47 / 94
捌 助け
47 贈り物の巻き
しおりを挟む昼食の席で恐怖していた半荘は、空気を変えるために、ジヨンを基地の外へと連れ出す。
外に出ると、ジヨンの鼻に硝煙のにおいが飛び込み、顔を歪める事となった。
しかし半荘は、その事に気付かずに、爆撃で損傷した港まで移動する。
「見えるだろ? あれが韓国の船だ」
半荘の指差す水平線に、船がずらっと並んでいるが、ジヨンは素直に喜ぶ事ができないようだ。
「アレに乗ったら、私の命が危険なのよね……」
「まぁな~。じゃあ、次は日本の船を見に行こう」
「ちょっと待って。ここの穴って、どうしたの?」
「見ての通り、爆撃を受けた跡だ」
港には、数か所穴があるものの、聞いた音と数が合わないので、ジヨンは隣の島を見る。
「戦闘は、あっちの島だったのね」
「ああ。建物が吹っ飛ぶと寝泊まりに困るからな」
「そこは私が居たからじゃないの~? そんなんじゃ、モテないぞ」
「う、うん……」
やけに距離が近くなったジヨンに、半荘はたじたじ。
女性に顔を覗き込まれる事も初めてなので、ヘタレで照れているのもあるが、ジヨンの本性を知ってしまったからには、恐怖で体が硬直してしまうのだろう。
そうしてジヨンは隣の島を見てみたいと言って来たので、岩肌を道なりに登って、そこから全容を確認する。
「うっわ。クレーターだらけ……。本当に、よく生きていたわね」
「忍チューバーだからな」
「それで納得できるわけないでしょ!」
とうとうツッコんでしまったジヨン。
本当にそれで納得するわけがないのだから、半荘は首を傾げないでほしい。
「もういいわ。それで……あっちが日本艦隊? あれに乗ったら、生きてこの島を出れるのよね?」
「そうだな。ジヨンは不安に思うだろうけど、俺が絶対に守るから、任せてくれ」
「いまのはプロポーズかしら?」
「ち、ちが……」
「照れちゃって~?」
顔を赤くして反論する半荘に、ジヨンはからかうのをやめない。
そうして遊んでいると、半荘の耳に音が飛び込んで来た。
「シッ……」
半荘の真面目な顔に、声を出し掛けたジヨンは押し黙る。
「この音は……」
「音??」
波の音しかジヨンには聞こえず、気になって、つい質問してしまった。
「プロペラの音がするんだ」
「プロペラ? そんな音はしないけど……ヘリが飛んで来てるってこと?」
「小さいから、たぶんドローンだな。念のためジヨンは基地に隠れていてくれ」
「わかったわ」
ジヨンが基地に向かう中、半荘は耳を澄まし、ドローンの到着予想地点に向かって、岩肌を滑り降りる。
そこで待っていると、一直線に飛んで来るドローンが目に入った。
ドローンは低空飛行を続け、進路を調整しながら半荘の元までやって来た。
半荘は警戒しながら見つめ続け、高度を下げたドローンが段ボール箱を降ろして去って行くと、その場所に近付く。
「ユーパック??」
段ボール箱には「ユーパック」と書いてあり、日本艦隊の方向から飛んで来た事と、洒落が利いた届け物という事もあり、半荘は開ける事を決断する。
「まさか爆発しないよな……」
半荘はいつでも逃げれる体勢で慎重にガムテープを剥がし、中を確認する。
「奇妙な鉄の箱と手紙か……箱は爆弾か?」
ひとまず安全そうな手紙を読んだ半荘は、金属製の箱も慎重に開けてしまう。
「おお~。本当にスマホが入ってる。こっちはポケットWi-Fiか?」
手紙の差出人は、海上自衛隊。
その内容は、半荘が一番欲しがっているであろうスマホ二台とポケットWi-Fiを贈るとあり、衛星回線で使えるとなっている。
それと……
プルルル~♪ プルルル~♪
金属製の箱を開け次第、電話を掛けるとも書いてあった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
29
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる