38 / 93
陸 嘘
38 更新の巻き
しおりを挟む「ふぅ……こんなもんかな?」
時は竹島の朝。
半荘は指令室にこもり、スマホをいじって動画を更新していた。
何故、更新できたかと言うと、突如、Wi-Fiが復活したからだ。
昨夜、ジヨンが無線を使っていたので、半荘は無線を使えば、日本と連絡できるのではと試すために通信室にこもっていた。
機械類をいじり、無線のチャンネルを海上保安庁に合わせようと頑張っていたら、Wi-Fiの機械が光っていたので、もしかしたらとスマホの画面を確認すると、何故か使えたのだ。
前回は、一本目の動画を更新した途端通信を切られたので、今回は時間指定して、三本の動画を更新できるようにした。
その三本も、一気に更新しないで、時間をずらしている。
これは、半荘のいつもの癖。
連続投稿しないほうが、再生回数を増やせるような気がすると、マイルールを守り続けている。
それから一通りのニュースを閲覧してから通信室を出ると、部屋の前にはジヨンが立っていた。
「やっと出て来た」
「ん? 何か用か?」
「もうお昼よ。あなたも食べるでしょ?」
ジヨンから時間を聞いた半荘は、腹をさすって空腹だと気付く。
「あ、そっか。急いで準備するよ」
「やる事もないから、準備してあげたわよ」
「本当か!? 女性の手作りなんて初めてで、ちょっと嬉しいな」
「レトルトで喜んでいいの?」
「あ……あはは」
嬉しそうな顔をした半荘であったが、軍用の食事をチンした物が出て来ると聞いて、少し残念に思うのであった。
そうして昼食を終えて、飲み物を飲んでいると、ジヨンが質問する。
「中で何をしてたの?」
「無線で日本に連絡取れないかとな」
「ふ~ん……それで、迎えに来てくれるって?」
「無線はダメだった。チャンネルは合ってると思うけど、通じないんだよな~」
「無線は? 何か他は繋がったの??」
「Wi-Fiがいけたんだ」
「本当!? じゃあ、スマホが使えるの??」
ジヨンは慌てて自分のスマホを操作するが、その姿に、半荘は申し訳なさそうに答える。
「あ~……もう切れた」
「私も情報ほしかったのに……」
「ニュースなら見たから教えられるよ」
肩を落とすジヨンに、忍チューバーに関するニュースを教えてあげると、驚いた顔に変わる。
「そんな嘘を大統領が言ったなんて……」
「な~? 酷いだろ~? そのせいで、俺を応援してくれてるサイトまで炎上したんだって」
「じゃあ、あなたは命を狙われているんだ……」
「みたいだな。でも、訂正する動画をアップしといたから、今頃そっちの大統領が大炎上だろうな」
「と言う事は……もう韓国から軍隊は来ないの?」
「さあな~? 形振りかまわず殺しに来るかも? ミサイルを撃ち込んだりとか」
ジヨンはそんな事は無いだろうと考えたが、半荘ひとりならば、有り得るかもしれないと声を大きくする。
「私は!? 人質に取られてるって、知ってるよね?」
「いちおう、俺が人質にしたとなっていた」
「ほっ……」
「だから、その訂正の動画もアップしといたよ。あ、そうだ。事後報告だけど、よかったかな?」
「なっ……ダメに決まってるでしょ!」
「そうなの!? ファンはだいたいOKしてくれたから、てっきり……」
「どんな動画をアップしたのよ!」
「えっと……」
ジヨンの動画は、たわいのない内容とは言い難い。
一緒に食事をして握手した事はいいのだが、ジヨンが拳銃を向けるシーンや、通信室に入るなと言われたのにドアを開けたシーンまで写っていたのだ。
半荘から動画の内容を聞いたジヨンは、声を大きくする。
「なっ、なんて事をしてくれたのよ! それになに? 隠し撮りなんてしてんじゃないわよ!!」
「勝手にアップしたのは謝るけど、隠し撮りしないと、俺が脅して言わせてるみたいだろ。それに、全部、戯れってテロップ入れておいたし」
「ちょっとその動画見せなさい!!」
ジヨンにの勢いに押された半荘は、スマホを見せるが、「変な顔をしたところを使いやがった」とか、「化粧が崩れていた」だとか、自分の容姿についての文句が多くて、怒るところは別にあるのじゃないかと思う半荘であった。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる