アイムキャット❕❕❕~異世界の猫王様、元の世界でやらかす記~

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猫歴15年

平行世界16日目その3にゃ~

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 元女房の広瀬空詩ララと元猫の珠丸ジュマルとの出会いは振り出しに戻ったので、わしが「もう帰る」と言ったら、ララが相談していたことを思い出して尻尾を掴まれた。

「じゃあ、場所を変えるわよ。その前に着替えね。お兄ちゃんは体操服に着替えて来て。あなたはちょっと待っててね」
「まぁいいんにゃけど……」

 2人の着替えを待つ間、わしは家捜し。適当に棚を開けてスマホでパシャリ。こんなお金持ちは、普段何を食べてるか知りたかっただけなので、この機会に調べ尽くしてやる。
 食べ物のチェックが終わったら、隠し財産でもないかとマルサの真似事。若くしてこんないい家に住んでるんだから、絶対に悪いことをして稼いでいるはずだ。

「あるわけないでしょ……」
「にゃっ!?」

 わしが悪い顔で隠し財産を探している現場を見られたので、制服姿のララにめっちゃ怒られてしまった。
 しかし、また帰ると脅したら、尻尾を掴まれて外に追い出された。

「あなた、おんぶしてくれる?」
「別にいいんにゃけど……」

 何をするかわからないけど言われるままに背負ったら、ララはスマホのカメラをジュマルに向ける。

「お兄ちゃんは追いかけて来てね。はいよ~。シラタマ号~」
「わし、猫にゃよ??」
「ノリ悪っ……さっちゃんの時はノリノリだったでしょ~」
「行けばいいんにゃろ~。にゃにゃ~ん!」

 子供に馬扱いされていたところを見られていたのでは、わしも恥ずかしい。なので、「ヒヒーン」と言ったつもりで走り出すわしであった。


 しばし走っていたら、ジュマルがギリギリ追いつける速度で走れとララに命令されたので、指示通りの速度でわしは走る。その速度はけっこう速いので感心して後ろを見ていたら、なんか大勢の人が全力疾走していた。

「マズイはね……」
「お前の兄って、大人気だにゃ~」
「どう考えても猫を捕まえようとしてるのよ。プッ……猫を捕まえるって……アハハハハハハ」
「自分でツッコんで笑うにゃよ~」

 わしのボケはララに潰されたので、笑いが止まるのを待っていたら、耳を掴まれた。

「まくわよ。屋根伝いに行っちゃって!」
「そんにゃのジュマル君が追いつけないにゃ~」
「大丈夫。お兄ちゃんもたまにやってるから」
「うっそにゃ~」

 ララの言葉はいまいち信用ならないので、お試しにブロック塀に飛び乗ったら、ジュマルは離されずについて来てる。

「ホンマにゃ!?」
「ほら? 追いつかれるわよ??」
「あいつ、本当に人間にゃの?」
「あなたには言われたくないだろうね」
「猫にゃけど~」

 ジュマルがこんな人間離れしている動きをしているんだから、わしだって言いたい。しかし、ジュマルとの距離が詰まって来ているので、屋根に飛び乗ってピョンピョン移動。もちろん、屋根が痛まないように気を付けている。
 後ろを見ると、ジュマルもわしと同じく屋根を傷付けないように、着地は膝のクッションを使って音すら出ていない。もう、空を走っているのかと見間違えるように屋根を飛び交っていた。

 そんな追いかけっこも、学校が見えたら終了。裏手の人のいない場所から、学校に侵入するわしたちであった。


「はぁはぁはぁ……嘘やろ? 息ひとつ乱れてない……」

 学校裏の通路でスマホを握ったままのララを下ろしていたら、ジュマルが着地してわしを化け物でも見るような顔で見た。

「にゃはは。ジュマル君こそ、よくついて来れたにゃ~。うちの世界だったら、兵士に推薦してるところにゃ~」
「喋ってないで行きましょう。お兄ちゃんはこっち。あなたは屋上で待ってて。合図出すから」
「いや、先ににゃにするか言えにゃ~」
「ここ、たまにランニングする人がいるから急いでちょうだい」

