上 下
29 / 43
猫歴15年

平行世界17日目その2から21日目にゃ~

しおりを挟む

 カジノでコリスが勝ちすぎてしまったので、お昼には終了。とりあえず全員集めたらコインを回収して、皆には先に上の階にあるという高級フレンチのお店に行ってもらう。バニーガールに頼んでおいたので、迷わず着けるだろう。
 わしは1人残ってコインの集計とお会計。その結果、使った額よりうん百倍も多く返って来たので、ちょっと震えた。悪い顔でも笑えない。これは、皆には言わないほうがよさそうだ。

 笑顔が引き攣るバニーガールたちにペコペコ会釈したら、わしも高級フレンチ店に向かい、皆と合流。予想通り、皆は先に食べていた。
 個室だからマナーは気にしない。でも、ベティがマナー講座をしていたらしく、あとから食べ始めたわしはダメ出しをめちゃくちゃ喰らった。

「だいたい合ってるからいいにゃろ~」
「いいえ。王様なんだから完璧にできないと。音ひとつ出しちゃダメよ」
「厳しすぎるにゃ~」

 ベティが変なスイッチ入っているので、料理の感想を聞いてマナー講座を止めようとしたけど止まらず。どうやらこのフレンチ店は、ベティ憧れの老舗のお店だから、失礼があってはならないとマナーにうるさくなっているみたいだ。

「う~ん……ベティの料理のほうがおいしくにゃい? にゃ??」
「「「「「おいしいにゃ~」」」」」
「ホントに? ついにあたしがこの店を超えた……」

 あまりにもマナーにうるさいので皆でヨイショしてみたら、ベティはなんか感激してる。本当はわしたちの舌では違いがわからないのだが、皆もベティのマナー講座はウザかったから乗って来たと思われる。
 そこからは、楽しい会食。先程のカジノの順位も発表しつつ、ワイワイ喋りながら食べる。

 ちなみに獲得コインの総数1位は、もちろんコリス。2位はノルン。3位はたいして増えても減ってもいないし集計が面倒だったので、ほとんど同点。
 わしの配ったコインより減らした1位は、ベティとさっちゃんと玉藻。仲良くおけらだ。でも、あんなに稼いでいた玉藻がゼロって……あ、ポーカーで負けまくったのですか。取り返そうと倍々で賭けたのですか。そりゃゼロになりますね。

 当然、換金した額は伝えていない。コリスの獲得コインも二桁ほど少なくして伝え、大勝ちしていない印象も与えた。
 こうでも言わないと、皆がカジノに嵌まってギャンブル中毒になるかもしれないんじゃもん。


 楽しいランチが終わったら、IR探検に繰り出す。そもそもこの人工島は、カジノ施設なんて極一部。本来の目的は世界のVIPが参加する会議場だ。
 そのVIPからお金を奪う……もとい。湯水のようにお金を落としてもらおうと、ショッピング施設や娯楽施設も満載なのだ

 わしたちはショッピングを楽しみ、ゲームセンターやショーを見て回り、2日間VIP気分を満喫するのであった。

「コリスが稼いだお金がブッ飛んだにゃ……」
「モフモフなんかいった~?」

 そんな場所で散財したからには、わしの金銭感覚では耐えられないのであったとさ。


 ちょっとIRではビビらされたが、翌日は関西にある遊園地でワーキャー遊び散らし、その次の日の平行世界滞在20日目は水族館にやって来た。

「モフモフ~。食べていい?」
「観賞用だからダメにゃ」
「「「「「にゃ~ん」」」」」
「だから観賞用と言ってるにゃ~~~」

 しかし、大食いのコリスがよだれを垂らし、猫(猫兄弟、メイバイ、わしの実子3人)が猫撫で声で擦り寄るので、水族館の魚が消えてしまいそう。
 なので、一旦外に出て、焼き魚や刺身を腹いっぱい食わせ、お菓子や串焼きの入ったカバンを配布。これだけすれば、ガラスを突き破って魚をとりに行かないだろう。

「コリスはわしと一緒に回ろうにゃ~?」
「うん! モグモグ~」

 コリス以外……いや、猫兄弟も怪しいので、玉藻に協力してもらおう。

「うわ~。きれ~い」
「「にゃ~ん」」
「うむ。色とりどりじゃのう」

 基本的に、コリスたちもカラフルに展示された魚の前では落ち着いているのだが……

「おいしそう……」
「「にゃ~……」」
「ほい。串焼きお食べにゃ~」

 ちょっとでもお腹がすくとハンターの顔になるので、エサは切らせない。
 ちなみに東京では動物園に行ってみたのだが、その日の動物園は動物がどこかに隠れて出て来なかったので、すぐに撤退した。だって、わし以外の全員が舌なめずするから動物が怯えてしまったんじゃもん。


