忍チューバー 竹島奪還!!……する気はなかったんです~

ma-no

文字の大きさ
上 下
25 / 93
肆 滞在

25 口喧嘩 其の二の巻き

しおりを挟む
「一応確認させてもらうけど、君は最寄田静香さん……で間違いないよね?」

「は、はい……」

 わたしは頷く。

「ふむ……四日目か、やっと出会うことが出来て良かったよ……」

 茶色の髪をした青年は胸に手を当てて、爽やかにウインクをしてくる。なかなかに整った顔立ちをしている。短髪はきれいにセットされており、清潔さを感じさせる。まさに世の女性の多くにとって理想に近いイケメンだ。だがしかし……。

「……」

 わたしは自然と距離を置こうとする。青年がそれに気が付いて、首を傾げる。

「うん? どうかした?」

「いや、なんというか……」

「ひょっとして……警戒をしている感じ?」

「ま、まあ、そうですね……」

 一昨昨日の一昨日、一昨日の昨日、昨日の今日だし、しょうがないだろう。わたしは素直に頷くことにする。

「ふふっ……俺は決して怪しい者じゃないよ」

「そ、そうですかね⁉」

 わたしは思わず大声を上げてしまう。ブレザー姿の高校生が集まっている中で、宇宙服を着ている男性は怪しい寄りだと思うが。ここは種子島宇宙センターではない。

「そうだよ。だからそんなに警戒をしないでくれ」

「……何故にわたしの名前を知っているんですか?」

「それはもちろん、君に用があるからだよ」

「よ、用があるって……もちろん個人差はあると思いますが、女子は宇宙にそこまで興味を持たないというか……宇宙飛行士さんにそこまで憧れはないというか……」

「! ははははは……!」

 青年は声高らかに笑う。わたしはちょっとムッとしながら尋ねる。

「な、なにがおかしいんですか?」

「いや、悪いね……俺は宇宙飛行士じゃないよ。こういうものだ」

 青年は宇宙服の左胸のマークを見せてくる。

「え? マー、マーク……? ええっと……?」

「ああ、俺のコードネームはデストロイ=ノリタカという。スペースポリスマンさ」

「ス、スペースポリスマン⁉」

 わたしは思いがけないフレーズに驚く。

「そうだよ、ごくごく普通のね」

 ノリタカと名乗った青年は髪をかき上げる。

「スペースポリスマンはごくごく普通ではありませんよ!」

「そうかい?」

「そうですよ! っていうか、初めて言いましたよ、そのフレーズ!」

「初めて?」

 ノリタカさんは驚いて目を丸くする。

「ええ、初めてですよ!」

「トウキョウはこんなに大きな街だというのに?」

 ノリタカさんは両手を大きく広げて、周囲を見回す。

「はい」

「近くにある新宿駅という場所はこの世界で一番の利用者数だと聞いたけど?」

「そ、それはそうらしいですけど……」

「それならば中にはいるだろう、スペースポリスマンの一人や二人くらい」

「ポ、ポリスマンは一杯いますけど、スペースはいないんじゃないですか……そんないちいち確認したりとかはしませんから知らないですけど」

「スペースポリスマンがいないって? ふむ、この日本という国……情報以上に治安が良いようだね……」

 ノリタカさんは腕を組んで感心したように呟く。

「……あの、もういいですか? ホームルームが始まってしまいますので……」

 わたしはその場から離れようとする。

「あ、ちょっと待ってくれ……!」

「はい?」

 わたしは呼び止められ、振り返ってしまう。

「………」

 ノリタカさんはなにやら取り出した機器を確認し、周囲を伺う。

「あ、あの……?」

「……うん、とりあえずは大丈夫のようだね」

 ノリタカさんは頷く。

「は、はあ……?」

「……そうだな……放課後にまた話をしたいのだけど……お願い出来るかな?」

「え、ええ……」

 わたしは露骨に困惑する。

「おや、困惑しているようだね。どうしてかな?」

「いや、どうしてかなって言われても……」

「まだ不信感は拭えていないかな?」

「不信感まみれですよ。大体コードネームってなんですか?」

「作戦を遂行する上での名前だよ」

「それはなんとなく分かりますが……本名は?」

「わけあってそれは明かせない」

「ええ……」

 ノリタカだというから、日本系なのかな……。しかし、本名不詳のスペースポリスマンとは……どうしたものか……。

「……マズいかな?」

「いや、いいです。失礼します」

「待っているよ」

 わたしは軽く会釈をし、その場を後にして、教室に向かう。夕方になり、ホームルームも終わる。この恥ずかしいイケメンと鉢合わせしたりしないように裏門から帰れば……。

「げっ……」

 裏門から帰ろうとしたわたしは顔をしかめる。ノリタカさんが何故かいたからだ。

「やあ!」

「……何故ここに?」

「いや、俺もホームルームが早目に終わったからね……この辺りを調査していた」

 ノリタカさんは機器を地面などにかざしながら歩き回っている。

「……そ、そういえば、もしかしてなんですけど……」

「ああ、俺はこの学園の転入生だよ」

「せ、制服が宇宙服で良いんですか?」

「特例で認めてもらったよ」

「そんなことが可能なんですか?」

「可能だ。なんといってもスペースポリスマンだからね」

「はあ……調査って?」

「良い質問だ。異常がないかをチェックしていたんだ」

「い、異常ですか?」

「そうだ……お、異常反応……現れたな、エイリアンだ。さあ、共に迎撃しよう」

「はいいいいっ⁉」

 ノリタカさんの提案にわたしは驚く。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

髪を切った俺が芸能界デビューした結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 妹の策略で『読者モデル』の表紙を飾った主人公が、昔諦めた夢を叶えるため、髪を切って芸能界で頑張るお話。

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...