忍チューバー 竹島奪還!!……する気はなかったんです~

ma-no

文字の大きさ
上 下
66 / 93
拾壱 ライブ

66 前夜の巻き

しおりを挟む

 半荘はんちゃんの職業が忍者と決まったその夜、東郷から定時連絡が入るも、上からの連絡待ちで動く事ができないと説明を受ける。
 さすがに半荘が遅すぎると文句を言うと、ボートを1キロ圏内に進める救出案が出てると説明を受け、さらに韓国政府に韓国国民の救出を伝える案も出ていると説明する。
 だが、どちらにしても上の許可待ちなので、それまで待機と言われてしまった。

 話はそれで終わらず、東郷に「悪いニュースと悪いニュースがあるけど、どっちから聞きたい?」と言われ、半荘は「良いニュースは?」と質問している姿があった。
 当然、「良いニュースと悪いニュース」の二択は無く、悪いニュースが続く。

 そのニュースでは、韓国艦隊の増援が間もなく到着するとのこと。
 日本の艦隊の増援は遅れているとのこと。
 最悪のニュースに半荘はキレていたが、東郷は真面目な声で、「総攻撃が近々あるかもと」警戒を促していた。

 電話が切られるとジヨンも心配そうな顔になったが、半荘は考えても仕方がないからと言って、早く寝ようと促す。
 そんな事を言われても安心できないジヨンは半荘に詰め寄ろうとしたが、半荘は手をヒラヒラと振って、食堂から出て行ってしまった。


 その深夜……

 半荘の寝ている大部屋のドアが「ギー」っと開いた。

「何か用か?」

 半荘はドアが開く前から目が覚め、体を起こさないまま、入って来た人物に質問する。

「眠れないの……」

 入って来た人物は、当然ジヨン。
 肩を抱きながら、半荘が寝転ぶ二段ベッドの対面に腰掛けた。

「明日は何が起きるかわからないから、早く寝たほうがいいぞ」

 ジヨンに背を向けながら、ぶっきらぼうに話す半荘。
 そんな半荘に、ジヨンは震える声で尋ねる。

「……あなたは怖くないの?」

「さあ?」

「さあ?って……」

 半荘の返事にジヨンは納得がいかないが、それ以上の言葉が出ない。
 室内は静寂が流れ、しばらくして、半荘が体を起こす事で音を取り戻す。

「怖いと聞かれても、わからないんだ」

 半荘はジヨンと同じように、ベッドに腰掛け、目を見て喋る。

「そうだろ? 総攻撃と言われてもピンと来ない。自分の絶対的な死が明日にあると言われてピンと来るか? 俺は、そんな世界に生まれたんだ。いや、世界は言い過ぎか。世界には、明日、死ぬかもとおびえている人は居るからな」

 半荘は言葉を区切ると、ジヨンの手を取る。

「俺とジヨンは、平和な土地に生まれたんだ。だから、明日も、きっと平和だ」

「そんな事は……」

 ジヨンが不安を口にしようとすると、半荘は手を強く握る。

「少なくともジヨンは平和だ。それだけは俺が保証する」

「まさか……」

 不穏な事を口にしようとするジヨンに、半荘は笑顔で制止する。

「自分を犠牲にするわけないだろ。俺は忍チューバー服部半荘だ。ニンニン!」

 おちゃらけて、尚且つ、力強く名乗る半荘に、ジヨンは涙をこぼす。

「それに、機関銃と大砲は経験済みだ。余裕、余裕」

「あ……」

 ようやくジヨンも気付いたようだ。
 半荘は、機関砲掃射と艦砲の雨を浴びても、無傷で戻って来た事に……

「もう! 心配して損した!!」

「あはは。ジヨンはそれぐらい強気なほうがいいな」

「ふんっ! 死んだって知らないんだからね!!」

「俺は死なないし、ジヨンも死なせない。約束だ」

 半荘が右手の小指を出すと、ジヨンは嫌そうな顔に変わった。

「うっわ……それ、漫画では死ぬ前のフラグなんだけど」

「あははは。乗って来たな~」

「笑ってるし……はぁ。それじゃあ寝させてもらうわ。おやすみ」

 楽観的な半荘に負けて、ジヨンは指切りは断って眠りに就くのであっ……

「いや……自分の部屋で寝てくんない?」

 隣のベッドでタオルケットを被ったジヨンに、半荘は出て行くように説得するが、まったく取り合ってもらえないのであった。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

髪を切った俺が芸能界デビューした結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 妹の策略で『読者モデル』の表紙を飾った主人公が、昔諦めた夢を叶えるため、髪を切って芸能界で頑張るお話。

公主の嫁入り

マチバリ
キャラ文芸
 宗国の公主である雪花は、後宮の最奥にある月花宮で息をひそめて生きていた。母の身分が低かったことを理由に他の妃たちから冷遇されていたからだ。  17歳になったある日、皇帝となった兄の命により龍の血を継ぐという道士の元へ降嫁する事が決まる。政略結婚の道具として役に立ちたいと願いつつも怯えていた雪花だったが、顔を合わせた道士の焔蓮は優しい人で……ぎこちなくも心を通わせ、夫婦となっていく二人の物語。  中華習作かつ色々ふんわりなファンタジー設定です。

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...