 ジンベエザメを見て「小さいよね~」とか、ペンギンを見て「小さいよね~」とか言いつつ、なんとか誰も水槽に飛び込まずに観覧を終えたら、近くの施設で昼食。
 その隣には大きな観覧車が回っていたので、子供たちが乗りたいとお願いするから「絶対に揺らすな」と何度も念を押して分かれて乗り込んだ。

「はぁ~……ちょっと休憩にゃ~」

 リスと猫の世話で疲れたわしは、最後に玉藻と一緒に乗り込んでいる。

「魚を見せるだけで金を取れるとは、なかなか興味深い施設じゃったな」
「まぁ珍しい物ってのは、見たがる人が多いからにゃ~」
「動物園なる物もちゃんと見れておれば勉強になったのに……もったいないことをした」
「獣をよく食べているから、動物園はうちでは無理かもにゃ~。せいぜい人が集まるのは、日ノ本ぐらいにゃろ」
「ふむ。一考の余地ありか」

 玉藻と喋っていたら、観覧車はそろそろ頂上に差し掛かった。

「おお~。こんな海の近くなのに、建物だらけじゃ。どこに行ったら、土が見えるんじゃ」
「ここは日本で二番目に大きな都市だからにゃ。田畑を探すほうが難しいんにゃ」
「田畑どころか、砂浜すらないぞ? どこに行ったんじゃ??」
「う~ん……難しい話になるにゃよ?」
「頑張って聞こう。かかってこい!」

 玉藻が気合いを入れているので話をしてみたら、川の氾濫をなくすためにダムやコンクリートでせき止めていると言った時点で、頭から煙りが上がった。
 その結果、石コロの長い旅が起こらずに砂ができないと言ったら意味不明って顔。海を埋め立てていくつもの人口島を作ったと言ったら驚愕の顔。海の真ん中から砂をすくったら砂浜の砂が流れ込んだと説明したら、ついにはパタッと倒れた。

「大丈夫にゃ?」
「つつつ……思っていたより難しい。そちはそんなアホそうな顔なのに、よくわかるな」
「顔は関係ないにゃろ~」
 
 心配してあげたのに、玉藻は酷すぎる。

「要するににゃ。人間がより良い暮らしをしようとしたら、どうしても自然破壊が起きてしまうんにゃ。あそこに見える山だって、一時期は丸坊主だったんだからにゃ~」
「うむ。ようやく話が見えて来た。人間が自然から取り過ぎているってことじゃな」
「大きく言えば、それで合ってるんにゃけどにゃ~」

 けっこう詳しく説明したのに、玉藻は大雑把にまとめるのでわしとしては納得いかない。しかしこれ以上説明しても玉藻は聞いてくれないだろうから、あとでスマホで調べさせる。
 そうこうしていたら一番下に着いたので、皆と合流して今日の宿泊場所にバスで移動。皆からも今日の感想をちょっと聞いて、ゲーム等をする姿を微笑ましく見て眠るわしであった。


 次の日の平行世界21日目は、とある温泉にやって来て疲れを癒やす……

「「「「「にゃ~~~!!」」」」」

 いや、水着着用の温泉アミューズメント施設にやって来たので、回転しまくるアトラクションで大声をあげている。

「ほら? 流れるプールも楽しいんにゃよ~??」

 何度もウォータースライダー等のアトラクションに並ぶと他のお客さんに迷惑が掛かるので、わしは浮き輪を渡してプカプカ浮かばせる。だって、お客さんが毎回順番を譲ってくれるんじゃもん。
 ちなみに、モフモフは毛が抜けるからと断れるかと思っていたけど、関西人はノリがいいから「オッケーやで~」と、まったく揉めなかった。なんかめっちゃ話し掛けて来るし……

 お昼までダラダラ遊んだら、ランチを食べて男女分かれての温泉に移動。男はわしと猫息子とさっちゃんの息子と猫のルシウスだけなので、子供の相手をするのが大変だ。
 でも、ルシウスが意外と大人だったので助かった。さっちゃんの息子をエスコートしたり、頭や背中を洗ってくれたからな。息子はルシウスを泡まみれにしてたけど……

 わしと猫息子は、男どうしの裸の付き合い。お互い毛皮で肌が見えないし泡まみれになったけど、ゆっくり温泉に浸かる。
 その時、「好きな子はいるのか」と聞いてみたら、まだまだ子供。てか、猫。女子によく撫でられるから、迷惑に思っているそうだ。
 しかし、メイバイに撫でられるのは好きなのか「将来ママと結婚する」とか言っていたので、わしはトプンと頭までお湯に浸かった。

 うちの息子、かわいすぎるやろ~~~!

