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02 ヤンキーだから警察にからまれる

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「あん? なんだよ」

 カケルは近所でも有名なヤンキーであり、本人も絡まれないようにヤンキーを演じているので、中年のお巡りさんに声を掛けられてもその姿勢は崩さない。

「あ~……この公園でカポエイラかブレイクダンスをしているヤンキーが居ると通報があってね……とりあえず立とっか?」
「なんで俺がマッポの言うこと聞かなくちゃいけないんだよ」
「うん。まぁそうだよね~。でも、逆さのままじゃ話にくいでしょ? 別に怒るとかじゃないから、体勢を変えようよ。ね?」
「まあ……」

 カケルは納得していない雰囲気を出しながら立ち上がり、服に付いた砂をパンパンと叩いて落とした。

「それでだけど……ここで何してるのかな?」
「別に……河川敷に俺がいちゃ悪いのかよ」
「いや、悪くはないんだけど、不審な動きをしていたから気になっちゃって。普通、ヤンキーが逆さになって踊らないだろ?」
「俺に聞かれても知らねえよ。てか、誰にも迷惑掛けてねえんだから、もういいだろ」
「そうなんだけどね~……ほら? 公共の場所だから」
「だからよ~。人も少ない公共の場所なら、俺が何しようと勝手じゃねぇのかよ」
「ごめんね~。これもおっちゃんの仕事でね」

 お巡りさんは申し訳なさそうにしているが、職質はやめない。

「その制服って三高だよね? 生徒手帳とか持ってない??」
「補導か? 何もしてない俺を補導しようってのか??」
「いや、ただの確認だから。それとも何かやましいことしてるのかい??」
「何もしてねぇって言ってんだろ。補導もされたことがねぇ。夜は補導されそうだから出歩かないで勉強してるんだ。だから学校でも成績優秀なんだぞ」
「プッ……ヤンキーなのにか」

 カケルの台詞は言い訳に聞こえたお巡りさんは軽く吹き出すので、カケルはイラついて来た。

「いま笑っただろ? ああん!」
「す、凄んでも無駄だから。生徒手帳出そっか?」
「チッ……」

 お巡りさんの仕事は悪者を捕まえること。カケルの迫力に少しひるんだものの坦々と仕事をこなす。
 カケルもこの手の押し問答は慣れっこなので、生徒手帳はいつも携帯しているから胸元をゴソゴソと漁る。
 するとナイフでも出すのかと疑われていたが無事生徒手帳が出て来て、お巡りさんはホッと腰の拳銃から手を離していた。

 それからお巡りさんは無線越しにカケルの身元確認をしていたが、補導歴が一切見当たらなかったので「マジで? 本当にマジで??」って何度も確認するのであった。


「まぁアレだ。もう怪しい行動しないでね。呼び出されてもアレだから」
「さっさとどっか行けよ」

 疑いの晴れたカケルはお巡りさんを邪険に追い払ったら、ため息を吐く。

「はぁ~……アレってなんだよ」

 いわれのない疑いを掛けられたカケルが憂さ晴らしに足下のボールを蹴飛ばしたその時、後ろから声を掛けられる。

「あはは。災難だったね」

 カケルが声がした方向に振り返ると、そこには美人JKが立っていたのであった。

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