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第二十五章 アメリカ大陸編其の四

712 オニヒメ頑張る、にゃ~

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 単独で第9フロアを攻略しているオニヒメだけが戻って来ないのでは仕方がない。わしは立ち上がり、腰に差した刀のつばを親指で押し上げた。

「壁を壊したら魔法書は手に入らないんだよ!」
「シラタマさん。ダメですって!」
「オニヒメちゃんなら大丈夫ニャー!」

 しかしわしが壁を斬ろうと進んだら、ノルンに止められ、リータとメイバイにも腕にしがみつかれた。

「だってにゃ~。もう我慢できないにゃ~。もうこんにゃふざけた施設、ぶっ潰してお宝だけ持ち帰ろうにゃ~」
「なんて怖いこと言うんだよ!!」

 わしと【猫撫での剣】のタッグなら、白魔鉱の壁だって床だってくり貫ける。宝箱だって鍵なんて関係ない。誰になんと言われようとも、オニヒメの命のほうが大事だ。

「この施設を粉々にされたくないにゃら、せめてオニヒメの状況を教えろにゃ」
「そんなこと、時の賢者様でも出来ないんだよ」
「強制退場、上等にゃ~!!」

 わしが刀を抜いて振り上げると、またリータとメイバイにしがみつかれて止められた。

「シラタマさんは、オニヒメちゃんのことを信用できないのですか!」
「オニヒメちゃんだって頑張ってるニャー!」
「でも……」
「一人で戦うと決めたのはオニヒメちゃんです。それを邪魔するのですか!」
「私達はクリアできると信じてるのに、シラタマ殿はオニヒメちゃんのことが信じられないニャー!」
「でもにゃ……」

 リータとメイバイの剣幕に押されて、わしのテンションが下がる。

「オニヒメちゃんなら大丈夫です。私達の自慢の娘なんですよ」
「そうニャー。シラタマ殿は訓練にあまり参加しないから知らないだろうけど、私とリータだって負けそうになる時があるニャー」
「信じて待ちましょう」
「うっ、うぅ……にゃ~~~!!」

 わしは頭を掻きむしりながらドスンと腰を落とす。

「もう10分にゃ。それ以上待てないからにゃ!」
「まったく過保護なんだから~」
「あはは。シラタマ殿は家族に甘いからニャー」

 わしが折衷案を出したら、リータとメイバイは優しく撫でてくれる。

「ゴロゴロゴロゴロ~!!」

 いや、超絶技巧の撫で回し。わしを眠らそうとしているようだが、必死にゴロゴロ言って耐えるわしであった。

「フゥ~……」
「ようやく寝たニャー」

 結局は、気持ち良すぎて寝てしまうわしであったとさ。


  *   *   *   *   *   *   *   *   *


 時はさかのぼり、滑り台を楽しく滑り下りて第9フロアに足を踏み入れたオニヒメはウキウキしていた。

「いつも守られてばかりだから、たまには一人でやりたかったんだよね~。パパもママも過保護なんだから……」

 どうやらオニヒメは、シラタマだけでなくリータとメイバイも自由に戦わせてくれない障害だと思っていたようだ。
 そうしてルンルン歩いていたら第1フロアのボス、アイアンゴブリンが現れた。

「遅い遅い~。きゃははは」

 さすがは猫パーティでしごかれたオニヒメ。アイアンゴブリンの剣を踊るように避け、白銀の扇で反撃。これも踊るように回転して振り、アイアンゴブリンの腕を斬り落とし、体を斬り刻み、首まで斬り落とした。

「ちょっと攻撃回数が多かったかな? ま、いっか」

 オニヒメは普段後衛が多いので、ここぞとばかりに前衛の戦い方を楽しんでいる。それは次のアイアンウルフとアイアンオーガでも同じこと。
 楽しそうに踊りながら斬り刻み、体の動かし方を確かめるように倒していた。


