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第二章

43 妖狐 作戦に加担させられる

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 俺は妖狐。
 変化へんげが成功してから数日。
 歩く練習をしている。

「あんよが上手じょうず。あんよが上手」

 ひよりのこの合いの手……気が抜けるからやめて欲しい。
 だが、そのおかげか、かなりうまく歩けるようになった。
 走る事はまだ出来ないが、歩く分には問題ない。
 うまく歩けるようになったのは、おそらく、ひよりの言葉に関係していると思うが、確証は持てない。

「あ! 戻っちゃった。もっと長くいれたらいいのにな~」

 どうやら人間の姿は、燃費が悪いみたいで、三十分ぐらいしか持たないみたいだ。
 だが、日に日に伸びているので、ひよりの期待には答えられるかもしれない。
 どちらかと言うと、元の姿の方が楽なので、人間に変身したくないってのが、本音だ。

「まぁこの姿もモフモフしてるからいっか」

 ひよりも同じ意見みたいだな。
 俺の理由とかなり違うがな!

「でも、変化で尻尾が増えないんだよね~」

 そうだな。
 ちゃんとやっているのだが、尻尾を増やす事も、九尾の狐になる事も出来ない。

「葉っぱが悪いのかな~?」

 それは関係ない。
 変化しても、はらりと落ちるだけだ。

「そろそろ尻尾、増えそう?」

 またこの質問か……

「わからない。そう言うのは、お姉さんの方が詳しいんじゃないか?」
「聞きたいんだけどね~。今はテスト期間らしいから、難しい事は聞いたら悪い気がするの」
「今週末には終わるんじゃなかったか?」
「そっか! 日曜日に遊びに行こう!」


 ………


「よし。鳥居に着いたよ。ヨウコ。変化して!」
「おう! 『変化』! どうだ?」
「うん! いつも通りかわいいよ。じゃあ、行くよ~」

 行くんだろ?
 さっそく狛犬と遊びだした。
 モフモフ、モフモフ言ってるよ……
 まぁ俺がここに入ったら、必ず出て来るからな。

 お! 会いたかったお姉さんが走って来たな。
 また木刀を持って殺気を放っている。
 怖いからやめて欲しい。

「ひよりちゃん!」
「お姉ちゃん。こんにちは~」
「こんにちは。今日はヨウコちゃんはいないの?」
「いるよ~」

 お姉さんはキョロキョロと俺を探しているな。
 なかなか見付けられないみたいだ。
 当然だ。
 俺の姿は、着物を来た女の子だからな。

「この女の子はお友達?」
「ヨウコだよ~」
「ヨウコ……ヨウコちゃん!?」
「そうだ。お姉さんと会うのは久し振りだな」
「嘘……管狐が妖狐になったと思ったら、今度は女の子になった!!」

 お姉さんはかなり驚いて、目をパチクリさせているな。

「ビックリ作戦成功だね!」

 うん。成功だ。
 だが、お姉さんはひよりの行動にいつも驚かされているぞ?
 もちろん俺もだ。
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