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第二十五章 アメリカ大陸編其の四
709 罠だらけにゃ~
しおりを挟むリータ達がアイアンゴーレムを粉々にしたら、宝箱部屋に移動。ノルンから時の賢者の最強装備が入っていると聞いているので、開けるのは鼻息の荒いイサベレに任せてみた。
「ローブ??」
宝箱の中にはローブだけ。劣化も無くそのままの形で残っているのも驚きなのだが、気になる事はあるのでノルンに質問。
「一個だけしか入ってにゃいの~?」
「そうだよ。時の賢者様の最強装備は、杖、ローブ、帽子、靴、マント、アクセサリー、計六個あるんだよ」
「と言うことは……このフロアを六回クリアしにゃいとコンプリートは無理ってことにゃ?」
「この下のフロアも装備品だから、三回の挑戦は必要なんだよ」
「一回で終わらせてくれにゃ~」
オタク心を刺激する設定は勘弁して欲しい。わしはオタクではないから一回でいいのだが、時の賢者オタクのイサベレがめっちゃ撫でて来るから、最悪わしが付き合わないといけないから面倒臭いんじゃもん。
時の賢者の装備品は二個揃ってから確認する事にして、二度目の挑戦はどうしようかと話し合うリータ達と、一人でも挑戦すると鼻息荒いイサベレを連れて下の階に移動しようとしたら、誰よりも鼻息の荒いコリスが通せん坊する。
わしはまだお腹がすいていないので時計を見たら、11時半。お昼には少し早いが、第7フロアをクリアしてからだと昼食が遅くなると思って止めたっぽい。
なので、ちょっと早いがランチ。お腹いっぱいになったら、第7フロアの攻略を開始する。
このフロアも、第6フロアと代わり映えしないので、しばらく進んだら戦闘の全てはわしの担当となった。リータ達も、硬いだけの敵に飽きて来たようだ。
ただ、バックアタックのモンスターが現れるようになったので、そっちはリータ達がサクッと処理。探知魔法に反応が無かったからどうやって出て来たのかと聞いたら、壁がパカッと開いたとのこと。
その事をいち早くイサベレとオニヒメが気付いていたので、その謎を聞こうとノルンが二人に付きまとってくれたので、わしはラッキー。うっとうしかったんじゃもん。
わしが戦闘で大活躍する事によって、攻略速度はアップ。第6フロアより早くにボス部屋へと辿り着いた。
「にゃ!? おっきにゃドラゴンにゃ!!」
今回のフロアボスは、10メートル以上あるアイアンドラゴン。なかなかカッコいいのでわしはテンション上げながら振り返った。
「……にゃにその顔??」
すると、リータやメイバイ達は浮かない顔。
「喜んでいるところ悪いんですけど、そろそろ戦いたいな~?」
「もうだいぶ戦ってないから暇なんだニャー? 譲って欲しいニャー??」
「ねえ~? いいでしょ~??」
「う、うんにゃ……」
ドラゴンならばわしだって戦いたかったのだが、皆が甘えて来たので譲ってしまう。しかしその後はいつも通り。嬉しそうにアイアンドラゴンに突っ込んで行った。
「「「「「思ったより弱かったにゃ~」」」」」
結局は残念な結果。強力な炎を吐く以外は、脚や首が太くて攻撃が通り難かっただけで上に居たトカゲゴーレムとたいして変わらなかったから、アイアンドラゴンを粉々にしたのにガッカリするリータ達であったとさ。
宝箱部屋に入り、イサベレが宝箱を開けたら、時の賢者の最強装備も残念な結果。
「帽子にゃ~? 杖がよかったにゃ~」
杖ならば攻撃魔道具が付いていると思うが、鍔の広い三角帽ならば面白味に欠ける。しかし、イサベレの鼻息が荒いので、上のフロアで手に入れたローブと共に調べてみる。
「魔法陣が描かれた板みたいのがにゃん個も付いてるから、にゃにかしらの効果があると思うんにゃけど……ノルンちゃんはにゃにか知ってるにゃ?」
「帽子には防御力上昇と魔物避けだよ。ローブにも防御力上昇だよ。あと、浮遊とシールドだよ」
「おっ! 意外といい効果にゃ~」
「意外とじゃないんだよ! 凄いんだよ! ブッコロだよ!!」
「ごめんごめんにゃ~。とりあえずイサベレ、着てみてにゃ~」
電撃効果のある角を生やしてわしを攻撃して来るノルンをひょいひょい避けていたら、イサベレはその場で服を脱いでお着替え。男のわしが居るのに思い切りがいいなと考えながらノルンを宥めていたら、着替えは終わった。
