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07 親友登場
しおりを挟む本日の1年B組は平和なもの。いつもより異様な殺気を放つカケルがいなくなったので、安心して昼食を終えて談笑していたのだが……
「うっきゃああぁぁ!!」
と、カケルが叫びながらドアを乱暴に開いたからには奈落の底へ。一気に静まり返った教室に一歩踏み入れたカケルも正気を取り戻し、何もなかったように自分の席に着席した。
それからカケルは机に突っ伏し、その体勢のまま授業が開始する。カケルが珍しくノートも取らずに寝ているので教師は注意しに行こうとしたが、クラスメート全員に無言で首を横に振られて諦める。触れてはならないと悟ったのだろう。
終業のチャイムが鳴ると、クラスメートは逃げるように教室から去り、カケルも人の気配が無くなってから動き出す。
生徒の全てがカケルを避ける廊下を歩き、下駄箱で靴に履き替えて外に出ようとした瞬間、カケルの背中に衝撃が走った。
「ってぇな~。何すんだオラッ!」
そこそこの勢いだったのでカケルは前回り受け身を取って振り返ったら、そこには短髪の女子が立っていた。
「あんたがツムギに何かしたってのはわれてんのよ! ツムギにあやまんなさい!!」
いきなりカケルにドロップキックを食らわした女子は、松井ハナ。カケルが凄んでもハナはそれより凄い剣幕で捲し立てて来た。だが、カケルには思い当たる節がない。
「ああん。俺がパイセンに何したっつんだ」
「ドアを壊したことを、脅してツムギのせいにしたでしょ! 先生に怒られたってツムギ、顔を真っ青にしてたんだからね!!」
「んなもんしるか。俺のせいって言えば全て丸く収まることだろ」
「そうよ! だからチクリに行こうとしたけど、ツムギに止められたのよ! あんなに顔が真っ青なツムギ初めて見たわ。いったいあんたは何をしてツムギを脅しているのよ!!」
「だからしらねぇよ。てか、あんたパイセンのなんなんだよ」
押し問答が面倒臭くなったカケルは、あきらかにテンションダウン。
「あたしはツムギの親友よ!」
「ふ~ん……一個上っすか。ちっさいすね」
「どこ見てんのよ! このけだもの!!」
カケルはハナの身長と胸元のリボンの色を見ていただけなのだが、ハナは勘違いして胸を押さえていた。
「とりあえず、俺が職員室に出頭してドアの弁償したらいいんすね?」
「そ、そうよ。あと、ツムギに謝罪も!」
いきなりカケルが下手に出たのでハナもテンションが下がり始めたが、なんとか怒りのテンションを保つ。
「できれば玉城パイセンには会いたくないんすけど……親友パイセンから、謝っていたと言っておいてほしいっす」
「はあ!? それで謝罪になると思ってるの!?」
ハナは再びテンションアップ。カケルの胸ぐらを背伸びして掴んだ。
「まぁ……ダメなのは……でも、アレは見たくないし……」
おばけ嫌いなカケルがモゴモゴと言い訳すると、ハナが驚愕の表情を浮かべた。
「はい?? もしかして、ツムギが同じ境遇の王子様に出会ったって言ってたの……あんたのこと!?」
「王子様ってなんすか?」
「ないわ~。ヤンキーが王子様って、ないわ~」
「いや、だから王子様ってなんなんすか??」
カケルがいくら質問しても、ハナは「ないわ~」と言い続けるのであったとさ。
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