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拾 相談
64 救出の直訴の巻き
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「あ~。またドローンが来たっぽい」
ジヨンを救出して出演料の話をしていた半荘は、嫌そうに呟いて立ち上がる。
「韓国?」
「たぶんな。行って来るよ」
半荘はそれだけ言うと、港でドローンの到着を待ち、落とされた手紙を拾って食堂に戻る。
「また手紙だけ?」
「ああ。いつになったら出て行くんだとさ」
「そんな事を言われてもね~?」
「ホントに……」
出て行くにはボートが必要なのに、そのボートはつい先ほど沈んでしまった。
脱出不可能なのに、早くに出て行けと言われても、二人は困るだけだ。
「とりあえず、返事だけしておくか」
「そうね」
半荘が立ち上がるとジヨンも続き、撮影の準備に取り掛かる。
いちおう半荘は、今回は一人で撮れると言ったのだが、ジヨンがカメラを離してくれなかったので、撮影料を支払う事となってしまった。
動画の内容は、二通の手紙が韓国から届いた件。
文章を映し、さらに読み上げてネットに晒す。
それに加え、穴の開いたボートと、ジヨンを乗せたボートが沈没したこと。
その救出シーンも、ジヨンに出演料を支払う事で、動画のアップとなった。
日本のネットの民は、竹島は日本の領土なのに、韓国は偉そうだと憤り、韓国のネットの民は、おおよそ半々。
対話で独島から出て行かそうとしているのは評価するが、それまでのやり方が悪かったと門大統領を非難している。
それらの声は、半荘とジヨンにも聞こえたが、二人で話すと喧嘩になりそうなので、触れないのが暗黙の了解となっている。
しかし、定時連絡の東郷は別だ。
半荘が勝手に動画をアップした事でご立腹だ。
「あれだけ言ったのに、何をしてるんだ!」
東郷が大声をあげると予想していた半荘は、スマホをテーブルに置いて、耳を両手で塞いでいる。
しばらくグチグチと言われたのだが、半荘は一切聞いてない。
ジヨンの反応で、東郷が落ち着いたと感じて、ようやくスマホをスピーカーに切り替えて喋り出す。
「それで、見た通り、ボートが無くてジヨンがそっちに行けないんだ。送ってくれるか?」
「手漕ぎなら送れるだろうけど、エンジン付きとなると、重量制限があるから無理だな」
「ジヨン。いけそうか?」
半荘は、スピーカーで聞いていたジヨンに尋ねるが首を横に振られてしまった。
「だよな~……無理だって」
ジヨンに同意し、東郷にも伝える半荘。
「じゃあ、船をもう少し近付けてくれないか? 一キロ圏内なら、なんとか走り切れそうなんだ」
「お前の海を走るアレは驚きだけど、これ以上は無理だ。戦争を吹っ掛けていると思われて、撃たれかねない」
現在、両艦隊は、島から3キロ離れた地点で睨み合っている。
実際にはお互いは、島が目視できるが、船は微かに見える程度なので睨み合いとは言い難い。
だが、レーダーと双眼鏡で位置は把握している。
どちらかが前に出ると、開戦の合図となりかねないので、チキンレースを継続中となっているのだ。
「まぁ上と掛け合って、民間人の救出は考えてやる」
「えっと……その民間人は、俺も含まれるのか?」
「含まれるわけがないだろ!」
東郷は怒鳴り付けて一方的に電話を切ってしまったので、半荘はポカンとしながらジヨンを見る。
「俺って、民間人だよな?」
「う~ん……」
「即答してくれよ~~~」
情けない声を出す半荘に、ジヨンは掛ける言葉を考えて思い付く。
「じゃあ、忍者!!」
「そんな職業の奴、日本にいないって~~~」
ジヨンに、子供の頃に夢見た職業に就かされた半荘は、ますます落ち込んで行くのであった。
ジヨンを救出して出演料の話をしていた半荘は、嫌そうに呟いて立ち上がる。
「韓国?」
「たぶんな。行って来るよ」
半荘はそれだけ言うと、港でドローンの到着を待ち、落とされた手紙を拾って食堂に戻る。
「また手紙だけ?」
「ああ。いつになったら出て行くんだとさ」
「そんな事を言われてもね~?」
「ホントに……」
出て行くにはボートが必要なのに、そのボートはつい先ほど沈んでしまった。
脱出不可能なのに、早くに出て行けと言われても、二人は困るだけだ。
「とりあえず、返事だけしておくか」
「そうね」
半荘が立ち上がるとジヨンも続き、撮影の準備に取り掛かる。
いちおう半荘は、今回は一人で撮れると言ったのだが、ジヨンがカメラを離してくれなかったので、撮影料を支払う事となってしまった。
動画の内容は、二通の手紙が韓国から届いた件。
文章を映し、さらに読み上げてネットに晒す。
それに加え、穴の開いたボートと、ジヨンを乗せたボートが沈没したこと。
その救出シーンも、ジヨンに出演料を支払う事で、動画のアップとなった。
日本のネットの民は、竹島は日本の領土なのに、韓国は偉そうだと憤り、韓国のネットの民は、おおよそ半々。
対話で独島から出て行かそうとしているのは評価するが、それまでのやり方が悪かったと門大統領を非難している。
それらの声は、半荘とジヨンにも聞こえたが、二人で話すと喧嘩になりそうなので、触れないのが暗黙の了解となっている。
しかし、定時連絡の東郷は別だ。
半荘が勝手に動画をアップした事でご立腹だ。
「あれだけ言ったのに、何をしてるんだ!」
東郷が大声をあげると予想していた半荘は、スマホをテーブルに置いて、耳を両手で塞いでいる。
しばらくグチグチと言われたのだが、半荘は一切聞いてない。
ジヨンの反応で、東郷が落ち着いたと感じて、ようやくスマホをスピーカーに切り替えて喋り出す。
「それで、見た通り、ボートが無くてジヨンがそっちに行けないんだ。送ってくれるか?」
「手漕ぎなら送れるだろうけど、エンジン付きとなると、重量制限があるから無理だな」
「ジヨン。いけそうか?」
半荘は、スピーカーで聞いていたジヨンに尋ねるが首を横に振られてしまった。
「だよな~……無理だって」
ジヨンに同意し、東郷にも伝える半荘。
「じゃあ、船をもう少し近付けてくれないか? 一キロ圏内なら、なんとか走り切れそうなんだ」
「お前の海を走るアレは驚きだけど、これ以上は無理だ。戦争を吹っ掛けていると思われて、撃たれかねない」
現在、両艦隊は、島から3キロ離れた地点で睨み合っている。
実際にはお互いは、島が目視できるが、船は微かに見える程度なので睨み合いとは言い難い。
だが、レーダーと双眼鏡で位置は把握している。
どちらかが前に出ると、開戦の合図となりかねないので、チキンレースを継続中となっているのだ。
「まぁ上と掛け合って、民間人の救出は考えてやる」
「えっと……その民間人は、俺も含まれるのか?」
「含まれるわけがないだろ!」
東郷は怒鳴り付けて一方的に電話を切ってしまったので、半荘はポカンとしながらジヨンを見る。
「俺って、民間人だよな?」
「う~ん……」
「即答してくれよ~~~」
情けない声を出す半荘に、ジヨンは掛ける言葉を考えて思い付く。
「じゃあ、忍者!!」
「そんな職業の奴、日本にいないって~~~」
ジヨンに、子供の頃に夢見た職業に就かされた半荘は、ますます落ち込んで行くのであった。
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