 ララはそそくさとジュマルを連れて行くので追おうとしたら、足音が聞こえて来たのでわしも逃げる。だって、不法侵入してるんじゃもん。
 とりあえず大ジャンプで屋上に着地したら、ララたちの向かったほうに移動して、上からストーキング。そのララたちはというと、生徒と擦れ違う度にあとを追う人続出。
 さらに先頭でララがスキップすると、後ろに続く生徒もスキップしてついて行くので、わしは呆気に取られながら見ている。

 わしが何が何だかわからないこの状況を見ていたら、踊るように飛び跳ねる集団はサッカーグラウンドに入って行った。
 そこでも2人は大人気。練習中のサッカー部員にあっと言う間に囲まれていた。しかし、ララが何やら身振り手振りをしたらその輪は踊りながら大きく広がり、綺麗な円を作り出した。
 すると、ララは校舎のほうに向き直り、両手でオッケーのマーク。そんなことされても大観衆の中に行きたくないが、行かないことには夜な夜な文句を言いに来そうなので、わしも覚悟を決める。

 屋上からのジャンピング。悲鳴を出さないように気を付け、風魔法を使ってフワリと着地するのであった。


「我が輩は猫であるにゃ。名前はシラタマにゃ。ペットではないにゃ~」
「「「「「キャーーー!!」」」」」
「「「「「うおおぉぉ~!!」」」」」

 大観衆の前に着地したら無言でわしのことを見ていたので自己紹介してみたら、大ウケ。気分は悪くはないが、圧が強いのでちょっと怖い。

「それじゃあ、第一回戦、サッカー対決の始まりよ~!」
「「「「「キャーーー!!」」」」」
「「「「「うおおぉぉ~!!」」」」」

 元女房が見たこともないキャピキャピ感を出して司会をしているので、わしはついて行けない。わしとジュマルは、ララに腕を組まれて、サッカーグラウンドの中央に連れて行かれるのであった。

「てか、にゃにこの騒ぎ? お前もにゃに猫被ってるにゃ??」
「話はあと。ルールは……」

 ララはまったく取り合ってくれない。スマホを構えて勝手にルール説明を始めた。といっても、センターラインからの1対1の試合をしたらいいみたいなので、簡単そうだ。

「じゃあ、投げるからね? スタート~!!」

 ララがサッカーボールを上に投げたら試合の開始。ジュマルがすぐさま落下地点に入ったので、わしは様子見だ。

「フッ……体格差があるから取り合いの勝負は避けたんやな」

 ジュマルは華麗にトラップしてボールをキープしたら、なんかわしの気持ちを代弁してる。

「いや、先手を譲っただけにゃ。すぐに終わらせても観客が納得しないにゃろ?」
「確かにそれはそうやな……すぐに決めてやろうかと思ったけど、ちょっと遊んでやるわ。俺から奪ってみろや!」
「んじゃ、お言葉に甘えるにゃ~」

 あまり速く動きすぎても観客が納得しないと思い、わしは無造作にトコトコと前進。するとジュマルは、挑発するように足下でボールを操り出したので、おちょくるようにわしの前に出したボールをサクッと奪ってやった。

「へ? アレ??」
「わしのこと、ニュースで散々やってるのに、にゃにふざけたことしてるんにゃ。いい加減にしろにゃ~」

 そりゃ、わしのほうが遙かに速いんだから、ジュマルがめちゃくちゃ速いと思っているボールコントロールは止まっているようなモノ。素早く奪うのも楽勝だが、先の先を使ってゆっくり奪ってやったので、観客から変な声が出ていた。

「ちょっとナメすぎていたか……ま、すぐ奪い返してやるわ!」
「ほい、返してやるにゃ~」
「なっ……ナメやがって~~~!!」

 ジュマルに向けてボールを軽く蹴ってやったら激オコ。今度はテクニックを使ってわしを抜こうとしていたが、ヒールリフトは後の先を使ってヘディングで弾き返してやった。

「クッソ~! これならどうや!!」

 ボールを拾ったジュマルは、そこから長距離砲。やや山なりのシュートのコースは、このままではゴールネットを揺らしそうだ。
 なので、わしはダッシュで移動。ボールより速くゴールに着いたら、オーバーヘッド……できたらかっこよかったのだが、やったことがなかったので、ここは垂直跳びからのキック。カウンターの超山なりのシュートとなった。