「さてと、ここからだね」

 いくらオニヒメが楽しそうに戦っているとしても、相手をナメては掛かっていない。今までのモンスターの出現方法からフロアボスが順番に出ていると気付いているので、次は複数のモンスターが出ると確信して気合を入れ直した。
 予想通りアイアンウルフの群れが現れると、ザコには複数の【土玉】をぶつけて後退させ、一気に距離を詰めて司令塔のボスに集中攻撃。
 多少時間は掛かってしまったが、ザコを近付けさせずにボスは扇で斬り刻んで倒していた。

 あとは同じ要領で一体ずつアイアンウルフを倒して、次へ。オーガキング、アイアンゴブリン三体、ゴブリンメイジ三体の、魔法ありの複数モンスターが現れたら、さらに気を引き締めるオニヒメ。

「【光盾】にゃ~!」

 オニヒメは魔法を警戒して、防御重視。三枚の光の盾を回転させて駆ける。
 しかし、ゴブリンメイジの魔法を【光盾】で防御すると、相殺させられてしまった。

「まだまだ敵は居るし、魔力は節約しないと」

 ここからオニヒメは素早く動いて魔法は避け、【光盾】は魔力消費が激しいのでどうしても避けられない時に使う模様。
 前衛のアイアンゴブリンは【土玉】で牽制しつつ、魔法を避けながらゴブリンメイジに接近。両腕だけ扇で斬り落とす。これは、杖さえ持っていなければ魔法を使えなくなるのは検証済みなので、トドメはあとからで十分だからだ。

 そうして次のゴブリンメイジへ向かい、魔法を使うモンスターが居なくなったら、一匹ずつ仕留めて行くオニヒメであった。


「はぁ~。ちょっと休憩」

 慣れない前衛の動きをしているオニヒメに疲れが見え始める。硬い物を斬っているので腕の疲労があるらしく、回復魔法で筋肉痛を取り除いていた。
 しばしモンスターの破片を椅子にして、お茶やお菓子で体力の回復をはかるオニヒメ。

「魔法が効いてくれたら楽なのにな~」

 白魔鉱のモンスターでは、オニヒメの魔法は効かないのでボヤイてしまうが、先に進むには倒すしかない。
 オニヒメは気合いを入れ直し、歩き出した。

「あ、上のゴーレムより小さい。これなら……」

 次からのモンスターは大型が予想されたが、アイアンゴーレムはおよそ半分の大きさの5メートルなので、オニヒメはホッとする。
 しかしそれでもアイアンゴーレムの腕や足は太く、苦戦をいられる。真っ先に斬り落としたい魔道具付きの腕にはジャンプしないと届かないし、いくら白銀の扇でも斬り込みは浅い。
 それならばと、オニヒメは足にも攻撃。アイアンゴーレムの右半身を集中的に攻めて、頃合いになったらまずは右腕を落とす。そして右足を斬り刻んだら、アイアンゴーレムは立ってられず、右方向にゆっくり倒れるのであった。

「だよね~」

 獣ならこれで勝負ありなのだろうが、相手は無機物。上のフロアでアイアンゴーレムの両足を砕いても、全ての指からビームを放っていたのでオニヒメもわかり切っていること。
 ここはアイアンゴーレムの魔力が切れるまで、五本の指から乱れ飛ぶビームを避け続けるオニヒメであった。

「お~しまいっと」

 ビームさえなければ、アイアンゴーレムは居間で横になっているおっさんと変わりない。オニヒメはアイアンゴーレムの手の届かない場所から斬撃を加え、頭をくり貫いたのであった。

「う~ん……もっと楽に倒せる方法はないかな~?」

 次は首も脚も太いアイアンドラゴンと言うこともあり、初っ端しょっぱなから炎を吐いて来るのでさっきより苦戦を強いられるのは確実。
 もしも足を滑らせてこけてしまったところに攻撃を受けても、誰も助けに来てくれないのでオニヒメは必死に戦い方を考える。

