忍チューバー 竹島奪還!!……する気はなかったんです~

ma-no

文字の大きさ
上 下
29 / 93
伍 夜襲

29 降下の巻き

しおりを挟む

「【火遁かとんの術】だ~~~!!」

 ドッカーーーン!

 ヘリが近付く中、半荘は忍術を使い、ヘリポートから火柱が上がった。

 パン! パラパラパラ……ドカーン!!

「わ! ヤバイ~~~!!」

 火柱が上がった後、半荘は慌ててヘリポートから逃げ出し、窪みに飛び込んで岩を盾に使う。

 何故、そうなったか……

 半荘がヘリポートに置いた武器は、爆弾だけではなく、全ての銃火器だったからだ。
 【火遁の術】とか言いながら、ヘリポートにドボドボ撒いたオイルを延ばし、ライターで火をつけ、その火が武器に引火しただけ。
 その結果、爆弾やミサイルは破裂し、銃弾も着火して至るところに飛び散ったのだ。
 まるで花火の事故現場のようになったヘリポートに驚いて、半荘は慌てて逃げ出したのであった。

 逃げたのは半荘だけではない。
 着陸態勢に入っていた軍用ヘリも、急上昇し、機首を振って爆発から逃れたのであった。


  *   *   *   *   *   *   *   *   *


 軍用ヘリの機内では、特殊部隊も焦りの顔を見せていた。

『な、何が起きたんだ!』

 爆発音の後、軍用ヘリは大きく揺れ、特殊部隊の隊長はパイロットに確認する。

『ば、爆発です。大きな爆発が起きました』

『爆発だと……ヘリポートは使えるか?』

『確認してみない事にはなんとも……しかし、あの規模ですと、しばらくは使えないかと。最悪、崩れ落ちているかもしれません』

『なるほど……簡単な任務だと聞いていたが、一筋縄ではいかないと言うわけか……』

 パイロットとの話を終えると、隊長は隊員に向き直る。

『プランBに変更だ。相手は素手と聞いていたが、何をしてくるかわからないぞ。十分気を付けて行動すること。殺害対象はわかっているな?』

 隊長は最後の確認をするために、忍チューバーの写真を見せる。

『独島には、男と女の二名が居る。男は見つけしだい殺せ。女は人質に取られる事があれば、命の保証はしなくていいからな』

 隊長は不穏な事を口走るが、前もって聞いていた隊員は、静かに頷く。
 最悪の事態が起きた場合、全て半荘のせいにすれば、問題ないと命令を受けているからだ。

 隊長は皆の覚悟の目を見回すと、大きな声をあげる。

『よし。降下の準備だ! 独島を、我らの手で取り戻すぞ~~~!!』

『『『『おお!!』』』』

 こうして、特殊部隊はワイヤーを繋ぎ、ヘリが高度を下げると、次々に降下して行くのであった。


  *   *   *   *   *   *   *   *   *


 半荘は、爆発が落ち着くのを待って、岩陰から顔を出す。

「うっわ~。ちょっとやり過ぎたか? ヘリポートが崩れてしまった……」

 自分のやらかした事に青ざめる半荘。

「ま、ヘリポートが無ければ、竹島では着陸できないか。結果オーライ!」

 青ざめたのは一瞬で、気を取り直した半荘は、軍用ヘリを眺める。

「こっちに戻って来たな。次の目標も思った通りだ。ちゃっちゃとやりますか」

 そうして半荘は、基地に向けて走り出すのであった。


  *   *   *   *   *   *   *   *   *


 軍用ヘリは基地の上空にてホバーリングし、パイロットは隊長に無線を繋ぐ。

『もう行けます!』

『了解!』

 隊長は、ヘリポートが使えないのなら足場の悪い岩肌より、基地の屋根に飛び降りる事を選択し、準備が整ったと聞くと、隊員に命令を下す。

『よし! ゴーゴーゴー!!』

 軍用ヘリの扉から飛び降りる隊員達。
 と言っても、ワイヤーを頼りに降りるので、ある程度のスピードしか出ない。
 パラシュートで降りるより、このほうが降下地点からズレず、確実な方法だ。

 日々の特訓で何度も行った方法。
 隊員も、実践でミスをするわけもない。
 ミスがあるとすれば、強風が吹いて、軍用ヘリが墜落の危険がある場合。
 それも想定しているので、パイロットと密に連絡を取り、すぐに対応できる。

 だが、相手は忍チューバーだ。

 予期せぬ事態におちいり、特殊部隊は降下した隊員から、銃声と悲鳴があがるのであった。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

髪を切った俺が芸能界デビューした結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 妹の策略で『読者モデル』の表紙を飾った主人公が、昔諦めた夢を叶えるため、髪を切って芸能界で頑張るお話。

公主の嫁入り

マチバリ
キャラ文芸
 宗国の公主である雪花は、後宮の最奥にある月花宮で息をひそめて生きていた。母の身分が低かったことを理由に他の妃たちから冷遇されていたからだ。  17歳になったある日、皇帝となった兄の命により龍の血を継ぐという道士の元へ降嫁する事が決まる。政略結婚の道具として役に立ちたいと願いつつも怯えていた雪花だったが、顔を合わせた道士の焔蓮は優しい人で……ぎこちなくも心を通わせ、夫婦となっていく二人の物語。  中華習作かつ色々ふんわりなファンタジー設定です。

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...