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06 カポエイラの真相
しおりを挟む「あははは。私も最初は驚いたよ~。お婆ちゃんやお爺ちゃんの顔を容赦なく蹴ってたんだも~ん」
「蹴ってた場所、顔だったんすか!?」
ツムギからボールの正体が老人の霊と聞かされただけで驚きなのに、顔面を蹴っていたと知ったカケルは罪悪感が半端ない。
「でも、あれで成仏してるみたいだから、結果オーライじゃない?」
「いや、絵面がヤバくないっすか?」
「うん。かなり。ヤンキーパネーって思った。あはははは」
「ふざけて言わないでくださいっすよ~」
ツムギがふざけても罪悪感からは逃れられないカケル。いちおう詳しく聞くと、幽霊の顔が地面スレスレにあったのは、幽霊は浮遊していて無重力状態なので、上や下、左右もわからないのではないかとツムギの予想。
なんなら、地面から顔だけ出して体は完全に埋まっている幽霊もいるらしく、物体を素通りできるから幽霊は楽しんでいるのではないかと語っていた。
「じゃあ、なんで俺のとこに集まってくるんすか?」
「それは成仏したいからじゃないかな? 道に迷っていたら、光があったから群がるみたいな」
「まるで街灯に集まる蛾みたいっすね……」
「たしかにね~。あはははは」
「冗談なんすけど……」
仏様に対してカケルのほうが常識的。ツムギはケラケラと笑うので、「この人、本当に困ってるのかな?」とか思っている。
「私からも聞いていい? どうして逆立ちしてたの? 蹴りづらくない??」
「ああ。アレっすか……数が多いとあっちのほうが楽なんすよ」
「どういうこと?」
「俺が触れられるのは左足だけなんす。だから、浮いてあるボールを蹴りやすいんす」
「ふ~ん……黄金の左ってヤツね!」
「なんすかそれ」
いきなりビシッと決められてもカケルはよくわかってない模様。スルーされたツムギも恥ずかしいみたいだ。
しばし会話が途切れ、カケルは居たたまれない雰囲気を打開しようと話を探していたら、ツムギは少し離れてから振り向いた。
「それでどうかな……ちょっとは怖いの和らいだかな?」
どうやらここまではツムギの策略。面白おかしく会話してカケルの恐怖を和らげ、悪霊を取り払ってもらおうと考えていたようだ。
「少しは……てか、パイセンも困ってるんすよね?」
カケルもそのことに気付き、この日初めてツムギの顔を真正面から見た。その顔は声とは裏腹に、精気が薄れているように見える。
「そうね……いなくなったらありがたいな~」
弱々しくニッコリ微笑むツムギの顔を見たカケルも、男を見せるしかない。
「わかったっす。蹴るっす!」
腕を回し、大きく息を吐いて左足を後ろに。少し腰を落として空手の構えを取ったカケルは、自分を鼓舞するかのように叫ぶ。
「いくぞ! きええぇぇ~!!」
その瞬間、ツムギは両手の指を胸の前で組み、目を閉じて祈りを捧げた。
次の瞬間には、カケルの飛び蹴りが悪霊に炸裂……
「うっきゃああぁぁ!!」
せずに、悪霊と目の合ったカケルは、飛んで逃げて行ったのであった……
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