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第二十五章 アメリカ大陸編其の四

719 アメリカ縦断旅行から帰るにゃ~

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 アメリカ大陸最南端を目指して空を行くこと夕刻前。ついにわし達はアメリカ縦断を成し遂げたのだが……

「特に目ぼしい物は無かったですね」

 リータが冷たい。

「集落があったにゃ~」

 なのでわしが反論してみたら……

「他とたいして変わらなかったニャー」

 メイバイも冷たい。

「あ~あ。白い森が無いんじゃつまらないニャー」
「ですね。今度、中国を縦断してみましょうか?」

 そして二人で勝手に旅行先を決める始末。どうやら強い敵が居ないと張り合いがないらしい。

「とりあえず、帰ろっかにゃ?」
「「「「「はいにゃ~」」」」」

 と、言うわけで、アメリカ縦断旅行は尻窄しりすぼみに終わり、わし達は帰国の準備をするのであった。


 帰国するには寄るところがあるので、まずはクスコに移動。マーキングしていた宮殿の屋根に転移したら、全員で「とお~う!」と、ジャンプ。
 すったもんだあったけど、編集されたテレビ番組のように、ここクスコを束ねるカパックとの面会となった。

「にゃ? クシも居たんにゃ~」

 応接室にはマチュピチュを束ねるクシも居たので、二人に挨拶。どうやらクシはクスコを見たいが為に、わしを待つと言う理由と商談を兼ねて、十人ほどのマチュピチュ住人を連れてやって来ていたようだ。

「シラタマ王への献上の品もお持ちしております」
「こちらも集めていますので、どうぞ御覧ください」

 クシもカパックもこぞってわしにゴマをスルので、挨拶も早々に別室へ。そこには金銀財宝、食品や民芸品が左右に分けて置かれていた。

「左が、我がクスコの品で御座います」
「逆側が、我がマチュピチュの品で御座います」

 どちらも似たり寄ったりなので、とりあえずクスコ側から説明を求め、マチュピチュまでを聞き終えると、わしは決定する。

「宝はいらないのを少量貰おうかにゃ? あとは絨毯や服も何着か貰うにゃ。それと食材も売れるか試してみるにゃ~」

 せっかく集めさせたけど、約六割はわしから見ても売値が付きそうにない。民芸品とここにしかない植物がなんとか売れそうなので、応相談って感じだ。
 しかし、自分達からしたら全て価値が高い物だったらしく、カパックとクシは仲良く項垂うなだれている。全てわしに奪われると思っていたのにほとんど返品されるから、プライドが傷付いたようだ。
 なので、二人で慰め合ったり商品を褒め合ったりしてるよ。

「商談はまたあとでにしろにゃ~。アルパカと留学生はどこにゃ~??」

 見本市にしたらちょうどいいのだろうが、わしはすでに終わっているのでさっさと移動。まずはアルパカの所に案内してもらったら、リータ達がモフモフしていた……

「居ないと思ったら、こんな所に居たんにゃ~」
「シラタマみたいのが居るんだよ」

 リータ達の元へ近付くと、わしの頭の上に乗っていたノルンがパタパタと飛んで行った。

「あの……人形が喋ってませんでした?」
「それに飛んでましたけど……」
「ああ。旅の途中で、にゃんかついて来てしまったんにゃ」
「「生きてたのですか!?」」

 どうやら二人は、変な生物が頭に変な人形を乗せてるなと思っていたけど、言うと失礼かと思ってスルーしていたようだ。

 でも、わしを変な生物とか言うほうが失礼じゃからな? 猫で王様です!!

