忍チューバー 竹島奪還!!……する気はなかったんです~

ma-no

文字の大きさ
上 下
19 / 93
参 反応

19 韓国の英雄

しおりを挟む
 時は少し戻り、忍チューバーの動画が更新された昼頃、日本だけでなく、韓国でも大きな騒ぎになっていた。

 たった一人の忍チューバーに独島を奪われ、韓国人は怒り狂う。
 怒りの矛先は、忍チューバー。
 元々、徴用工問題、従軍慰安婦問題、ホワイト国問題で集まっていたデモ参加者はひとつにまとまり、忍チューバーを非難する声をあげ、大統領官邸に向かう。

 しかし、怒りの矛先は違う方向にも向いてしまう。
 忍チューバーを生み出した国、日本。
 日の丸の国旗を燃やした。

 それでも怒りの収まらないデモ参加者は、日本と名の付く物に怒りをぶつける。
 日本製品は壊され、日本車はひっくり返される。
 その怒りは日本企業にも飛び火して、石を投げ込まれ、生ゴミを投げ込まれ、商品は盗まれる。

 幸い、日本人には被害が及ばなかったが、時間の問題と感じた日本人は建物に逃げ込み、震えて命の危機を案じるしかできない。


 さすがにこの事態には、大統領府は指をくわえて見ている場合ではなくなり、暴徒と化したデモ隊にやんわりと解散を告げる。
 その時、夜には今回の事態に対する発表をするからと言い聞かせ、一時の沈静化を図ったが、その民衆はネットに集まる。

『嘘、馬鹿、死ね、殺してやる』

 忍チューバーのツブヤイターは大炎上。
 それだけでなく、忍チューバーと名の付くサイトにまで炎が及び、世界中が炎上する事となった。

 ようやく書き込みが止まったのは、その日の夜。
 テレビに映し出された門大統領の登場で、韓国国民は釘付けになる。


『わが国は、忍チューバーこと服部半荘に、領土をおびやかされている。よって、忍チューバーをテロリスト認定し、テロリストとして裁く!』

 力強い門代表の言葉に、止まっていた書き込みが、「忍チューバーテロリスト」の一色で再開される。

『忍チューバーは我が独島に、不法に上陸しただけでなく、我が同胞にまで手を掛けた。島に忍び込んだ瞬間、無抵抗な同胞を自動小銃で次々と撃ち殺し、玉が無くなれば殴り倒し、手当てもせずに、船に乗せるだけ乗せて出発させたのだ』

 涙を流して力説する門大統領に、ネットでは、忍チューバーは「殺戮者さつりくしゃ」や「ホロコースト」、「南京大虐殺」を一人で起こした等、過去の歴史上の虐殺と結び付けられて書き込まれる。

『私はこれが許せない。一刻も早く、独島で、我が国で、韓国で……忍チューバーを裁く裁判を開こうと思う。もちろん忍チューバーは、A級戦犯として扱う!』

 この発言で、今度は門大統領が英雄として祭り上げられる。

『だから皆さん。冷静な対応を取っていただきたい。悪いのは忍チューバー、ただ一人! ここで日本人に危害を加えると、我々も同じ穴のむじなとなってしまう……我々は利己的な種族だ! 日本人とは違うのだ~!!』

 韓国に滞在する日本人に対しては、最大限配慮した発言だったのだろうが、ネットでは、虐殺国家とののしられる日本。
 だが、その声よりも、門大統領を称える声が圧倒的に大きく、韓国国民は冷静さを思い出すのであった。


 会見が終わると、門大統領は自室にこもり、側近との打ち合わせを開始する。

『特殊部隊は?』

『もう出発しております』

『おお! 早いな』

『皆、やる気に満ちあふれていますからね。しかし、一人も死者が出ていないのに、あんな事を言ってもよかったのですか?』

『あれぐらい言っておかないと、国の内外から、忍チューバーを殺したら非難が出るだろう』

『確かにそうですが……』

 門大統領の嘘に、側近は顔を曇らせる。

『心配するな。動画が更新されて、すぐにネット回線は遮断したのだから、もう忍チューバーに外と連絡を取る術はないからな。それに、特殊部隊との戦闘にて死ぬのだ。つまり死人に口無しだ』

『ですが、さきほど情報局にハッキングされた形跡がありまして、最悪のケースも考えておいたほうがよろしいかと……』

『忍チューバーは、漂流して独島に辿り着いたんだ。協力者なんて居ない。居たとしても、電源を抜けばいいだけだ。それよりも、この件で私の支持率は急回復するだろうな』

 側近の心配を吹き飛ばすが如く、話を変えると、側近も笑顔を見せる。

『それはもう……過半数なんて目じゃないです。就任直後の90パーセント越えは固いです!』

『ははは。忍チューバー様々だな。おい』


 こうして門大統領が高笑いする中、忍チューバーに、特殊部隊の魔の手が迫るのであった。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

髪を切った俺が芸能界デビューした結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 妹の策略で『読者モデル』の表紙を飾った主人公が、昔諦めた夢を叶えるため、髪を切って芸能界で頑張るお話。

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...