アイムキャット❕❕❕~異世界の猫王様、元の世界でやらかす記~

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猫歴15年

平行世界14~16日目その1にゃ~

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 総理とのゴルフの帰り道、本屋に寄って歴史書を買い取ったら帰路に着こうかとも考えたが、ここには熱心に調べ物をする玉藻しかいないので、けっこう自由に動きやすい。
 なので、爆買いしたお店に電話して、商品の受け取りができる店をリムジンで回ってもらう。

 平行世界に来てすぐに買ったこともあり、7割方の店で会計が終わっていたので、お店のバックヤードで支払いと受け取り。どの店でもすんごい見られてると思ったら、わしの次元倉庫が気になって集まっていたようだ。
 大量の札束で一括払いするより、大量の物が消えるほうが興味があるらしく、その時間は店内から店員が消えたらしい。ちなみにわしは、帯付きの札束で払うなんてめったにない経験なので、めっちゃ手が震えていた。

 商品の受け取りを終えると、リムジンで勉強中の玉藻とホテルに戻り、皆が今日していたことを楽しく聞いてから眠りに就いた。


 それから2日間は、わしたちの世界で使えるかもしれないレジャー施設巡り。それと街ブラしつつショッピングだ。時々、警察の警護を掻い潜って近付く若者がいたが、ほとんど握手を求める手。
 どうも総理のぶっちゃけ発言が「ざまぁ」って心に響いたらしい。しかし、わしは何もしていないと嘘をついて追っ払う。

 中にはわしに噛み付いて来るその筋の者がいたので、コリスのモフモフロックから契約魔法。テレビカメラの前で誰に頼まれたか喋らせてやったが、末端ではいい返事は来ない。
 なので、コソッと念話で自由党と嘘をつかせて警察にあとのことは任せた。このタイミングでわしに難癖付けて来たのだから、黒幕は自由党に近しい人なのは確実だろう。

 わしがけっこうやらかしたせいで日本政府は批判の的になってしまったが、身から出たサビ。それにこれぐらいハンデがあったほうが、健全な選挙になるはずだ。


 平行世界15日目のラストの見世物は、高いところ見物。まずは東京タワーに上り、「にゃ~にゃ~」言ってた皆をスカイツリーに連れて行ったら、「にゃ~にゃ~」声が大きくなっている。

「うわ~。さっきも高かったのに、こっちはさらに高いね~」

 さっちゃんは当たり前のことを言っているが、ちゃんと答えてあげる。

「わしもスカイツリーは初めてにゃけど、こんにゃに高かったんだにゃ~」
「シラタマちゃんも初めてなんだ。でも、こんなに凄い建物があると知ってて、よく我慢できたわね」
「これができたの、わしが80代にゃよ? もう、遠出する気力はなかったにゃ~」
「80!? こっちの人は長生きなのね」
「まぁ、医療がしっかりしてるからにゃ。てか、イサベレが100歳オーバーにゃのに、よくそんにゃに驚けるにゃ~」
「イサベレは……ほら? 若いままじゃない。お祖父様とお祖母様は、もっと早く亡くなったし……そっか。ここの医療レベルになったら、もっと生きられたんだ」
「かもにゃ~。でも、それはそれで問題は起きるけどにゃ~」

 世界一高い建物で、老後のケアのお話。せっかくの景色なのに、さっちゃんが真面目に質問して来るので、なんだか老後が不安になっていまいち絶景を楽しめないわしとさっちゃんであった。


 翌日の平行世界16日目は、ついに東京脱出。東京駅には、頼んでもいないのに見送りの人がいっぱい。てか、「行かないで~!」と泣き叫んでいる人ばかりだ。また戻って来るのに……
 ちなみに外務省から派遣されている七三分けメガネは、まだついて来ている。いつも同じ人なので誰か他に人はいないのかと聞いたら「自分で6人目」とのこと。似た人だらけだったみたいだ。

 ホームにも人が多いので駅員さんに蹴散らしてもらったら、わしの待ってましたの乗り物の先頭車両に乗り込んだ。

「確かに移動中はタブレットとかは解禁したけど、出発ぐらいは見ようにゃ~」

 ウキウキしているのはわしだけ。皆は席に着いた瞬間に、ゲームやらタブレットを見るので注意。こんな未来的な乗り物なのに、あまり興味が持てないらしい。
 わしの注意を無視するとタブレットとかを取り上げられるので、皆は渋々窓のほうを向いてくれた。てか、窓が小さすぎるから興味を持てなかったのかも?

