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参 反応

17 緊急閣議 其の一

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 忍チューバー生存の一報は、日本政府中枢にも届いていた。
 その一報はとんでもない内容であったため、臨時閣議を執り行う事となり、総理官邸にて、全ての大臣が集められる。

 官邸の動きに気付いた番記者は、次々に集まる大臣にマイクを向けて質問していた。

「防衛大臣! 忍チューバーさんを助けに行くのですか!」

「いまは事実確認を急いでいる最中です」

「確認がとれしだい向かうと言う事ですね!」

「それも、事実確認をしてから決めたいと思います」

「防衛大臣! 防衛大臣!」

 曖昧な返事しかしない防衛大臣は、マスコミの追求を無視して、足早に奥に消えて行く。
 内心では……

(こんな面倒、俺の在任中に起こすなんて……あのガキは何してくれとんじゃ~! こんな場合、どうしていいかもわからん! 下手したら、自分の首も一発で飛ぶぞ……)

 忍チューバーの生存よりも、怒りと自分の進退の心配が勝る防衛大臣であった。


 その他の大臣も到着してマスコミに囲まれるのだが、適当にお茶を濁して逃げて行き、マスコミも放送するような内容は確保できないでいると、環境大臣、大泉が到着した。

「環境大臣! 忍チューバーさんの今回の事件、どう思われますか!」

 マスコミの男にマイクを向けられた大泉は少し考えて答える。

「対話を持って、忍チューバーさんを出迎えられるように、私なりに全力で応えるつもりです」

「対話? ご自身で韓国に乗り込むと言う事でしょうか?」

「私は所轄外ですので、できる事をします。それでは失礼します」

「できる事とはなんですか!」

 大泉は甘い事を口走り、マスコミが質問すると言い訳をして逃げ出す。若くして環境大臣となって間もない大泉は、いち政治家から足が抜けきれていないようだ。


 そうして最後に登場したのは、遠方から駆け付けた内閣総理大臣、安保信蔵あぼのぶくら。マスコミの前に現れると、あっと言う間に取り囲まれる。

「総理! 忍チューバーさんを迎えに行くのですか!?」

「それは事実確認を精査してから発表とします」

「竹島は韓国に実効支配されておりましたが、今回の件で取り戻すお考えでしょうか!?」

「我が国の領土ですから、取り返すという表現はおかしいですね」

「しかし事実上は奪われていたじゃないですか!」

「質問はまた、閣議のあととさせてもらいます」

「総理! 総理~~~!」

 マスコミの質問を途中で打ち切った安保総理は、足早に消えて行った。

 その後、閣僚から色好いコメントのもらえなかったマスコミは、各社で集まり、どのように放送するかのすり合わせを行い、長い閣議を待つのであった。


 安保総理が会議室に足を踏み入れると、大臣達は立ち上がり、総理の着席を待って席に着く。
 大臣以外には、各省庁の官僚が後ろに控え、大臣のサポートにあたる。

「さて、由々しき事態となっています。皆さんの知恵を合わせ、どうやって忍チューバーを救出するか考えましょう」

 安保総理はそう言って皆を見渡すが、皆は下を向いてしまった。どうやら適当な案を出すと、責任問題がまとわり付くと考え、口を閉ざしているようだ。
 静まり返る会議室に、安保総理の声が響く。

「ここは……防衛大臣。海保、もしくは、海自の船を出す事を考えるべきでは?」

 突然話を振られた防衛大臣は、慌てて後ろを見て、官僚に耳打ちされる。

「……はい。まずは海保の船を出すとして……」

 防衛大臣が後ろを確認しながら答えていたが、まどろっこしくなった防衛大臣は説明を丸投げ。
 その官僚の説明では、海上保安庁の船ではたいした武器を積んでいないので、韓国軍が出て来た場合、隊員の命が危険にさらされるとのこと。
 逆に海上自衛隊の船では、こちらから戦争を仕掛けたと思われてしまうので、船を出すのは最終手段にしたほうがいいとのこと。
 空からも同じく、韓国軍に誤解を与えるのは得策とは言えないと結論に至る。

 そんな中、他に案は無いかと各大臣に振ると、経産大臣から手が上がった。

「環境大臣の大泉君が面白い案を出していたので、彼に任せてはいかがでしょうか?」

 経産大臣は日頃から、大泉のいいかっこしいの態度が気にくわないからか、話を振ったのだ。

「な、何故、私なのですか?」

「先ほどマスコミに、対話を持ってとか話していたじゃないですか?」

「そ、それは……私の仕事ではありません。外務省の仕事でしょう」

「またそうやって、できない事は他の所轄のせいにする……」

 経産大臣の嫌味な言い方に、大泉は就任当時の事を思い出す。

「まだあのこと、根に持っているのですか……小さい男だな~」

「な、なんだと……元々はお前がよけいな事を言うから、うちにもいらない仕事が増えたんだろ!」

「国民のためを思っての発言の、どこがよけいなんですか!」

「全然質問に答えないから、ポエムって言われるんだ。や~い。ポエム大臣」

「はあ? あなたなんて、経済に詳しくないくせに大臣になったじゃないですか。や~い。順番待ち大臣」

「「がるるぅぅ」」

 しだいに声の大きくなる二人は、子供みたいな喧嘩に勃発し、忍チューバーの話がまったく進まないのであった。
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