「よし! これでいこう!」

 考えながらアイアンゴーレムの残骸で練習したオニヒメは、元気よく歩き出したのであった。


 次なる刺客は予定通り、アイアンドラゴン。オニヒメは見付けた瞬間に魔法を発動する。

「【風猫】にゃ~」

 ドラゴンの形をした白魔鉱製のゴーレムに対して、オニヒメも負けじとゴーレム魔法。風魔法で作られた十体もの猫を走り回らせる。
 アイアンドラゴンは初めて見る魔法にフリーズしていたが、【風猫】が接近するとロックオン。踏み潰そうと追い回している。

「ラッキー!」

 これはオニヒメの予想外の展開。炎も吐かずに術者から目を離すとは思っていなかったので、この混乱に乗じてオニヒメは、アイアンドラゴンを後ろからザシュザシュと斬りまくる。
 その間も【風猫】は縦横無尽に走り回り、オニヒメは準備が整ったら後ろに跳んで、アイアンドラゴンから距離を取った。。

「【千羽鶴】にゃ~」

 オニヒメが白銀の扇をパタパタ扇ぐと、ショルダーバックから千羽には足りないが、数多くの折鶴が空を舞う。そしてオニヒメの扇に操られるかのように、千羽鶴はアイアンドラゴンを襲った。

 ドンッ! ドンドンドドンッ!

 次の瞬間には、アイアンドラゴンの首と四肢は破裂……

 オニヒメはアイアンドラゴンの首と四肢に斬り込みを入れて、そこに気功を乗せた折鶴を複数入れたので、傷が広がるように綺麗に割れたのだ。

「やったにゃ~!!」

 こうしてオニヒメの作戦は上手く嵌まったので、ピョンピョン飛び跳ねて喜ぶのであった。


 アイアンドラゴンをサクッと倒したオニヒメは、小休憩。高級肉の串焼をムシャムシャして体力と魔力を取り戻す。

「次はいろんな魔法をぶっぱなすんだよね~。それと毒もあるんだった。マスクは先にしておいたほうがよさそう」

 ヤマタノオロチゴーレムの攻略法を考え、空気魔道具内蔵マスクも付ければ準備完了。オニヒメは最後の試練に挑む。

「【風猫】にゃ~」

 ここも風魔法で作られた複数の猫で陽動から。しかし、ヤマタノオロチゴーレムは炎のブレスを広範囲に放った。

「わっ! あちちち。【水玉】!!」

 【風猫】と炎は相性抜群。ただでさえ強力な炎なのに、【風猫】が掻き回すのでさらに大きくなり、オニヒメの着物を焦がす事態となった。

「パパから貰ったのに……」

 水を被って消火は出来たようだが、着物が所々焼け焦げてしまったので、オニヒメは涙目。意外と気に入っていたようだ。

「もう! 【土猫】にゃ~!!」

 安全策の土魔法で作られた猫ならば、ヤマタノオロチゴーレムの放つ炎を抜けるのはわけがない。しかし次の攻撃は風のブレス。【土猫】は進めなくなる。

「【突風】にゃ~~~!!」

 負けじとオニヒメも風を起こして【土猫】の援護。若干オニヒメが強かったのか、複数の【土猫】はヤマタノオロチゴーレムの足元に潜り込めた。

「よし! もらったにゃ~~~!!」

 ようやくヤマタノオロチゴーレムの八つの頭は【土猫】にロックオン。四方八方に逃げ回る【土猫】を狙って、ヤマタノオロチゴーレムは口から魔法を撃ちまくるので、その隙にオニヒメは白銀の扇で斬り込みを入れる。
 毒が見える場合は【突風】で吹き飛ばし、【土猫】が倒れた場合は新たに足して、全ての首と脚に斬り込みが入った頃に、オニヒメは距離を取った。

「これで最後! 【千羽鶴】にゃ~~~!!」

 オニヒメのショルダーバックから飛び立った数多くの折鶴は、ヤマタノオロチゴーレムの首や脚に作られた亀裂に入り込み、気功の爆発を引き起こして八つの首と脚が同時に折れる。

「フゥ~……疲れた。一人じゃ大変だね」

 こうしてオニヒメの冒険は、多少疲れたものの危なげなく終了するのであった。
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