「「「「「はやいにゃ~~~」」」」」

 この乗り物は、リニヤモーターカー。最高時速到達前に、皆は窓に張り付いてるもん。

「わしにも見せてにゃ~~~」

 そのせいでわしの見るスペースがなくなったので、やっぱりゲームでもやらせておけばよかったと後悔するのであった。


 後ろに座るテレビクルーの女性に窓を分けてもらったら、わしも「にゃ~にゃ~」感動して見ていたが、めっちゃモフられたからほどほどで退散。
 その頃にはリータたちも落ち着いてゲームとかしていた。もう飽きたみたいだ。わしはどこに座ろうかとキョロキョロしていたら、さっちゃんとバチッと目が合ったので、膝の上にお邪魔する。

「これってシラタマちゃんの車より速いよね? キャットトレインと比べたら、どれぐらい速いの??」
「わしの車は最高時速100キロとして、キャットトレインはだいたい50キロにゃ。そしてこのリニヤモーターカーは、にゃんと600キロにゃ~」
「600割る50だから~。12倍……そんなに速いの!?」

 さっちゃんが興味を持ってくれて、わしも嬉しい。なので、新幹線やリニヤモーターカーの知識を披露して、楽しんでもらうわしであった。

「当然これも買って帰るのよね?」
「こんにゃ高いの買えないにゃ~」
「ええぇぇ!? あんなに金塊持ってたじゃな~い」
「だから~。桁が違うんにゃって~」

 あと、さっちゃんが「買って買って」うるさいので、車両の価格と総工費をスマホで調べてあげたら、クラクラッと倒れた。いくらさっちゃんがお金持ちでも、金塊を1000万キロも用意できないみたいだ。

 それから日本の国家予算も金塊で計算してさっちゃんの心を折っていたら、早くも終点に到着のアナウンス。

「まだ名古屋までにゃの~」

 しかし、行きたい駅まで繋がっていなかったので、七三メガネに「にゃ~にゃ~」文句。
 のぞみに乗り換えて皆に感想を聞いてみたら、「遅いような気がする」と曖昧な返事。時速600キロも300キロも、車窓からの景色はさほど変わらないみたいだ。

「これなら買えるよね?」
「だからにゃ。車体が安くなったところで線路を引くお金がバカ高いから無理なんにゃって」
「じゃあ、車でいっちゃん速いの買ってよ~」
「速くても、道路を整備してにゃいからスピードを出せないにゃ~」

 さっちゃんが妙にスピードにこだわっていると思ったら、動画サイトを適当にポチポチしていたら、F1の動画が出たから。最初はグルグル回るだけだと思っていたけど、ゴールの前にあるカメラを通る時の迫力が凄かったんだって。
 てか、F1なんて買えるか! ……いや、中古なら三千万ぐらいで売りに出されていたかも?

 さっちゃんには無理とは言ったが、F1なんて男の夢。いまならいくらでも無駄遣いができる。わしはスマホで中古のF1を探すのであっ……

「さっき無理って言ってたのに……」
「ちょっとウィンドウショッピングしてるだけにゃ~」
「じゃあ、安かったら私の分もお願いね?」
「安かったらだからにゃ~」

 さっちゃんにスマホの画面を見られてしまったので、2人でワクワク探すのであったとさ。


 ちょっとボロイけど手頃な値段のF1カーが見付かったのでポチッとしようとしたけど、住所もクレジットカードを持ってないし、そもそもわしたちの世界にガソリンがない。
 バイオエタノールで動かないことはないと思うけど、エンジンがすぐにダメになりそうだから泣く泣く諦めて電気自動車を探していたら、もう目的地。わしたちは急いで荷物をまとめ、のぞみから降りた。

