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第一章
15 管狐 服を見る
しおりを挟む俺は管狐。
お嬢ちゃんは今日からゴールデンウィークと言う連休に入るらしい。
その連休の初日、外に連れ出されている。
ご主人様が迎えに来るはずだから、家に居たいのだが、お嬢ちゃんが連れ出すから、仕方なくついて来ている。
どうやら、少し遠くのアウトレットモールで服を買うらしい。
「ヨウコ~。似合ってる?」
俺は管狐。
服の良し悪しなんてわからない。
「もう! ちゃんと見てよね~」
命令されたから、ちゃんと見ている。
だが、俺は管狐。
聞く相手を間違っている。
奥さんに聞いてくれ。
「これもダメか~。次の服に着替えるから待っててね」
命令だから、もちろん待つ。
でも、着替える前に、奥さんの意見を聞こうか?
「あ! ママ、パパ。この服どう? 似合ってる?」
間に合ってよかった。
これで良し悪しがわかるだろう。
「うん! すっごくかわいいわよ~」
「ひよりは何を着ても似合うな~」
「本当!? 次の服も着てみるね~」
どうやら似合っているみたいだ。
なるほど。
次からは、この服を基準にすれば、俺にも答えられるかもしれない。
「うんしょ。ヨウコ。どう? かわいい?」
さっきの質問と違う……
いや、奥さんはさっきの服をかわいいと言っていた。
ならば、基準と照らし合わせると、さっきの動きやすそうな服装と大きく違う。
フリフリがいっぱい付いて、動き難そうだ。
ここから導き出された答えは、かわいくないだ。
手をクロスして、ばってんだ。
「なんでそんなこと言うの!」
え……基準と違うから……
「ひより。どうしたの? あら? それも似合っていて、かわいいわね」
「ひよりは何を着てもかわいいな~」
な……さっきと全然違う服だぞ?
「でしょ~? なのにヨウコがかわいくないって言うんだよ~」
「ヨウコちゃんは、女心がわからないのね」
女心?
当然だ。
わかる訳がない。
俺は雄の管狐だからな。
「うちのひよりが、かわいくないだと……どこに居る! 姿を現せ!! 油揚げにして食ってやる!!!」
おお……旦那さんが怒っている姿を初めて見た。
しかも、怒り具合が尋常じゃない。
管狐の俺に触れる事は出来ないと思うが、お嬢ちゃんが触れられるのだから、万が一がある。
何が悪かったかわからないが、誠意を持って謝罪しなくては。
「ヨウコを食べちゃダメー!」
「そうよ。ヨウコちゃんは悪気があって言ったんじゃないよね?」
うんうん。
うなずいてみたけど、奥さんは違う所を見ているな。
「ママ。ヨウコ、うなずいてるよ」
「やっぱりね。服のセンスが無いだけよ」
当然だ。
俺は管狐だからな。
聞く方が悪い。
「それにパパ。狐は油揚げにして食べるんじゃなくて、油揚げを食べるのよ」
俺は管狐。
お嬢ちゃんの霊気が主食だ。
ご主人様の元でも、人間の食べ物なんて食べた事がない。
「油揚げだけじゃかわいそうだから、明日のお弁当は、いなり寿司を作ろうかな」
いや、食べれないから!
「やった~!」
お嬢ちゃんも止めてくれ!
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