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第一章

16 管狐 フェレットになる

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 俺は管狐。
 今日はお嬢ちゃんの家族と、山へピクニックに来ている。
 連休中に、こう毎日連れ出されると、ご主人様とすれ違いそうで困る。
 休みは家でゆっくりして欲しいものだ。

「う~ん。ヨウコ、疲れたよ~」

 だから、俺は管狐。
 言う相手を間違えている。
 ほら?
 旦那さんが、おんぶしたそうに構えているぞ。

「そうだ! ヨウコが乗っているから、疲れるんだ」

 そうなのか?
 いつもお嬢ちゃんの肩に乗せられているけど、初めて言われたな。
 だとすると、歩こう。
 よし。
 地に足が着くと、気持ちいいものだ。

「う~ん。あんまり変わらないね。ヨウコ、おいで~」

 う……俺もたまには歩きたいんだが……
 お嬢ちゃんの命令には逆らえない。

「もう首のモフモフが離せない~」

 だから首に巻くように乗せられていたのか。
 だが、俺は管狐。
 マフラーではない。

「やっぱり暑い! 自分で歩いて」

 どっちなんだ!
 まぁ命令には逆らえないから、歩くがな。

「ヨウコちゃんは歩いているの? じゃあ、ママのところに来てくれないかな?」
「ママはヨウコに触れるの?」
「ちゃんと対策して来たよ~。じゃ~ん! 今回は、フェレットのぬいぐるみにしてみました。昨日、ヨウコちゃんの為に買ったの」
「わ! ヨウコそっくり~」
「やっぱり? ひよりの絵を見てピンと来たんだ~」

 こないだ着せられた、キツネのぬいぐるみとは違うな。
 これがお姉さんの言っていたフェレットか。
 たしかに、他の管狐と似ている。

「ヨウコちゃんに、この中に入ってくれるように頼んでくれる?」
「うん! ヨウコ。お願い~」

 命令されたから入るけど、ぬいぐるみに入ると、動き辛いんだ。
 もぞもぞとしか動けなくなってしまう。

「あ! 似合う似合う」

 奥さん……
 似合うもなにも、フェレットのぬいぐるみにしか見えないだろ?
 しかし、このぬいぐるみ、俺の体にぴったりだ。
 足まで動かせる。
 だが、前が見えない。

「ヨウコ~。そっちじゃないよ~」
「あ! 見えないんだ。改良の必要があるわね」
「ひより。ママ……」
「「なあに?」」
「ぬいぐるみが、ひとりでに歩いているんだが……」

 俺は管狐。
 ぬいぐるみではない。

「ぬいぐるみじゃないよ。ヨウコだよ」

 ヨウコでもない。
 九号だ。

「ママ?」
「ひよりがいつも話している、ヨウコちゃんよ」
「これが……」

 旦那さんにも、やっと認識してもらえたか。
 奥さんと違い、若干、反応が違うな。
 俺が怖いのか?

「ひよりの友達なら、安心だな!」
「うん!」

 管狐の俺が言うのもなんだが、もう少し警戒した方がいいぞ。
 見えてないんだろ?

「ほら。ヨウコ行くよ~。あ! そっちじゃないって~」

 だから俺も、見えてないんだ!
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