイドさんだったんだ」
とりあえず、ジヨンの嘘に付き合う半荘。
「まぁ俺に身分を知られたく無かったからって、学生は言い過ぎだろ? バレバレ……」
「ああん!?」
年齢に言及するとジヨンの逆鱗に触れたらしく、半荘は恐怖する事となった。
なので、違う話に変える。
「それで愛国者がせっかくの助けを断って、何をしようとしてるんだ?」
半荘の問いに、ジヨンは観念したのか真実を告げる。
「愛国者って言ったでしょ? この島が、一秒でも長く独島であるためには、私が残るしかなかったのよ」
「あ~。だからゴムボートが沈んだのか。おかしいと思ってたんだ」
「フフフ。やっと気付いたのね」
勝ち誇った顔をするジヨンは、そのまま喋り続ける。
「私がこの島で死ねば、名が残るでしょ? お墓だって作られるわ。そうなれば、いつまでも韓国の島だと主張し続ける事ができるわ」
「ふ~ん……愛国者っぽいけど、俺には狂人にしか見えないな。それに……」
半荘は反論するが、その先はジヨンに奪われる。
「そうよ。あなたがこの島に残っていたら、私の作戦は失敗。あなたのお墓はいらなかったのにな~」
ジヨンは肩をすくめて笑う。
自分の死を受け止め、半荘も生きて島を離れられないと確信した発言だ。
ジヨンの覚悟を受け止めた半荘は、頬をポリポリと掻きながら申し訳なさそうに口を開く。
「えっと……ジヨンを死なせる気はないんだけど……」
「まぁあなたならそう言うと思っていたわ」
嬉しそうに反論するジヨンは、肩から掛けたバックをゴソゴソと探る。
「……あれ?」
しかし、目的の物は見付からない。
「探してる物って、もしかしてコレ?」
ジヨンの目的の物は、半荘の胸元から出て来たので言葉を失う。
「銃なんて何に使うんだよ」
半荘の持つ銃は小振りの銃。
荷物をまとめる時に気付き、念のため半荘は抜き取っていたのだ。
「それじゃなくても……」
「ああ。ナイフも錠剤も没収したぞ。だから自殺もできない」
「な、なんで……」
「正体がわかっていたって言っただろ?」
半荘はジヨンの持つ危険な物は、全てバックの中から抜いていたのでジヨンの打つ手は無くなってしまった。
それでもジヨンは大声で笑う。
「あははは。さすがは忍チューバーね。でも、そろそろ時間よ。私は韓国軍と連絡を取っていたから、ミサイルの正確な着弾時間を知っているのよ!」
ビシッと指差すジヨンは、勝ちを確信して喋り続ける。
「あなたと同じ墓に入るのは不本意だけど、韓国にも勝機が残るなら本望よ。あははは」
高笑いするジヨンに半荘は……
「あの~……俺が何も手を打たずに、ここに来たと思っているのか?」
申し訳なさそうに質問する。
「え……」
「それじゃあ、そろそろ行こっか」
言葉を失うジヨンを無視して、半荘は近付く。
「い……いや! 来ないで!!」
叫びながら逃げ出そうとするジヨンは、あっと言う間に半荘に回り込まれて、あられのない姿にされた。
「イヤーーー! なんて事するのよ~~~!!」
その姿とは、ロープを巻かれた姿。
俗に言う、亀甲縛りだ。
この事態には、ジヨンは本気の悲鳴をあげた。
「だって、空を飛ぶのに暴れられたら危険だろ?」
「そ……空??」
質問に質問を返すジヨンの横では、何処から出したのか長い棒と大きな布で工作をする半荘。
「ま、まさか……」
そして半荘はロープでジヨンと自身を縛り、工作で作り出した物にも括り付けて準備完了。
「さあ、行くぞ~~~!!」
「キャーーー!!」
【大凧の術】復活。
ピンと伸びたワイヤーに引っ張られた半荘とジヨンを乗せた大凧は宙に舞い、竹島から離れるのであった……
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