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猫歴15年
平行世界1日目その3にゃ~
しおりを挟むわしたちの演武に感動したのも束の間、九尾の狐に恐怖した報道陣は静まり返る。そこを、玉藻に乗ったわしが退場すると自然と道が開き、誰にも止められずにリータたちと合流した。
「またアニメ見てたにゃ~?」
わしたちの勇姿の感想を聞こうとしたら、リータたちは誰も見ていない。ガイドさんが玉藻の尻尾を撫でたいと言ったぐらいだ。でも、怖くないの?
玉藻はちょっと撫でさせたら、すぐに九尾のキツネ耳巨乳美女に変化。リータたちにモフられるといつまでもモフるから急いだっぽい。
とりあえずここでのやることはやったので、ホテルへ移動。何台ものチャーター車に分かれて乗り込んだのだが、さっちゃんがわしの尻尾を掴んで離してくれなかったので、わしは東の国組と一緒に移動している。
「うっわ……車だらけね。ぜんぜん進まないわよ」
「やっと町並みに興味持ってくれたにゃ~」
「いや~。なんかかわいい絵が動いてるんだもん。それにお話もよくできてるから、引き込まれちゃったわ」
「ちにゃみに、にゃんてアニメを見てたにゃ?」
「なんだっけ? シラタマちゃんみたいな青いのが、お腹のポケットからなんかイロイロ出すヤツ……」
「ああ。それは口にしちゃダメなヤツにゃ~」
さっちゃんがド忘れしてくれていてよかった。でも、親子で歌わないでください。運転さん……いま、笑ったじゃろ? そんなにわしと似てるのか!?
有名な曲を聞いて運転手が吹き出していたので、さっちゃんたちはタイトルを完全に思い出しやがった。しかも、わしのことをその名前で呼ぶので困ったものだ。
ネットの中でも似たような言葉が飛び交っていたらしいが、わしは知ったこっちゃない。リアル猫型ロボットと言われても、リアル猫じゃもん!
さっちゃんたちが間違ってもその名前で呼ばないように頑張って外に視線を持って行かせていたら、本日のホテルに到着。皆の点呼を取って中に入ると、従業員の壁。全従業員が集まったのではなかろうか……
そんな分厚い壁を蹴散らしてチェックインカウンターに向かったら、女性に念の為の確認だ。
「ペットお断りとかじゃにゃい?」
そう。エリザベスとルシウスがいるから必要な確認なのだ。
「ああ~……だい、じょ、うぶです」
「いま、わしを見てコリスを見て子供たちを見にゃかった?」
「見ました! どこからどこがペットかわからないと思いました! 申し訳ありません!!」
「嘘でもいいから隠してくれにゃ~」
女性はテンパっているので、いちおうエリザベスたちの足は魔法で洗って綺麗アピール。猫用トイレも持ち歩いているからと安心させていたら、エリザベスにネコパンチされた。
レディーはトイレで用を済ませるものなのですか。そうですか……え? マジで??
まさか猫が人間様のトイレを使っているとは初耳だったので詳しく聞きたいところであったが、これ以上追及してもネコパンチされるだけなのでさっさとチェックイン。
お金は金塊を見せて信用払い。まぁ外務省から聞いているみたいだから、取りっぱぐれることはないと信用したみたいだ。
それからエレベーターに分かれて乗り込むと、さっちゃんがうるさい。うちのエレベーターと違ってかなり振動が少ないから作ってほしいみたいだ。
なんとかかんとか入った部屋は、超VIPルーム。わしたち全員が泊まってもまだ余裕のある部屋だ。
その部屋に入り、窓に近付いたらコンシェルジュの女性にカーテンを開けてもらった。
「「「「「にゃ~~~……」」」」」
そこには百万ドルの夜景……って、ほどではないが、さっちゃんたちでは見たこともない光り輝く東京の夜景が広がっていた。
「あんまり前に出るにゃよ~? ガラスが割れたら一大事にゃ~」
さっちゃん家族は大丈夫だけど、猫の国組は力が強すぎるので窓に張り付かれるとヤバイ。コンシェルジュは「大丈夫ですよ」とか言っているけど、大丈夫なんかじゃないんじゃ。
しかし、皆を信じるしかないので、わしはコンシェルジュとお喋り。ルームサービスと新聞を頼み、なんとかノートパソコンと携帯電話を借りることはできないかと相談してみた。
前者はすぐに用立てられるとわかっていたが、後者はホテルの従業員用を借りられることになったので大感謝。なので、めっちゃモフられた。せめてお礼をすると言うのを待ってほしい。
そうしてゴロゴロ言っていたら子供たちがコンシェルジュを囲んだので、コンシェルジュはめっちゃ嬉しそう。ぬいぐるみが好きなんだって。
子供たちの用件は「ワーワー」言っていて何かよくわからないけど、コンシェルジュは丁寧に対応してくれたので、子供たちはタブレットを持って離れて行った。たぶん、Wi-Fiの使い方を教えてもらったのかな?
