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猫歴15年

平行世界4日目その1にゃ~

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 子供食堂を出たら、待たせていたテレビクルーに何をしていたかと質問が凄かっので、ノウハウを聞いていたことと寄付をしたと説明。これでおそらく、ここの子供食堂に寄付金が集まるから、ちょっといい食事が振る舞われそうだ。

 それからバスで移動して、街ブラしつつ爆買いと買い食いしてからホテルへ帰還。今日も念のため数枚買っていたブルーレイディスクから選んだアクション映画を見てから、一日を終えるのであった。


 翌日……

「本当に行くのですか? 神社ならいっぱいあるのですから、他の神社に行きません?」

 平行世界4日目は、わしのワガママでとある神社にやって来たのだが、外務省の七三メガネが移動中のバスからずっとうるさく止めるので、うっとうしい。テレビクルーも何故かカメラも回さず乗り気じゃない。

「別について来なくていいにゃ~」

 乗り気じゃないのはわしも一緒。接待は助かるのだがテレビに映るのは不本意なので、置いて行ってもかまわない。

「じゃ、参拝方法は玉藻先生のマネして進むんにゃよ~?」
「「「「「はいにゃ~」」」」」

 ここは靖国神社。外務省が行きたがらない場所。テレビ局も、撮影して他国に見られるのは気を遣う場所なのだ。
 しかし、わしたちが玉藻のあとに続いて歩き出したら、テレビクルーはこれが仕事なので追うしかない。七三メガネは……アレは上司に電話してるな。

 わしたちには関係ない話なので、玉藻の作法をマネて参道をペコペコしながら歩き、手も洗って本堂の近付いたら、鳥居の下に「はぁはぁ」言ってる中年男性がいた。

「お待ちしておりましたと言いましたよね?」

 無視して横を抜けようとしたら回り込まれてしまったので何者かと聞いたら、ここの宮司。まぁそんな偉い人なら、入れないところにも入れるしガイドとして使えるので同行を許可する。
 そうして皆に挨拶させていると、玉藻がわしのそばにやって来た。

「しかしここは立派な神社じゃな。何をまつっておるんじゃ?」
「ここは戦没者の英霊が奉られているんにゃ」
「戦没者?」
「こっちではにゃ。明治維新でにゃ万人もの日本人が亡くなり、その後の世界大戦ではにゃん十万人もの死者を出したんにゃ」
「なんじゃと……」
「あ、宮司さん。みんにゃに何を祈ったらいいか教えてあげてにゃ~」

 玉藻が黙ってしまったので、他の人の説明は宮司に丸投げ。たぶんわしの祈り方は人と違うと思うので、教えてもらったほうが無難だろう。
 ある程度の知識が入ったら皆にお金を渡すのだが、小銭が全然ない。大きなお金を皆に配り、最後の玉藻にもしっかり渡す。

「いつまで握っておるんじゃ。高が紙じゃろ」
「その紙が高いんにゃ~」

 いつもわしは一万円を入れていたけど、こんな大人数では少し貧乏性が出てしまったが、全員に行き届いたのでさっそくお参り。賽銭箱にお金を入れて祈りを捧げる。
 子供たちから顔を上げ、リータや玉藻も終わったのに、わしとベティはまったく動こうとしないので、玉藻はわしたちの気持ちを汲み、皆を連れて離れて行くのであった……




「なっが……」

 わしが振り向くと、皆の姿はなくベティしかいなかった。

「にゃ? みんにゃはどこ行ったにゃ??」
「あたしも喋る相手が多くて、気付いたら置いて行かれてたのよね~」
「にゃはは。ベティもなんにゃ。わしも知人が多くて、いっつも長くなっちゃうんにゃ~」
「歳を重ねる事に長くなってる気がするわ。でも、不公平よね。あたしはお婆ちゃんになってるのに、ここに眠る人は若いままなんだから」
「それを言ったらお互い様にゃろ。いまにゃらわしたちはもっと若返ってるにゃ~」
「ホンマや!? って、あたしはもっと若かった気がするな~」
「変にゃサバ読むにゃよ~」

