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第二十五章 アメリカ大陸編其の四
708 大型モンスターの出現にゃ~
しおりを挟む第5フロアで手に入れた和風の鎧兜は、飾りに使われている金や鉄は白く変色しているがその他は千年前の色のまま残っているので、グフグフ笑いながらわしの次元倉庫へ。
これは歴史的資料としては完璧なので、玉藻に見せて誰が使っていたか聞けばわかるはずだから、歴史好きからしたら笑いが漏れても仕方がない。
しかし、リータとメイバイが目を「キラーーーンッ!」と光らせていたので、次のボス戦もこれを引き合いに出されて、わしの参加は止められそうだ。
それはまだ可能性なので、次のフロアはいっぱい頑張って、わしにもボスを回してもらおう。
第6フロアに着いたら、わしは意気揚々と前進するのであっ……
「にゃ!? これにゃに!?」
「落ちる天井だよ」
残念ながら、第6フロアの入口には、初見殺しの落ちる天井。わしはうっかり気を抜いてしまい見事に引っ掛かったので、通路いっぱいの天井を両手で支える形になってしまった。
「とりあえず通っちゃってにゃ~」
「えっと……失礼します」
「そっちにゃ!?」
別に重くもないので皆には先に進んでもらおうとしたら、わしは身長が低いので、どうやらリータ達は上を通ったほうが進みやすいとのこと。
特にコリスは大きいので通れないから仕方がないんだけど、皆は容赦ない。わしが支えている石の塊をズンズン踏んで、乗り越えて行くのであった。
「パパ。ありがとう」
「にゃ~。オニヒメはいい子にゃ~~~」
オニヒメはわしより少し背が高いぐらいなので、屈んで潜り抜けてくれた。その途中で感謝をしてくれたので、わしの涙腺が緩むのであった。
「チョロッ……」
オニヒメが何か言っていたが、聞こえないわしであったとさ。
皆が通り過ぎると、わしは一瞬で皆の位置まで移動。ドーンッと鈍い音が響く中、リータ達はわしの顔を見ると、先程の行為は皆も悪いとは思っていたのか、半笑いで感謝してくれた。
「いまさらにゃんだけどにゃ~……わしが通り過ぎるのを待ってから、上を通ったらよかったんじゃにゃい?」
「プッ……本当ですね」
「プププッ……通れって言われたからニャ」
「「「「「プププププププ」」」」」
「にゃんでもないにゃ~。忘れてくれにゃ~」
過ぎた事をグチグチ言うわしではない。メイバイ達も悪いと思っているから笑いを堪えているはずだ。これ以上触れると、笑いのダムが決壊するから触れられないとも言えるけどな!
「また一段と道が広くなったにゃ~……大型のモンスターが出るのかにゃ?」
皆が笑いを堪える為に息を整えている間に、わしは先行して道の確認。それからノルンに質問してみた。
「ノーコメントだよ」
「にゃ? いつもにゃら教えてくれたにゃ~」
「ここからヒントは言わない設定になってるんだよ。その代わり、このフロアで手に入るお宝を教えてあげるんだよ。時の賢者様の最強装備だよ」
「それって、一番上の階ににゃかった?」
「アレはレプリカなんだよ。お宝に目が眩んで、無理して進んで全滅すればいいんだよ」
時の賢者の装備ね~……レプリカを見る限り、わし達の装備より遥かに劣ってたんじゃけど……イサベレの鼻息が荒いな。
「欲しい! 東の国にちょうだい!!」
「う~ん……そんにゃのでいいにゃ?」
「時の賢者様の装備なのに、そんな物って……」
「だって、さらに下には魔法書と手記があるんにゃよ?」
「あ……それも欲しい」
「強欲だにゃ~……わかったにゃ。女王にふっかけまくって売ってやるにゃ~」
「どっちが強欲??」
タダで貰おうとしていた奴に強欲とか言われたくない。
「ふむふむ。シラタマは金に意地汚いんだよ」
あと、マザーにわしのデータを送信しているノルンにも言われたくない。こう見えて太っ腹なんだ。
「お腹に体当たりしにゃいでくれにゃい?」
「ふむふむ。たしかに太った腹なんだよ」
「太ってないにゃ~。丸いだけにゃ~」
ゴーレムのクセにわしの心を読んで何度もお腹に突撃するノルンに「これでもやせ型」だとデータの改竄が出来ないかと頑張っていたら、リータに首をムンズと掴まれてダンジョン攻略の開始。
このフロアはわしも頑張ろうと思っていたのだが、リータの超絶技巧の撫で回しを喰らってウトウト。わしが「ハッ!」と気付いた時には床に転がっており、リータ達はデッカイ亀と戦っていた。
「ざっくり5メートルってところかにゃ?」
「よくわかったんだよ。重量級のアイアンタートルに踏み潰されたらいいんだよ」
「出来たらいいにゃ~」
ノルンはいまだにわし達を殺したいようだが、重量級より速さを優先しない事にはリータ達の命に掠ることはないだろう。
そのリータ達はと言うと、アイアンタートルの口から放たれた水のビームを盾で防いでいる。
「てか、踏み潰すんじゃないにゃ?」
「ウォーターカッターで斬ってから踏み潰すんだよ」
「まぁ……大筋は合ってる……のかにゃ~?」
「合ってるに決まってるんだよ」
ノルンの基準では合ってるらしいので、そのまま見学。
リータ達は盾に隠れて前進していたが、アイアンタートルの魔法はこれしかないようなので、面白味に欠けたのかさっさとトドメ。メイバイ、イサベレ、オニヒメが盾の後ろから飛び出し、三本の脚を狙う。