子供たちがタブレットに集中すると大人たちもタブレットに群がり出したので、そろそろコンシェルジュには退場してもらう。まったく出て行く素振りを見せないんじゃもん。
あとは平行世界人水入らずと行きたいが、皆タブレットに集中しているので、わしは新聞を熟読。すると、玉藻が寄って来た。
「あやつらは、いったい何に夢中になっておるんじゃ?」
「あ~。玉藻は殿下と話してたもんにゃ。アレには動く絵が出てるみたいなんにゃ」
「なんじゃと……妾はあの板を貰っておらんぞ!?」
「借り物にゃ~。ちょっと待ってろにゃ~」
玉藻にぐわんぐわん揺すられたら、パンチドランカーになり兼ねない。なのでわしはリモコンを探し、備え付けの大画面テレビをつけてやった。
「うお! 妾が板に入っておるぞ!?」
「恥ずかしいから大声で騒ぐにゃ~。これはテレビと言ってにゃ。源済と一緒に研究していた物の完成版にゃ」
「なんと……妾って、こんなに美人じゃったか?」
「にゃにに驚いているにゃ?」
もう少しテレビに驚いているかと思ったけど、玉藻は早くも自分のことになったので、チャンネルはチェンジ。
「なっ……妾はどこに行ったんじゃ? 裏か??」
「ほれ。使い方を教えるから隣に座れにゃ。このリモコンをポチポチっとにゃ……」
玉藻にある程度リモコンの操作を教えたら、大事な注意事項。
「有料チャンネルもあるから、変にゃところは触るにゃよ」
「なんじゃ。ケチケチしよって」
「ケチとかじゃにゃくて、子供の教育に悪いんにゃ~」
お約束でAVなんて流れては、洒落にならない。面倒だけど、テレビの操作方法が書かれている冊子を探して玉藻に説明するけど、音量を下げろ!
テンパっている玉藻にやらすと音量が上がるだけなので、リモコンはわしが操作。そんなことをしていたら爆音に驚いた皆が寄って来たので、もう説明がめんどい。
「コンシェルジュさ~~~ん!!」
「ただいま!!」
なので、部屋の前で盗み聞きをしていたコンシェルジュを召喚。わしでもそれぐらい気付いてるっちゅうの。でも、こんな時のために追い払っていなかったから、いいように使ってやった。
面倒な説明はコンシェルジュに任せている間に、わしは新聞に戻る。必要な情報と世界情勢なんか読んでいたらルームサービスの食事が並んだので、皆の注意を集める。
「ごはん来たから食べようにゃ~。タブレットは一旦置こうにゃ? わしも新聞読まないにゃよ?」
皆はアニメに夢中でコリスと猫兄弟しか席に着いてくれない。わしが新聞握っていたらブーブー言いやがる。しかし、このままではコリスに全部食べられると言ったら、渋々席に着いてくれた。
「それじゃあ、いただきにゃす」
「「「「「いただきにゃす」」」」」
「味わって食べてにゃ~」
食事の挨拶をしたら皆は競い合って食べるので、なんとか落ち着かせたいが聞きゃしない。大食いの面々は一瞬で食べてわしの手持ちをせがむ始末。コリスがわしの料理を取ろうとするので、大量の料理を出すしかなかった。
落ち着いて食べていたのは、わしと玉藻だけ。いや、玉藻はテレビに釘付けなので、食べるのが遅かっただけだ。
お腹いっぱいになった者からタブレットに戻り、わしは食後のデザートとコーヒーまで堪能したら、テーブルにノートパソコンとスマホを並べて電源を入れた。
「んっと……コンシェルジュさん。わしにも助言してくれにゃ~」
「はいは~い」