 サバ読み発言にわしがツッコんでしまったが、今日のベティは久し振りにここに来れて気分がいいのか特に怒らない。わしと戦時中にあった楽しい話をしながら、皆を捜すのであった。


 ベティと楽しく適当に歩いていたら、リータたちを発見。靖国神社内にはいろんな石碑があるので、宮司から説明を受けていたみたいだ。
 少しベティとの仲を疑われたが、感想を聞きつつ皆を連れて来た場所は遊就館。順路通り2階から入り、宮司に展示物を説明させ、わしからも子供たちに念話を使って語り掛ける。

「聞いての通り、ここには日本で起こった内戦と戦争の資料があるにゃ。君たちには関係ない話だと思っただろうけど、わしとお母さんは体験しているんにゃ。東の国と帝国の戦争、帝国と猫耳族の内戦、その後、平和な猫の国が作られたにゃ。
 どちらも過去に起こった出来事にゃけど、君たちには戦争を知って考えてほしいんにゃ。わしと一緒に、どうやったら平和に暮らせるか考えてくれにゃ~」
「「「「「はいにゃ~」」」」」

 子供たちには少し酷だが、こんなにいい勉強の場はない。それにここにいる子供は、全員王家の血を引いている。未来を担うのだから、頑張っ勉強してほしい。
 そんななか、さっちゃんはフライングで宮司に質問していたので、念話の魔道具を首からぶら下げた子供たちにノートとペンを渡すように言って話を聞かせに行った。

 子供たちだけでなく大人たちも熱心に話を聞きながら進んでいたら、それを微笑ましく見ているわしの隣に玉藻がやって来た。

「こちらでは、明治維新はこんなことになっていたのか……どうしてこれほど死ぬ前に、矛を収められんのじゃ……」
「さあにゃ~? あの当時は複雑だったからにゃ~。海外の戦力に対抗しようとしていた人々、徳川を倒そうとする人々、権力に群がる人々……それらが複雑に絡み合って、やめどきがわからなかったのかもにゃ」
「ここの天皇は何をしておったんじゃ。それをまとめるのが務めじゃろうが」
「そう言ってやるにゃ。そっちと違って権力を削がれまくってるんだからにゃ。その上、内戦の道具にしばしば使われていたんにゃよ」
「なんじゃと……なんと酷い……」

 天皇至上主義の玉藻は怒りの表情から悲しみの顔になっていたので、わしは慰めるように手を握り、先を歩くのであった……


 宮司の説明を聞きながら下の階に移動して世界大戦の資料となったら、一気に死者数が跳ね上がったので皆からの質問がなくなった。

「もうお昼にゃし、ちょっと休もうにゃ~」

 なので、ここの食堂で休憩。ただし、コリスが食べすぎたら食堂の食べ物がなくなってしまうので、超美味しい猫の国料理を大量に並べてあげた。
 テレビクルーにも振る舞い、料理の感想のあとに遊就館についても聞いてみたら、初めて来たので勉強になったらしい……

 食事が終わると映画の上映があると聞いたので、そちらに移動。皆は映画と聞いてホテルで見たSF映画を想像してワクワクしていたので、これから悲惨な戦争の映像が流れるから心して見るようにと言い聞かせた。
 その映像は思った通り悲しい出来事ばかり。家を焼かれ町を壊され、親兄弟や友達を亡くした人のインタビュー等が白黒で流れていたので、全員涙を流していた。
 もちろん、当事者のわしとベティは大号泣。映画が終わると湿ったタオルは次元倉庫に隠して、また食堂に移動した。

 皆は疲れているだろうと甘い物を出したら、わしだけ別行動。見たい展示物があったから立ち尽くして見ていたら、ベティがやって来て、しばらくすると玉藻が隣に立ち、皆が揃う。
 それから展示物の感想が漏れて来たら、わしは皆に顔を向ける。

「お母さんに感謝してる手紙が多いにゃろ? どうしてかわかるかにゃ??」

 わしの質問に皆は頭を横に振るので、もったいぶらず教える。

「この当時は日本軍による検閲が酷くてにゃ。泣き言だとか恨み節にゃんか書かせてくれなかったんにゃ。酷い物にゃら破かれ、よくて黒く塗りつぶされたんにゃ。だから、みんにゃ似たような手紙になってしまったんだろうにゃ」