「これが京じゃと……」

 玉藻が言う通り、ここは京都。見たいだろうと思って寄ってみたのだが、まったく見た目が違うので固まってしまっている。

「あっちの京都タワーってのに登ってみようにゃ。上から見たほうがわかりやすいにゃろ?」

 まずは高いところから。しかし、わしは京都観光なんて何度もしているから、この時間にやりたいことを済ませたいので、ベティにお願い。

「ちょっと抜けるから、みんにゃのことお願いにゃ~」
「あたしが? あたし、そんなに京都に来たことないのよ??」
「そこはテレビクルーにでも聞いてくれにゃ。お金もいっぱいあげるからにゃ」
「こんなに!?」

 とりあえずベティに帯付き五百万円を渡したら、陥落。なんか「うひゃうひゃ」言っていたから少し心配だけど、なんとかなるだろう。
 普通の食事では皆が満足できないので、大量のお弁当が入ったキャットケースを渡し、ついでにわしそっくりなぬいぐるみを預け、影武者に使うように頼んだら、わしは素早く動いて消えるのであった。


 皆が京都観光している間に、わしは猫型に戻ってダッシュダッシュ。線路上を空気を蹴って駆け回る。
 わしに掛かれば、人の目につかず移動するのは楽勝。物の数分で兵庫県までやって来たら、屋根を飛び交い目的地を探す。

 あまり高級住宅地には来たことがないので住所を確認するために屋根から飛び下りて歩いていたら、ケバイおばさんのトイプードルに吠えられた。
 ひと睨みで黙らせてやりたかったが、力を隠す隠蔽魔法を使っているので通じず。逃げるしかなかった。

 そんな感じで屋根と地上をピョンピョン行き来していたら、目的のスタイリッシュな家を発見。ただ、できるだけ住人を驚かせたかったので現れ方を考えていたら、ちょうど配達のトラックが止まったので、人型に戻ってタイミングを待つ。
 住人に荷物を渡した配達の兄ちゃんがトラックに乗った瞬間に、インターホンの前に着地。そして、喉を人間使用に整えてピンポンだ。

「は~い」
「すみません。先程の配達、まだひとつ残っていました。お手数を掛けて申し訳ありません」
「あ、はい。わかりました~」

 インターホン先の若い女性はカメラにわしが映ってもいないのに、確認もせずに玄関のドアを開け、パタパタと門まで走って来た。
 その音を聞きながら自分は犯罪でもしているようだと考えていたけど、喉を整えて顔もキメ顔。

「ご苦労様で~す」

 そして若い女性が門を開けると、わしは笑う。

「にゃはは。生身の体では久し振りだにゃ~」
「あなた!? ブッ! アハハハハハハ」

 わしの顔を見るなり吹き出して笑っているこの美人JKは、わしの元女房。わし同様、徳が高かったから、この世界に輪廻転生していたので会いに来たというわけだ。

「アハハハハハハ、アハハハハハハ」
「その笑い方は好きにゃったけど、ちょっと笑いすぎじゃにゃい?」
「アハハハハハハ……にゃい?って……アハハハハハハ」
「いや、わしの顔も口調も知ってるにゃろ~」

 元女房は度々夢枕に立つので喋ったことがあるし、アマテラスチャンネルなる物でわしの行動を見ているのだから、ここまで笑われる筋合いはない。

「アハハハハハハ…ハハ……ハ……」
「ほら? 笑いすぎにゃ~……にゃ?」

 しばらくわしの顔を指差しながら大口を開けて笑っていた元女房は、急にガクンと膝が落ちたので抱き締めたら……

「息にゃ! 息しろにゃ~~~!!」

 御臨終……元女房は笑顔のまま死後の世界に旅立つのであったとさ。
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