 もう一度わしの立場を再確認させて、かいつまんだ冒険談を聞かせてあげていたら、留学生が集まって来たので紹介してもらう。
 これはリータ達に任せて、わしは移動の準備。猫の街三ツ鳥居集約所に転移して、一番奥に三ツ鳥居をひとつ出すと、クスコに戻ってここにも三ツ鳥居を設置。マチュピチュ側は手持ちが無いので、次回に持ち越しにする。

 それからノルンを呼び寄せて、六人の留学生の名前を聞いてから、わしはカパックとクシに別れの挨拶をする。

「この留学生は、わしがきっちり教育してやるからにゃ。その上で、新しい役目を与えるにゃ」
「「役目……ですか?」」
「そうにゃ。英語を覚えてからになるけど、母国語を作るってのはどうにゃろ? せっかく言葉があるのに、文字は英語じゃ味気無いにゃ~」
「お、おお……それはいい考えですな」
「ええ。同じ言葉、同じ文字……より仲良くなれそうです」

 カパックとクシも賛成のようなので、わしが締める。

「それじゃあ留学生の費用も、商品を売った物から差っ引くから、覚えておいてくれにゃ~」
「「ええぇぇ~」」
「安くしとくからそんにゃに嫌そうにゃ顔するにゃよ~」
「シラタマはケチなんだよ」

 どこの部族も少しは援助しているんだから、ノルンにケチ呼ばわりされる筋合いはない。これからのわしを見ていたら、ノルンも太っ腹な性格になるはずだ。

「ちょっとお腹に体当たりしないでくんにゃい?」
「こんなのになりたくないんだよ」
「ゴーレムなんにゃから太るわけないにゃろ~」
「ノルンちゃんだよ」

 ノルンがわしを侮辱しているが、別れの挨拶が残っているので相手にしてやれない。

「そんじゃ、ま、これからいろいろあると思うけど、クスコもマチュピチュも仲良くするんにゃよ~?」
「はい。少しずつですが、交流を持って話し合いをして行こうと思います」
「シラタマ王のおかげで、我がマチュピチュが孤独ではないと知れただけでも感謝しております。有り難う御座いました」
「ふた月以内には顔を出すからにゃ。バイバイにゃ~ん」
「「またのお越し、心よりお待ちしております」」

 こうしてわしたち猫パーティは、クスコの民のカパック達や、マチュピチュの民のクシ達に見送られ、ゾロゾロと三ツ鳥居を潜り、猫の国に帰るのであった。


 猫の街三ツ鳥居集約所を出たら四匹のアルパカは荷車に乗せて、バスで牽引。バスに乗り込んだ留学生は猫の街の風景に驚いて質問が多かったので、手分けして答えて進んでいたら、キャットタワーに到着。
 リータ達にはアルパカの世話を任せて、わしとイサベレは留学生を連れて会議室で待機。まだ朝が早かったが、意外と早く双子王女が下りて来たので、さっそく旅の報告をする。

「また留学生ですの……」
「それより頭の上の人形はなんですの?」

 まずはペルーの話をしたのだが、やはりわしの頭に乗っているノルンが気になるようだ。

「ノンノンノン。人形じゃないんだよ。ノルンちゃんだよ」
「「喋った!?」」
「まぁ今回の旅で、一番のお土産はこれにゃ。時の賢者が晩年を過ごした場所を発見したにゃ~」
「「時の賢者様ですの!?」」

 ノルンが先走って双子王女が驚いているところに畳み掛けてしまったが、かいつまんだ説明だけして、先に留学生の話をしてしまう。
 まずは家だが、これは留学生用の屋敷があるから問題なし。言葉も念話魔道具を配っているから大丈夫。勉強もトウキン校長に任せられるので、明日にでも顔合わせとなった。
 しかし、昼夜逆転の時差があるので、本格的な勉強の開始は三日後として、その間に猫耳ガイドから猫の街の案内をしてもらう。

 これで、留学生の処置は終了。役場職員に頼んで滞在場所に送ってもらった。

「時の賢者の説明もしたいんだけどにゃ~……もうわし達は限界にゃ。夜の宴会の席で話すにゃ~」
「「わかりましたわ」」

 長い髪の毛をバサッと掻き上げる双子王女は、珍しくわしの時差ボケを心配してくれているので聞き分けがいいから、お土産を見せてあげる。
 会議室の窓から見える範囲にリータ達とアルパカが戯れる姿があったので、指差しながら説明。

