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おまけ

ワンヂェンと旅行にゃ~3

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 クサヤにギブアップしたわし達が自分で出した料理を食べていると、首長家族とおっちゃんが欲しがって来たので「住民には秘密にするように」と言って食べさせてあげたら、漏れなく昇天。
 猫ファミリー総出で魂を追い回し、なんとか口の中に捻じ込んだら、試食用の野菜を焼いて食べさせてみた。

「これがトウモロコシですか……」
「生食もいけるけど、うちのは調理しないと美味しく食べれないんにゃ~」

 まずは作ろうとしていたトウモロコシを食べさせ、次は日ノ本で手に入れたサツマイモを食べさせてみる。

「甘くて美味しいだ! トウモロコシはやめて、こっち作りたいだぁ!!」
「すぐやめるにゃよ~」

 そしたらおっちゃんは、作りたい作物をチェンジ。お腹に溜まるから試食させたのに、甘い物に飢えていたのかも。
 それなのに、首長は難しい顔をしているので質問してみる。

「どうかしたにゃ?」
「いえ……子供の頃に、似たような物を食べた気がして……」
「あ~……ひょっとしたら、昔はイモを育てていたのかもにゃ。そっちの丸いほうを食べてみろにゃ」
「はい。あつっ!? ハフハフ……これです! いや、近いです!!」
「にゃはは。ちょっと違う品種だったみたいだにゃ」

 ジャガイモは近いみたいなので、わしの予想ではイースター島の品種はチリやペルーに自生するイモ。手持ちはないので、今度探して来て食べさせてみよう。そっちのほうが気候が合うかもしれないしな。


「てか、昔を知る方法はないのかにゃ? 生き字引が居るとか、文字があるとかにゃ……」

 わしが鋭い視線を送ると、首長は手をポンッと打って、家の中に入って行った。

「こちらは、ロンゴロンゴと呼ばれている物です」

 そして戻って来たら石版を見せてくれたので、わしの鼓動が早くなる。

「せ、石版にゃの? 書くの大変そうだにゃ~」
「昔は木の板に書いていましたが、燃やしてしまったので……あ、全てというわけではありませんが、重要な物は石版に写しております」
「やっぱりにゃ……」
「やっぱり……ですか??」
「いや、にゃんでもないにゃ」

 元の世界でもロンゴロンゴは木製で、ほとんど燃やしてしまっていたと聞いたことがあったから、伝承通りとわしは感動だ。さらにここでは魔法を使って石版に写してくれていたのだから、イースター島の伝説が詳しく聞ける。

「にゃにこの文字……グチャグチャにゃ~」

 なのにワンヂェンが邪魔するので、コリスの腹にぶん投げてやった。

「そ、それで……にゃんて書いてあるにゃ?」

 首長は石版をクルクル回しながら読んでくれる。

「あの花は君。君は僕の花……あ、これは私の詩集でした。少々お待ちください」

 首長の朗読は、リータ達も思っていた内容と違ったのか「ズコーッ!」て、こけていた。コリスはいつも通りニコニコ。
 わしもこけかけたが、読み方もわからなかったロンゴロンゴが読まれていると言うことは教えてもらえるということ。戻って来た首長の朗読をうっとりした顔で聞くわしであった……


 イースター島の歴史やロンゴロンゴの読み方を教えてもらった翌日、首長には暇な島民を集めてもらって、とある講習会を開始する。

「魔法講習大会にゃ~!」

 そう。イースター島では魔法を使ってモアイを動かしているのに、誰ひとり違う魔法を使っていなかったからもったいないのだ。
 教える魔法は、火、水、土魔法。これだけあれば生活に余裕ができるはず。その他は時間がないから、また今度来た時に教える予定。
 火魔法はオニヒメ担当。水魔法はワンヂェン担当。土魔法はリータ担当で手分けして教える。

 わしはちょっとした実演があるから、首長とおっちゃんの相手をしていた。

「と、こんにゃ感じにゃ」
「そんなことができるのですか!?」
「外の人はすんごいだぁ」

 わしが火の玉を浮かし、水をジャバジャバ出して、土をザバサバ出したら二人は興味津々。

「ここの人も魔力はそこそこあるから、すぐに使えるようになるはずにゃ」
「でも、これさえあれば……」
「だにゃ。水には困らないし、農業だって料理にだって使えるにゃ~」
「「ごく……」」
「じゃあ、二人には応用編を見せるからにゃ」

 首長達が息を呑む中わしがまずやったのは、コップと鉢を土魔法で作ること。わざわざ自分の魔力で出した土を固め、コップには水を、鉢には土を入れる。
 そして鉢にはジャガイモを切った物を埋めて、赤い栄養水をドバドバ~。すると早くも土から芽が出て来た。

「草が生えましたね……これも魔法ですか?」
「赤いのはうちで使っている栄養水にゃ。ちょっと危険な物にゃけど、用途を守れば植物が早く成長するんにゃ」
「ということは……どういうことでしょうか?」

 この説明では伝わらなかったので、もう少し詳しく説明。

「つまり、一年以内に森が復活すると言うことにゃ」
「「へ??」」
「次に来る時には、木の種をいっぱい持って来るから、みんにゃで森を育てようにゃ。野菜や花の種もあげるから、この島を、緑豊かにゃ島に変えようにゃ~」

 わしが壮大なプランを立ち上げると、おっちゃんは口をあんぐり開けて固まり、首長は咳き込んでいたのでコップの水を飲ませてやった。
 それでもまだ復活しなかったので、魚の切り身を軽く火魔法で炙って口に放り込んでやったら、舌を火傷して完全復活した。