「ちょっと大きいかにゃ?」
「ん。これで魔法陣に魔力を注げばいいの?」
「そうだよ」
「ちょっ、一個ずつ検証しようにゃ~」
ローブの内側には、左腕、右腕、胸に魔法陣が描いてある板が付いているので、イサベレはその順番で魔力を流すと、左腕はよくわからない。
なので、防御力上昇と受け取って、リータのパンチはわしが阻止。実験に使うには攻撃力あり過ぎじゃろう。とりあえず、わしの渡した木の棒で殴らせてみたら、棒は木っ端微塵となった。
「痛みや衝撃はどうにゃ?」
「痛みはゼロ。衝撃は……感覚的には半分以下」
「おお~。いい魔法だにゃ。にゃんとか覚えたいにゃ~。次、行ってみようにゃ!」
右腕は浮遊だったので、これも魔法書から検索する候補。数秒しか浮いてなかったが使いどころはあるだろうし、わしの魔力量なら何時間だって飛べるはずだ。いまでもちょっと飛べるけど……
真ん中は魔力を流すと光のベールが現れたから、女王にあげたティアラと同じ効果だと思われるので、リータがパンチ。
「せめてメイバイにしてにゃ~」
リータの攻撃力なら、光のベールは木っ端微塵。防御力の上昇しているイサベレが両腕で防御しても痛そうにしていた。
帽子もいちおう確認したら、左側の魔法陣が防御力上昇。右側に魔力を流すと……
「「くさいにゃ~!」」
魔物避け。わしとコリスはのたうち回った。
「何もにおいなんてしませんけど?」
「私の鼻もニャー」
「イサベレ! もうやめてにゃ~」
魔物避けはにおいを発する魔法のようだが、リータ達には無臭のようなので、ノルンに説明を求める。
「コリスは魔物だからだよ。シラタマは猫でも、猫の魔物と確定したんだよ」
「猫と魔物の違いはなんにゃ?」
「猫は猫、魔物は魔物なんだよ」
チッ……肝心の事は知らないなんて、ガイドさん失格じゃな。わしは妖怪猫又じゃから魔物で間違いないけど……ま、黒い獣と白い獣用ってとこかな?
魔物避けはわしに嫌われるから、イサベレも使いたくない模様。いちおう防御力上昇も確認したら、第8フロアへと移動した。
「あと3フロアで完全制覇なんだよ。まだ誰も一番下のフロアまで辿り着いた猛者は居ないんだから、頑張って死ぬんだよ~?」
「そこは頑張ってクリアしようって言おうにゃ~」
「設定なんだよ」
「じゃあ、今までこのダンジョンに挑戦した人は居るにゃ?」
「記念館に入った人も、シラタマ達が初だよ」
「だろうにゃ~」
こんなアマゾンの奥地にあっては原住民が辿り着くのもしんどい。命辛々辿り着いてもピラミッドに攻撃されたら人間なんて消し飛ぶので、生き残りが居ても、もう二度と近付きたくなくなるだろう。
「とりあえず、しばらく真っ直ぐみたいにゃし、注意して行こうにゃ~」
「「「「「にゃっ!」」」」」
わしが指揮を取ったら、珍しくリータ達の気合いの入ったいい返事。でも、わしの気が抜けるから、その返事はな~。
わしはややテンションは下げ、広めの道を歩きながらノルンに質問。
「このフロアは、にゃにが手に入るにゃ?」
「時の賢者様の手記だよ」
「お~。やっとにゃ~」
わしが欲しいド本命がやって来たので、テンションアップ。イサベレ達と盛り上がっていたら、横から矢が飛んで来たのでイサベレが掴んでくれた。
「ありがとにゃ」
「ん」
「見えないから、これだけが危険だよにゃ~」
「ダーリンなら当たっても死なない」
白い矢は周りと同化していて避けにくいので何発か喰らったが、速度がそこまでないので当たっても痛くない。もしも当たっても警戒できるので、【光盾】で全員を守って進めば、四方八方から連続で放たれても簡単に抜けられるのだ。
「にゃ? 後ろでにゃんか音しにゃかった?」
「しましたね。念のため戻ってみましょうか」
しばし歩き、変な音が鳴ったのでリータに相談したが、探知魔法を使って先行で調べてみた。
「あ、大丈夫にゃ。後ろを完全に塞がれただけにゃ」
「それなら大丈夫そうですね。あははは」
「だにゃ。にゃははは」
「大丈夫そうですね。にゃははは……じゃないんだよ!」
のほほんと会話するわしとリータに、何故かノルンがツッコンで来た。
「にゃに~?」