「変わった獣ですわね」
「モフモフですわ」
「アレはアルパカにゃ。つがいで四匹貰って来たから、世話できる人を付けてやってにゃ~。あ、撫でる時は、唾掛けて来る場合もあるから、正面に立つにゃよ」
「「わかりましたわ」」

 双子王女は、また髪を掻き上げて聞き分けがいいのでわしは不思議に思ったが、それよりもドアの隙間から覗いている者が居たから、そっちに気持ちが行ってしまった。

 なんじゃ? ベティがこっち見ておる。旅の話でも聞きたいのかのう。入って来たらいいのに……

 わしがベティに声を掛けようと思ったら双子王女が回り込んで、また髪を掻き上げた。

「「何か変わったと思いません??」」
「にゃ??」

 さっきからなんじゃ? 変わったと言われても……あ、これって、女性特有の質問か。わし、この手の質問、苦手なんじゃけど~? 自慢じゃないけど、女房のパーマ姿もスルーしてしまったんじゃ……それか~!!

「髪、切ったにゃ?」
「「切ってませんわよ」」

 違うか~! じゃあ、第二弾じゃ!!

「口紅変えたにゃ?」
「「いいえ」」
「チークとか……」
「「いいえ……」」

 ヤ、ヤバイ! これ以上ハズすとキレられる。かと言ってわからんし……笑いで乗り切ろう!!

「ひょっとして……心が綺麗になったにゃ?」
「「どうして気付きませんのぉぉぉぉ~~~??」」
「ごめんにゃさい!!」

 こんな場面にふざけた事を言ったわしは平謝り。土下座までしたら、双子王女に首根っこを掴まれて立たされた。

「髪を見てくださいまし。ツヤツヤでしょ?」
「肌も潤っているでしょう?」

 そんなもんわかるか~~~い!! と、ツッコミたいところじゃが、ここは下手したてに出るのが吉じゃ。

「本当にゃ~。いつもより髪に張りがあるにゃ~。キューティクルにゃ~。お肌もまるで赤ちゃんみたいにゃ~。さすがお二人ですにゃ~」

 わしは肉球をモミモミしながらよいしょ。これで双子王女は気分が良くなったみたいだが、驚く事を言い出した。

「そうなのですわ。シャンプーとトリートメントをしたら、こんなにツヤツヤになりましたの」
「お風呂上がりに化粧水と乳液を肌に塗るだけで、こんなにモチモチになったのですわ」

 ……へ? シャンプーにトリートメント? 化粧水に乳液?? そんな物、この世界にあったっけ??

「そ、それって、どこで買えるにゃ??」
「「東の国の王都から送ってもらっていますわよ」」

 王都?? じゃあ違うか~。ベティが作ったのかと思ったけど……居ない!?

 さっきまでドアの隙間から覗いていたベティに目を移すと居なくなっていたので、わしは全てを悟った。

「ちょっと用事を思い出したにゃ! また夜ににゃ~~~!!」

 緊急事態だ。わしは早口で捲し立て、会議室から飛び出して二階の職員食堂に飛び込んだ。

「ベティはどこにゃ!!」
「あれ? 猫さん。帰ってたのですか」

 わしが怒鳴り込むと、窓から下を覗いていたエミリがこちらを向いたので、焦りながら質問する。

「ベティって、ここに来なかったにゃ!?」
「来ましたけど……さっき旅に出るとか言って、そこの窓から飛び下りたんですけど……ママ、何かしたんですか??」
「逃げやがったにゃ~~~!!」

 エミリの答えで、ベティは完全に真っ黒。わしはエミリの質問には答えず、窓から飛び下りてベティを追うのであったとさ。
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