アイアンタートルの脚は太いので白銀の武器でも一撃とまでいかないから、二撃、三撃と攻撃を加えている。
三人が攻撃を始めると、コリスとリータはふた手に跳んで、アイアンタートルがどちらに攻撃しようと悩んだ隙に、前脚と顔に攻撃。
アイアンタートルの前脚には、コリスの両手両尻尾に気功を乗せたリス百裂拳。ヒットした場所から逆側がガンガン欠けて行っているので、すぐにでも折れそうだ。
リータは軽く跳んでから、アイアンタートルの頭を鉄拳制裁。気功と白魔鉱の床に挟まれたせいで、一発でアイアンタートルの首に亀裂が入った。
イサベレ、コリス、メイバイと順番にアイアンタートルの脚を砕いたら、メイバイはオニヒメの援護に向かい、イサベレとコリスはリータの元へ。
メイバイとオニヒメも脚を砕いたら、頭をタコ殴りで砕き終わって甲羅に乗っているリータ達の元へと合流した。
皆は何やら話し合い、わしとノルンを手招きして呼んでいたので、わし達もアイアンタートルの甲羅に飛び乗った。
「これって、もう死んだということでしょうか?」
「ノーコメントだよ」
「てことは、生きてるみたいだにゃ。時間掛けるのも馬鹿らしいし、わしがやろうかにゃ?」
「お任せします」
リータ達の集中攻撃なら数分で粉砕できるだろうが待つのも面倒なので、わしが【猫撫での剣】で輪切り。これで確実に死亡判定だろう。
「無駄な努力、ご苦労なんだよ」
「死んでるにゃら意味深にゃこと言うにゃよ!!」
「精神攻撃なんだよ」
ノルンの罠に嵌められたわしは、またイライラ。メイバイに抱かれて次に進むのであった。
このフロアは大型のモンスターだけでなく、小型から中型のモンスターがパーティを組んでいたりしてわし達の道を塞ぐ。
ただし、わしはメイバイの撫で回しを喰らって眠っていたので、その話を聞いたのはあとから。大型モンスターを倒すのが面倒になったリータ達に起こされてからだ。
小型や中型ならリータ達の攻撃でも一発なのだが、大型は白魔鉱が大量に使われているので時間が掛かるから、わしに御鉢が回って来たのだ。
わしは頼られて嬉しいので、巨大なトカゲみたいなモンスターを見付けた瞬間、ダッシュで三枚下ろし。巨大な饅頭みたいな形のモンスターも、ノリノリで輪切りにしてやった。
するとリータ達からお褒めの言葉。モフモフ撫でてチヤホヤしてくれるので、わしは気分がいい。
「いい加減、いいように使われていることに気付くんだよ」
「そんにゃことないよにゃ~??」
「「「「「はいにゃ~」」」」」
「ほらにゃ?」
「ふむふむ。シラタマはチヤホヤされると弱い……だよ」
ノルンがリータ達を疑った瞬間「ギクッ」とした顔をしたのは気にせいだろう。気のせいなのだから、チヤホヤはわしの弱点ではないのでデータは送信しないで欲しいな~?
真実を知りたくないわしの大活躍で、このフロアも大詰め。ボス部屋へと辿り着いた。
「おっきいですね~」
「アレってゴーレムってやつニャー?」
「だにゃ。東の国の本にも載ってたにゃ~」
今回のボスは、ゴツゴツした岩肌の真っ白なアイアンゴーレム。身長が10メートル以上あるので、このフロアのボスとしては十分貫禄がある。
「じゃ、わしがちゃちゃっと仕留めるにゃ~……にゃ?」
大型はわしの担当なので刀を抜いて歩いて行こうとしたら、リータとメイバイに尻尾を掴まれた。
「あれだけ倒したんですから、シラタマさんはお休みです」
「そうニャー。私達の番ニャー」
「パパ、順番抜かしはダメだよ」
「にゃ……うんにゃ。頑張ってにゃ……」
リータとメイバイだけでなくオニヒメにも言われたからには、わしの順番ではないのだろう。少し腑に落ちないが、わしは後ろで腕を組んで見守る。
「これでシラタマがいいように使われてるってわかったんだよ?」
「リータ達はそんにゃことしにゃいもん!」
「ふむふむ。シラタマはお人好し……お猫好し、もしくはバカなんだよ」
「バカって言うほうがバカなんにゃ~!!」
ノルンが真実を語ったりイラつさせるので、お猫好しと言い直した事に気付けないわしであったとさ。
わしとノルンが喧嘩していたら、アイアンゴーレムとの戦闘はとっくに始まっており、リータ達はヒットアンドアウェイで足ばかりを攻撃。アイアンゴーレムの動きは鈍いので、リータ達を捕まえることすら出来ずに両足が砕け散った。
「集合です!」
「「「「にゃっ!」」」」
追撃を仕掛けていたリータ達であったが、アイアンゴーレムが無理矢理体を起こしたら、全員集合して盾の後ろに隠れる。
「【光盾】にゃ~」
その直後、わしの元へも攻撃が来たので冷静に対応。アイアンゴーレムの指のひとつひとつから高出力のビームが乱射されたので、わし達は防御体勢を取ったのだ。
「変わった魔法も持ってるんだよ」
「にゃんでわしから離れているにゃ?」
「ノーコメントだよ」
「安全地帯とかかにゃ~?」
「近付くなだよ!」
ノルンが定位置のわしの肩から離れていたので後ろを取ったら逃げ回る。やはり安全地帯で間違いなさそうなので、嫌がらせついでに追い回す。
そんな事をしていたら、リータ達はアイアンゴーレムの魔力切れを待たずに突撃。ビームを掻い潜り、アイアンゴーレムをタコ殴りにして粉々に砕いたのであった。
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