 息子が尊すぎて涙が出てしまったが、全身ずぶ濡れなのでバレはしない。でも、ルシウスにバレたので、賄賂エサで黙らせた。
 それからサウナに入ってすぐにギブアップしたり、いろんな形のお風呂を堪能したら、施設の服に着替えて休憩スペースで子供たちにフルーツ牛乳を支給。わしはビールだ。

 全員で腰に手を当て「プハ~ッ!」ってやっていたら、いちおう施設の服を着ているがジットリと濡れたコリスと猫娘とエリザベス、あとノルンがウロウロしていたので、わしは慌てて駆け寄った。

「こんにゃ濡れたままでどうしたんにゃ~」
「なんかみんな、アカスリってのやってるの~」

 コリスのちょっとした説明で、わしは納得。おそらく皆は、アカスリが気持ち良くなってコリスたちの存在を忘れてしまったのだろう。
 なので、コリスたちの水分は魔法で集め、適当な洗面台にポイ捨て。コリスたちにもフルーツ牛乳をあげたら、腰に手を当てて「プハ~ッ!」って言ってた。でも、猫のルシウスとエリザベスまで出来るなんて、誰から習ったんじゃろう?


 モフモフ倍増のところに魔法まで見せてしまったので、関西人が大量に集まってしまったから、子供たちを守るためにわしたち猫兄弟で芸の披露。
 いちおうコリスお姉ちゃんには、支払い用のカードを渡して何か冷たい物でも買うように言ったけど、独り占めしてませんように!

 わしたちの芸は、土魔法を使っての玉乗り。それも、空中に浮かぶ玉乗りなので大好評だ。エリザベスとルシウスもけっこう楽しいのか、複数浮かべている玉から玉に飛び移って観客を楽しませてくれている。
 そうこうしていたら、ツルッツルッのリータたちがやって来たので、「ブーブー」言う関西人は解散させた。

「子供たちをほっぽり出して、にゃに自分たちだけ楽しんでるんにゃ~」
「コリスちゃんたちもやってるものだと思っていまして……」
「毛があるんにゃからできるわけないにゃろ~」
「「「「「ごめんにゃさい……」」」」」

 リータたち、うっかりミス。コリスたちには毛皮があることを忘れていたから、このような事故が起きたのだ。

 わしが叱ると皆はコリスたちにも謝り、優しくブラッシングするのであった……

「さっちゃんは自分の子供をかまってやれにゃ~。ゴロゴロ~」
「ハッ!?」

 なんだか全員、モフモフを撫でたいように見えるわしであったとさ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

次女ですけど、何か?

夕立悠理
恋愛
美人な姉と、可愛い妹。――そして、美人でも可愛くもない私。  道脇 楓(どうわきかえで)は、四歳の時に前世の記憶を思い出した。何とかそれに折り合いをつけた五歳のころ、もっと重要なことを思い出す。この世界は、前世で好きだった少女漫画の世界だった。ヒロインは、長女の姉と三女の妹。次女の楓は悪役だった。  冗談じゃない。嫉妬にさいなまれた挙句に自殺なんてまっぴらごめんだ。  楓は、姉や妹たちに対して無関心になるよう決意する。  恋も愛も勝手に楽しんでください。私は、出世してバリバリ稼ぐエリートウーマンを目指します。  ――そんな彼女が、前を向くまでの話。 ※感想を頂けると、とても嬉しいです ※話数のみ→楓目線 話数&人物名→その人物の目線になります ※小説家になろう様、ツギクル様にも投稿しています

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

キャンピングカーで異世界の旅

モルモット
ファンタジー
主人公と天女の二人がキャンピングカーで異世界を旅する物語。 紹介文 夢のキャンピングカーを手に入れた主人公でしたが 目が覚めると異世界に飛ばされていました。戻れるのでしょうか?そんなとき主人公の前に自分を天女だと名乗る使者が現れるのです。 彼女は内気な性格ですが実は神様から命を受けた刺客だったのです。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

【完結】異世界で小料理屋さんを自由気ままに営業する〜おっかなびっくり魔物ジビエ料理の数々〜

櫛田こころ
ファンタジー
料理人の人生を絶たれた。 和食料理人である女性の秋吉宏香(あきよしひろか)は、ひき逃げ事故に遭ったのだ。 命には関わらなかったが、生き甲斐となっていた料理人にとって大事な利き腕の神経が切れてしまい、不随までの重傷を負う。 さすがに勤め先を続けるわけにもいかず、辞めて公園で途方に暮れていると……女神に請われ、異世界転移をすることに。 腕の障害をリセットされたため、新たな料理人としての人生をスタートさせようとした時に、尾が二又に別れた猫が……ジビエに似た魔物を狩っていたところに遭遇。 料理人としての再スタートの機会を得た女性と、猟りの腕前はプロ級の猫又ぽい魔物との飯テロスローライフが始まる!! おっかなびっくり料理の小料理屋さんの料理を召し上がれ?

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

処理中です...