「凄い……凄すぎます……」
「農業だけしか考えていなかったオラが恥ずかしいだぁ」
「にゃはは。これから忙しくなるってのだけは忘れるにゃよ~?」
「「はい!!」」

 イースター島完全復活にはまだまだ時間が掛かるだろうが、二人はやる気に満ち溢れた顔をしていたので大丈夫だろう。そう確信して、わしはリータ達の元へ二人を連れて行くのであった……

「にゃ? リータさんはにゃにしてるにゃ??」
「え? ここも猫の国に入れるんじゃないのですか??」
「いや、そのデカイわしの石像のことを聞いてるんにゃ~」
「猫の国なら必要ニャー!」

 残念なことに、リータとメイバイは超フライング。まったくそんな話はしていないのに、モアイぐらい大きな猫又石像を勝手に作っていたのであったとさ。


 リータとメイバイの説得のせいで首長が猫の国入りに積極的になってしまったので、わしは「にゃ~にゃ~にゃ~にゃ~」デメリットを説明しまくってなんとか先送りにしてやった。二人にめっちゃモフられたけど……
 それから魔法講習の進捗状況を聞いてみたら、リータ担当が全然進んでいない。猫又石像なんか作っているからじゃ。オニヒメとワンヂェンを見習ってくださ~い!

 火魔法は難しいのに、オニヒメのおかげでもうすでに使えるようになっている人がチラホラ居たから、頭を超撫でてペロペロキャンディーをあげた。
 ワンヂェン担当の水魔法も、量はそこそこだが全員使えるようになっていたので頭を超撫でてペロペロキャンディーをあげた。

「シャーーーッ!!」

 なのに、ワンヂェンに引っ掛かれた。わしに撫でられるのは嫌みたいだ。ペロペロキャンディーは奪い取ったクセに……
 ふと気付いたら、何もしていないはずのコリスがわしの隣でアーンしていたので、ビッグペロペロキャンディーを突っ込んでおいた。だって仲間外れはかわいそうなんじゃもん。

 そうこうしていたら、ここに居る全員の講習会も終わったので、あとは各々教え合いながら自主練を言い渡す。次に来た時には、島の全員がそこそこ使えるようになっていると思うから、イースター島緑化計画が早くに進むだろう。


 ランチを終えると残りの時間は、夜まで自由行動。イースター島は特に何も無いので、皆は面白くないだろうからの配慮だ。
 コリスとオニヒメは自由行動と聞いた瞬間、キャットハウスに入って爆睡。リータとメイバイはキャットハウスの前に出したテーブル席で雑談。ノルンもわしの頭を離れてそこに残り、ロンゴロンゴを熟読している。

 わしは漁業をしていると聞いたので、一人で向かおうとしたけどワンヂェンが尻尾を掴んで離してくれなかったから、背負って海に向かった。

「う~ん……思っていた漁じゃないにゃ~」
「壮大だにゃ~」

 ここでの漁業は追い込み漁。それも、大量のデカいモアイが沖からゆっくり砂浜に近付いて来る恐怖映像だ。

「それで……どうだったにゃ? 初めての未開の地探検は」
「う~ん……にゃにも無くて微妙にゃ~」
「にゃはは。今回はちょっとハズレだったかもにゃ~」
「でも、シラタマがにゃんで旅を続けているかはわかったにゃ。未開の地に残された人々を助けたかったんだにゃ。ウチたち猫耳族も、ある意味、未開の地だったもんにゃ~」
「にゃ? わしが旅してるの、みんにゃが新しい小説を読みたいからにゃよ?」
「またまた~。シラタマが照れてるにゃ~」
「にゃに勘違いしてるにゃ? 猫会議でも多数決で決まったにゃ~」

 ワンヂェンがからかって来るので「にゃ~にゃ~」反論。わしは年に一回の頻度で旅をしたいのに、ムリヤリ年に四回も家を追い出されているのだから愚痴に変わって行った。
 その愚痴に拍車が掛かってワンヂェンが耳を塞いでいたら、巨大モアイが砂浜に到着しており、隙間無く並んでいた。

「あとは手掴みみたいだにゃ。ワンヂェンもやってみるにゃ?」
「うんにゃ! ウチもまぜてにゃ~~~」

 ワンヂェンが走り出すとわしも続き、皆が楽しく漁をする様子を写真に収めるのであった……




 それから二週間後……

「ここがモアイの聖地、イースター島ね!!」

 イースター島に行ったことがベティにバレてしまい……てか、ノルンがチクリやがったので、毎日「ギャーギャー」うるさかったので、集めた種なんかを持って行くついでに渋々連れて来てやったのだが……

「ねこ! ネコ! 猫!? キャット!! モアイはどこよ!? シラタマ君だらけじゃな~~~い!!」

 残念なことに、わしに似た猫又モアイがそこら中をウロウロしていた。

「にゃ、にゃんでこんにゃことに……」
「なんでシラタマ君が知らないのよ! 犯人はお前だ~~~!!」
「わしじゃにゃくて、リータとメイバイにゃ~~~」

 正解はリータ達が猫又石像を作ったせいってのもあるが、首長がリータの作った猫又石像を参考に自分のモアイを改造したらそれがトレンドとなって、猫又モアイだらけになったんだって。

 こうしてイースター島は、人々の命の源である森を取り戻せたのだが、大事な文化をひとつ失うのであったとさ。


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おまけの第一弾は、とりあえずこれで終了です。
また気が向いたら書こうかな~?
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