「なんで追いつけるんや……ヤバイ!?」

 呆けている暇はない。わしのシュートはゴールに向かっているので、ジュマルは慌てて走り出した。
 その結果、何度かバウンドしてゴールに入りそうになったボールをスライディングでギリギリ蹴り出すジュマル。しかしボールが飛んだ先にはわしが立っていたので、ボールは踏むように止めてやった。

「そろそろわしから攻めてもいいかにゃ?」
「ハッ……俺を抜けると思うなよ!」

 確かにわしはサッカーなんてかじった程度なので、プロ選手以上のテクニックとフィジカルを持つジュマルを抜くのは難しいだろう。

「なっ……消えた……」

 だが、最強の猫であるわしがちょっと速く蹴っただけで、股抜きは楽勝。目にも留まらぬ速さで飛ぶボールに回り込んで追いついたわしは、フリーでシュートを放つ。

「ゴーーール! 勝者、シラタマ!!」

 その直後、ララの勝ち名乗りが上がり、ジュマルは膝から崩れ落ちるのであった。


「にゃんか圧倒してしまってゴメンにゃ~」

 観客はジュマルが負けると思っていなかったのかどよめきが凄いので、わしはジュマルのプライドを傷付けてしまったかと、謝りながら手を差し出した。

「なにかの間違いや! 次はPK戦で勝負や!!」

 しかし、ジュマルはわしの手を叩いてボールを取りに行った。なので、わしはスマホを握るララに助けを求める目を向けたが……

「んじゃ、二回戦はPK対決ってことで!」

 ノリノリ。言い方から察するに、予定外なのにルール説明まで始まった。
 PK対決のルールも簡単。お互いキッカーとキーパーを交互にして、5回の得点数で勝敗が決まる。

「俺からや! 喰らえ~~~!!」

 いちおうコイントスはあったけど、わしの目には止まって見えたので先手を譲ってあげたら、ジュマルはゴール隅に殺人シュート。
 おそらくプロ選手でも取れないコースだろうが、わしは素早く追いついてキャッチしてやった。

「ぶっちゃけ、サッカー苦手なんにゃけどにゃ~……ほいっと」

 続いてわしの番では、愚痴りながらの弱々しいシュート。

「逆つかれた~~~!!」

 でも、蹴り出す直前に足の向きを変えたので、ジュマルは掠りもせず。わしの動体視力に掛かれば、ジュマルが飛んでからシュートを打つのも楽勝だ。
 2周目も同じ要領で、ジュマルが外してわしが決める。3周目もジュマルのシュートをキャッチしたら、ここで決着といこう。

「んじゃ、次は必ずジュマル君から向かって右側に蹴るからにゃ?」
「とか言って、逆に蹴るつもりやろ! 汚いヤツめ!!」
「これ外しても余裕があるから遊んでやると言ってるんにゃ。もし逆に蹴ったら、わしの負けでいいにゃ~」
「そんな勝ち、俺が許せん!」
「絶対に蹴らないから、安心しろにゃ。ま、わしのシュートが止められるわけがないけどにゃ~」
「ふざけやがって……絶対に止めてやる!」

 ジュマルをあおるだけ煽ったら、助走も付けずにインサイドキック。

「はい??」
「にゃ? やべ。【風玉】にゃ~」

 それなのに、ジュマルの目で追えない速度。ネットも突き破り、何かにぶつかりでもしたら器物破損は確実なので、わしは咄嗟とっさに風魔法で玉を作ってサッカーボールにぶつけたら、ボールは破裂するのであった。

 スパーン!

「やりすぎよ!」

 なので、ララに頭をスリッパで叩かれて怒られるわしであったとさ。
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