「帰り道が塞がれているんだから焦るんだよ!」
「にゃんで~?」
「フンッ。もう焦っても遅いんだよ」
「まだ焦ってもいないにゃ~」
「アレを見るんだよ!!」
「にゃ~~~??」
ノルンは一人で喋り続けて通路の先を指差すのでそちらを見たら、黄色いガス状の物が迫って来ていた。
「フフン。アレは一呼吸で体が痺れ、二呼吸で倒れ、吸い続けたら死に至る毒なんだよ」
「ご説明ありがとにゃ。【土壁】にゃ~」
「ズルイんだよ!」
ノルンにズルイと言われても、死に至る毒ならば防御して当然だ。とりあえず、少し先の通路は土の壁で完全に塞いで、イサベレ達と話し合う。
「やっぱその危険察知ってのは、弱毒には反応が鈍いのかにゃ?」
「ん。こんな弱点があったなんて勉強になる。それで……どうやって毒を抜けるの?」
「ノルンちゃんが親切に教えてくれたし、マスクで乗り切ろうにゃ~」
ノルンの説明では呼吸をしたら体に悪いようなので、皆には空気魔道具内蔵のマスクを渡してから【土壁】の解除。けっこう大量のガスが溜まっていたから、ここを通るのは少し心配。なので、【突風】で吹き飛ばして進んでみた。
「くっ……クリアだよ……」
「じゃあ、もう少しマスクをしたまま進もうにゃ」
「もう大丈夫って言ってるんだよ! チッ……」
ノルンの言葉なんて信じられない。てか、舌打ちしていたから、毒ガスゾーンは抜けていなかったようだ。
さらに歩いていたら、また弓矢が壁から飛んで来たので、【光盾】に守られて前進。このゾーンを抜けたら、さすがにガスのような物は黙視できなかったので、ノルンに確認を取る。
「さっきの毒ガスって、この施設から排出されるにゃ?」
「いま、空調が全開なんだよ。もう5分もしたらこのフロアから無くなるんだよ」
「それは本当みたいだにゃ。マスク取っていいにゃよ~?」
イサベレとオニヒメの微妙な感覚も無くなっっていたので、ノルンの言葉を信じてわし達はマスクを外す。
「それにしても、このフロアは分かれ道どころかモンスターも出ないにゃ。時の賢者はにゃにを企んでるにゃ?」
「すぐわかるんだよ」
「大きにゃ玉が転がって来るのかにゃ~?」
「なんでわかったんだよ!?」
「当たったんにゃ……」
「なんてだよ。そんなわけないんだよ」
「どっちにゃ~」
ノルンとの掛け引きはわかりづらいが、可能性を踏まえて歩いていたら、後ろからゴロゴロと聞こえて来たのでリータがボケる。
「シラタマさんじゃないですよね?」
「誰にも撫でられてないにゃ~」
「冗談ですよ。さっき言ってた大きな玉が転がって来たみたいですね。どうします?」
「う~ん……」
悩んでいても仕方がないので、ここはノルンに質問。
「聞き忘れてたんにゃけど、罠って壊しても大丈夫にゃ?」
「壁や床等に設置されている物はダメなんだよ。そこから離れた物は大丈夫だよ。でも、ここの玉は大きいから破壊は無理なんだよ」
「あ、やっぱり玉が転がって来てるんにゃ」
「ノーコメントだよ」
これだけ証拠が揃っているのにノルンはとぼけるので、しばし止まって待っていたら、予定通り大きな玉が転がって来た。
「誰がやるにゃ~?」
「任せます」
いちおう聞いたらこれもわし担当らしいので、タイミングを見計らって玉の中心にネコパンチ。これで玉に亀裂が入って止まったのだが、放っておいたらまた転がって来そう。なので、刀で斬って、平らな部分を作ってから先に進む。
「そこ、落とし穴」
「ここかにゃ? あ~……大きな落とし穴だにゃ」
イサベレが教えてくれたので、わしは軽く踏んで落とし穴を作動させる。すると通路いっぱいで長距離の槍付き落とし穴が出現したので、ノルンから確認を取る。
「ひょっとしてにゃけど、玉を使ってここに落とそうとしてたにゃ?」
「そうだよ。普通、大玉に追われてこの落とし穴に落ちて死ぬんだよ。なのに、どうしてシラタマ達は罠に嵌まらないんだよ」
「嵌まったら死ぬからにゃ~」
死ぬ危険があるのなら、わし達の行動は100%正しい。しかしノルンの言葉を信じるなら、時の賢者は100%わし達を殺しに掛かっているので、本当に宝を渡す気があるのか不思議に思うわしであった。
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