83 / 94
拾参 最終配信 其の二
83 結論
しおりを挟む韓国大統領官邸……
阿保総理の会見と、半荘の配信を見た側近は焦った声を出す。
『こ、このままでは、我が国が日本に戦争を仕掛けた事となりますよ! 直ちにミサイルを自爆させましょう!!』
そう。阿保総理の会見の終わり間際、ミサイルは発射された。
島に数十発のミサイルが着弾するまで、そう時間は残っていない。
今なら、まだ、自爆スイッチを押せば、海上で止められるのだ。
側近の声を聞いた門大統領は、大統領の椅子をくるりと回し、向き直る。
『そうだな。今なら間に合う……』
『わかりました!』
『待て!!』
側近は門大統領の話を最後まで聞かず、スマホに手を掛けるが、止められてしまった。
『い、一刻を争う事態ですよ!!』
『だからだ』
門大統領は、ニヤリと笑った。
『阿保と忍チューバーの言葉は、発射後に私の耳に届いたんだ。すぐに停止しようとしたが、制御不能。焦った私はどうしたらいい?』
『いまはそんな事を言ってる場合ではないですよ! ミサイルを自爆させて、会見を開かなくては!!』
『それだ!』
側近に諭される門大統領は、わざとらしく指を差して立ち上がる。
『会見だよ。ミサイルが制御不能になったと大々的に知らしめる』
『しかし!』
『そうすれば、独島は木っ端微塵。当初の予定通り、境界線は真っ二つだ』
自信満々に語る門大統領に、側近はため息しか出ない。
『さあ、大統領としての責務を果たそうではないか』
そうして急ピッチで進める会見は、すぐに韓国国内、世界中に映し出される。
『申し訳ありません!』
門大頭領の第一声は謝罪。
深々と頭まで下げて、テーブルに額を擦る。
『なんの謝罪かわからないと思われていますね』
体を起こして冷静に語る門大統領。
『実は、ミサイルが制御不能に陥り、止めようが無いのです。ですので、即刻、「独島」からできるだけ離れてください。お願いします』
誠心誠意に語る門大統領に、全世界の忍チューバーファンからは嘘つきと罵られる。
今までの経緯から、真実を語っていないと思われているのだろう。
『重ねて申します。ミサイルは制御不能になりました。現在、専門家が対応しておりますが、独島にミサイルが着弾するまでに間に合わない可能性があります。決して、私は忍チューバーさんを殺したいわけではありません。並びに、日本と戦争をしたいとも考えておりません』
さらに言い訳を続ける門大統領に、世界中の人々から嘘つきと罵られる。
今まで忍チューバーを殺そうと、幾度も刃を向けたのだ。
そんな言葉を信じる者はいない。
それでも矢面に立ち、謝罪を続ける門大統領に、韓国の一部の者から援護射撃が入る。
門大統領の支持者だ。
弱々しく謝罪を続ける門大統領に同情し、一人ではないと励まし続けている。
『私は忍チューバーさんを殺す事も、戦争も望んでいません。ただちに独島を離れてください。お願いします』
この放送は日本政府に届き、忍チューバーを助けに行くかどうかの話し合いになる。
しかし答えは早くに出さないといけない。
ミサイルが迫っているのだから……
忍チューバーを助けに竹島に近付くと、日本の船が巻き込まれる可能性がある。
そうなれば、百人以上の死傷者が出る。
結局は、忍チューバーひとりを助ける事より、多くの自衛官を守るために艦隊を引かせるしかないと結論付ける。
それに、忍チューバーなら、ミサイルぐらいで死なないと高を括っている感が強いのも、結論を早めた要因になった。
斯くして、忍チューバーに向かうミサイルは止まらず、日本政府が助けにも来ない現状が完成してしまったのであった。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
婚約者に忘れられていた私
稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」
「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」
私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。
エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。
ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。
私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。
あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?
まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?
誰?
あれ?
せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?
もうあなたなんてポイよポイッ。
※ゆる~い設定です。
※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。
※視点が一話一話変わる場面もあります。
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
【完結】お父様の再婚相手は美人様
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
シャルルの父親が子連れと再婚した!
二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。
でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。
雇われ側妃は邪魔者のいなくなった後宮で高らかに笑う
ちゃっぷ
キャラ文芸
多少嫁ぎ遅れてはいるものの、宰相をしている父親のもとで平和に暮らしていた女性。
煌(ファン)国の皇帝は大変な女好きで、政治は宰相と皇弟に丸投げして後宮に入り浸り、お気に入りの側妃/上級妃たちに囲まれて過ごしていたが……彼女には関係ないこと。
そう思っていたのに父親から「皇帝に上級妃を排除したいと相談された。お前に後宮に入って邪魔者を排除してもらいたい」と頼まれる。
彼女は『上級妃を排除した後の後宮を自分にくれること』を条件に、雇われ側妃として後宮に入る。
そして、皇帝から自分を楽しませる女/遊姫(ヨウチェン)という名を与えられる。
しかし突然上級妃として後宮に入る遊姫のことを上級妃たちが良く思うはずもなく、彼女に幼稚な嫌がらせをしてきた。
自分を害する人間が大嫌いで、やられたらやり返す主義の遊姫は……必ず邪魔者を惨めに、後宮から追放することを決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる