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08 急行

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 なんだかんだで和解したハナは、騒ぎが起きていた下駄箱をカケルと共に離れて、人気のない公園に連れて行った。

「背中蹴っちゃってごめんね。はい、これ。お姉さんからの奢り」
「ッス……」

 身長やお姉さんやおしるこを渡された全てをなんとかツッコまずにやり過ごしたカケルが黙って飲んでいると、ハナが口を開く。

「しっかしヤンキー君には幽霊見えてるんだ」
「パイセンは見えてないんすか?」
「うん。見えてないよ」
「んなので、よく玉城パイセンの言ってること信じられるっすね」
「そりゃ、親友なんだから疑うわけないでしょ。そんなことで傷付けて親友じゃないって言われたくないもん」
「それって本当に信じてるんすか??」

 カケルとしては、ハナが新手の宗教に嵌まっているように見える。いや、こいつもストーカーになって、いつしか悪霊になるのではないかと考えている。

「そんじゃあ行こっか?」

 カケルがおしるこを飲み干すとハナが手を伸ばして来たので、なんとなく空き缶を渡そうとカケルも手を伸ばした。

「行くって……どこにっすか?」
「ツムギの家よ。悪霊を倒しに行くよ!」
「ちょっ! 何言ってるんすか!!」

 ハナは有無を言わさずカケルの手を握るので、女子と手を繋いだことのないカケルは言いなりになる。そうして無理矢理ツムギの家まで連行されたカケルは、その雰囲気にビビってハナの手を振り払った。

「ん? どったの??」
「玉城パイセン……こんな家に住んでるんすか?」
「あ……あんた、毎日来たらダメだからね!」
「ちげぇっすよ」

 ハナがストーカーみたいな目で見るのでカケルは説明する。

「ここ、なんつうか、得体の知れない雰囲気っつうか……」
「あ~……幽霊屋敷みたいな感じってこと? やっぱ見える人は違うねぇ。あたしじゃ全然わかんないや」
「これ、入っちゃダメなヤツっすよ。帰りません??」
「何ビビってんのよ。ヤンキーでしょ。行くよ」
「ビ、ビビってねぇし」

 本当はビビっているのに、ハナに挑発されたからにはこの答えしか出来ないカケル。

「やっぱビビってんじゃん」
「ビビってねぇし。パイセンこそ、勝手に入っていいのかよ」

 ハナの背中にピッタリくっついているのだから、カケルがビビっているのはバレバレ。しかし、自分の家のように勝手に中に入って行くので、カケルもツッコまざるを得ないようだ。

「ツムギ~? 入るよ~??」

 いちおうインターホンを鳴らして声を掛けて入っていたので、ハナはツムギの部屋の前でも一声掛けたのだが、中から思っていたのと違った答えが返って来る。

「ダ、ダメ……来ちゃダメ~~~!!」

 それは、ツムギの悲鳴のような声。しかし、そんな声を聞かされては、ハナは黙っているわけにはいかない。

「ツムギ! どうしたの!?」

 ドアを「バーンッ!」と開けたハナは、中の様子を見て息を飲む。

「な、なんで浮いてるの……」

 ハナにはツムギが宙に浮いているように見え……

「うっきゃああぁぁ!!」

 カケルには、悪霊がツムギにまとわりついて殺そうとしているように見えた……
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