 わしが寂しそうに展示物に目をやると、皆も静かに展示物を読み進める。そうして最後の展示物が並んでいる場所でゼロ戦を見ていたら、リータが隣に立った。

「シラタマさんが初めて作った飛行機に似てますね」
「そりゃそうにゃ。これをイメージして作ったんだからにゃ」
「そうでしたか……ということは、シラタマさんはこれに乗って戦場を飛んでいたのですか?」
「いんにゃ。わしはただの歩兵にゃ。まぁ憧れはあったにゃ~」

 わしが悲惨な戦地でも楽しいことを考えていたと知ってリータの顔が優しくなり、少し話し込んでいたら玉藻が苦虫をかみつぶしたような顔でやって来た。

「これに爆弾を積んで、若者を突っ込ませたのか……」
「酷い作戦にゃろ?」
「生きて帰れない作戦のどこが作戦なんじゃ!!」
「ちょっ……声に出すにゃ~。みんにゃもおいでにゃ~」

 皆を集めると、わしはメイバイを使って説明する。

「わしも特攻が作戦とは一切思ってないにゃ。でも、それなりの成果を出していたのは事実らしいんにゃ。こんにゃ馬鹿げた作戦、どうしてやったか、メイバイにゃらわかるんじゃないかにゃ?」
「う~ん……ちょっとわからないニャー」
「じゃあヒントにゃ。戦勝国にはバラ色の世界が待っていて、敗戦国にはにゃにが待ってるにゃ?」
「あ……猫耳族のように奴隷に落とされて、人を人として扱われなくなるニャ。どんなに真面目に働いても殴られ、生きるのにギリギリの食べ物しか貰えない……それで死んでも笑われるニャ……」

 メイバイはあの頃を思い出して沈んで行く。

「そうならないためには……自分の命を犠牲にしてでも、敵を1人でも多く道連れにしないといけないニャー!」
「と……思う人もいるだろうにゃ。メイバイは違うのゃろ?」
「あ、う、うんニャー! 一部の過激派がそんなこと言ってただけニャー!!」

 いつも明るいメイバイの闇を暴いてしまったので、慌てて質問して止めるわし。そして、皆にも忘れさせようと違う話にすり替える。

「問題にゃのは、この当時は日本政府からしか情報が得られなかったことにゃ。それがどれだけ怖いことかわかるかにゃ?」

 わしの質問にベティとノルンが真っ先に手を上げたが、答えを知ってるとでも言いたげなドヤ顔していたので、次に手を上げたさっちゃんを当てる。

「敵国が残忍と刷り込ませて戦争を引き起こせる……負けてても勝ってると嘘もつける……特攻も皆のためだと言って無理矢理やらせることも……洗脳だってできるかも……」
「おお~。パーフェクトにゃ~」
「え? さすが私ね! 賢い!!」
「だからってやるにゃよ?」
「や、やらないわよ!!」

 わしが褒めて拍手を送ったら、さっちゃんは鼻高々だったので早めに叩き折ってやった。さすがに洗脳なんてやらないとは信じているが、お調子者なので少し心配。残念そうな目で見ていたらめっちゃモフられたし……

 二人で遊んでいたら全員から冷めた目で見られていたので、さっちゃんはわしを盾に使うように前に出すから咳払いして締める。

「まぁ戦争の始め方にゃんて、時の権力者の一存で簡単に始められるにゃ。でも、終わり方にゃんてないにゃ。町が直っても、人口が戻っても、死んだ人は生き返らないんだからにゃ。必ず恨みは残り、それを抱えて生きて行かないといけないんにゃ。最悪、復讐の連鎖で世界の崩壊にゃ。そうならないように、みんにゃで平和を維持していこうにゃ~」
「「「「「はいにゃ~」」」」」

 皆の返事はふざけているように聞こえるが真剣な顔をしているので、ここに連れて来たことは正解だったのだろう。
 わしはそう確信して、帰路に就くのであった……
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