久し振りだったのでコンシェルジュを呼んだら、分身の術。いや、もう一人勝手に入って来やがった。勝手にモフるし……
とりあえずこの女性には、インターネットの接続方法だけ聞いて、子供たち……いや、子供たちは順応が早いみたいなので大人たちを助けるように言って追い払った。
「シラタマ君……コンピューター使えるの?」
わしがパソコンをカタカタやっていたら、ベティが寄って来た。
「コンピューターって……言い方が古すぎるから、喋る時は気を付けたほうがいいにゃよ?」
「なに通ぶってるのよ。てか、なにをしてたか教えてよ~」
「いや、一般常識だからにゃ?」
40年のブランクのあるベティは変なことを言ってモニターを覗き込むので、邪魔。とりあえず隣に座らせて、一緒に情報を仕入れる。
「ここに『日本の近代史』と打ち込むとにゃ」
「なんかいっぱい文字が出て来たわね」
「とりあえずウィキってのをクリックしたら、情報が出て来るってわけにゃ」
「わっ! 太平洋戦争のことが詳しく載ってる……てか、このコンピューター賢いのね。辞書みたい」
「コンピューターって言うにゃ~。パソコンとかインターネットって言えにゃ~。そもそもこのパソコンの中に、情報にゃんてひとつも入ってないんだからにゃ」
「はい? じゃあ、なんで文字が出て来るのよ??」
「コンシェルジュさ~ん!!」
ベティも面倒なので、コンシェルジュを追加。でも、インターネット初心者のおばあちゃんに説明するのは苦戦しているな。
その間わしは、スマホを使って黙々と情報収集していたが、ベティはお勉強が面倒になってコンシェルジュを追い払っていた。
「なんか凄い世界になってるのね」
「そんにゃ言葉ひとつでまとめるにゃよ~」
「だってついていけないんだも~ん」
「これにゃからババアは……」
「シラタマ君だってジジイでしょ!」
「うるさいにゃ~」
ちょっとイラッと来て失言してしまったので、ベティにはスマホを押し付ける。
「ほれ。これで遊んでろにゃ」
「なにこのカマボコ板……」
「さっきまで使っていたタブレットの小さい版にゃ。はいチーズにゃ~」
「あん?」
ベティはポーズを取ってくれなかったが、わしは容赦なくポチッとして画面をベティに向ける。
「なにこれ!? めっちゃブサイク!?」
「自分の顔にゃ~」
「そんなわけないでしょ! このカマボコ板が悪いのよ!!」
「かわいく撮ってやるから、カマボコ板って言うにゃ~」
ベティおばあちゃんには何枚も撮って奇跡の一枚を見せてから、写真の撮り方の説明。
「だから~。さっきから動画になってるって言ってるにゃろ~」
「こいつが勝手に変えるのよ!」
「エミリー。助けてくれにゃ~」
おばあちゃんにはスマホは難しいし、わしもイマイチ使い方を熟知していないので、娘頼り。コンシェルジュにも頼んで、写真の撮り方を2人に教えさせる。
「あの……コンシェルジュさんにゃ?」
「はい?」
「自分のでばかり撮ってないで、2人に教えてくれにゃい?」
「あ……はいはい」
「わしを撮るにゃ!」
このチャンスに自前のスマホでわしたちを撮りまくるコンシェルジュと戦いながら……
わしたちがわいわいしていたら皆が集まって来たので、こちらにも写真の撮り方の説明。子供たちはタブレットでも撮れることに気付いて、大撮影大会になるのであったとさ。
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