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第二十四章 アメリカ大陸編其の三 南米で遺跡発掘にゃ~

697 クスコ観光にゃ~

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 クスコの宮殿で行われた宴は、盛り下がりまくったので早くも終了。わし達の宿泊場所に、おさのカパックが宮殿の一室を貸してくれる流れになったが、部屋を見たら硬そうなベッドだったのでキャンセル。
 別の中庭を借りてキャットハウスで眠る事にした。カパックは何か言いたげであったが、明日は早くに起きて観光したいから「ガイドさん、よろしく~」と告げて追い返した。

 そして夜食にお風呂にお布団ダイブ。明日も早いから寝てしまおうとしていたら、イサベレがやらしい手付きでわしを触って来た。

「だからそこは触るにゃと言ってるにゃろ~」
「やめてもいいけど、今日のこと女王様に報告する」
「勝手にしろにゃ~。どうせ秘密にしても、イサベレのせいでバレるしにゃ。わしの秘密も聞かれたにゃろ?」
「ききき、聞かれてないない」
「嘘がバレバレにゃ~~~!!」

 カパック達を脅しまくったのはたしかにやり過ぎたと思うが、これもそれも、マチュピチュを救うため。ひいては、猫の国に入れないためだ。
 わしはイサベレの魔の手を逃れ、リータとメイバイの隙間に埋まって眠りに就くので……

「これなら簡単にクスコも猫の国に入ってくれるんじゃないですか?」
「アルパカちゃんも猫の国入りニャー!」
「早く寝ようにゃ~」

 クスコまで猫の国に入れようとするリータとメイバイと戦いながら眠りに就くのであった……

「アルパカにゃら、つがいで貰えばいいんじゃにゃい?」

 その深夜、皆が寝静まった頃に目覚めたわしはナイスアイデアを思い付いたのに、誰も聞いていないのであったとさ。


 翌朝は、準備を済ませたら宮殿をウロウロ。渡り廊下を歩いていた人にカパックの元へ案内してもらい、ガイドさんを待つ。
 カパックに朝食に誘われたが、すでに終えていたのでガイドを待つ間、クスコ料理はコリスの頬袋へ。そうして世間話しながら待っていたら、ガイドをしてくれる女性がやって来た。
 これでカパックは御役御免。朝食は途中だったけど、わし達はクスコ観光を始めるのであった。

 最初の観光地は、この宮殿。元の世界の記憶には無かった宮殿なので、隅々まで見せてもらった。ここも軍事機密モリモリだろうが、ガイドさんはわしのお願いは全て叶えろと言われていたと思われる。

 だって、どんなに硬い建物を建てたとしても、わしに壊されるのが目に見えてるもん。そんな事を想像させるほど、クスコの民はわしに屈服しているのだ。

 続きましての催しは、コリカンチャと呼ばれる黄金に輝く神殿。ここはスペイン人に壊されて土台しか残ってなかったのに、いまも健在でわしは感動だ。
 ただ、カメラ係のメイバイ以外つまらないらしく、わしが石組を真剣に見ていたらリータがモフモフして来た。

「建物のほうが綺麗なのに、さっきから何をしてるのですか。壁ばかり見て写真を撮っていますけど、そんなに珍しい物なのですか?」
「そうにゃ。この窓にゃんて芸術物にゃ~。向こうの石組と同じ高さで作られているのがわかるにゃろ~?」
「う~ん……それが何か??」
「これは、そんにゃ昔に、精巧に石を削るすべを持っていたと言うことにゃ。どうやってこんにゃに綺麗に石を積んだんにゃろ~?」
「魔法でしょ」
「にゃ……」

 わしがうっとりして語っているのに、リータは酷い。冷たい。ロマンがない。なのでガイドさんに「にゃ~にゃ~」質問して製造方法を聞き出したら、リータもようやく興味を持ってくれたのであった。

 次もリータ達には悪いけど、わしの趣味。石垣に嵌め込まれた12角の石や14角の石をしげしげと見て写真撮影。そしてピューマの石もパシャリ。

「そんな石垣まで撮る必要あるのですかね~」
「ほら、これ、ピューマに見えるにゃろ?」
「ピューマって、猫みたいな動物ですよね? ただの石にしか見えません」
「ガイドさ~ん! これのどこがピューマにゃの~~~!!」

 リータと同じくわしも見えないので、ガイドさん頼り。何回聞いても何度見ても石垣にしか見えないので、わし達は首を傾げて離れるのであったとさ。


 適当に案内してもらっていたら、もうお昼。ちょうど大きな岩で作られた石垣を見学していたので、見晴らしがいいからここでランチ。ガイドさんにも振る舞ったら「超美味しいんだけど~!」て、叫んでた。
 午後からも観光したかったのだが、現代人なら喜ぶ街並みでもリータ達にはどこにでもある街並みと変わりないので、わし以外乗り気じゃない。なので、次回に持ち越し。べティと一緒に来たら、たぶん楽しく観光が出来るだろう。

 ランチを終えてダラダラしていたら「ちょっと体を動かそう」と誰かが言い出したので、皆でその辺を走ってみた。しかし、オニヒメ以外は元気なもの。

「本当に空気が薄いのですか?」
「オニヒメは息切れしてるにゃ~。苦しかったにゃろ~?」
「うん。ママ達がおかしいよ」
「う~ん……あんまり違いがわからないニャー」
「本当だって~」

 わしを信じてくれるのはオニヒメだけ。身体能力が一番低い上に、リータやメイバイ達の速度について行こうと頑張ったから、疲れたのであろう。
 この結果は、マチュピチュに数日滞在したからかもしれない。二千メートルの場所で体を慣らしてから三千メートルのクスコに来たから、誰も高山病の症状が出なかったようだ。

 わしが予想を語っていたら、いらぬ情報を入れてしまったので必死に止める。

「リータ達にゃら肺活量は、もう増えないにゃ~」

 そう。元の世界では高山トレーニングなんてあると言ってしまったら、訓練熱に火がついたのだ。

「あ……たしかにいつもより疲れますね」
「オニヒメちゃんは正しかったニャー」
「そろそろ晩ごはんにゃし、やめにゃい?」

 わしも巻き込まれ、リータ達の激しい訓練に付き合わされて日が暮れるのであったとさ。


 夜には会食を誘われたけど断って、疲れ果てたリータ達の介抱。キャットハウスで食事とお風呂を済ませて全員にマッサージをしてあげたけど、コリスへのマッサージは効いているのかわからない。

 せめて人型にしてからやればよかった……「ホロッホロッ」と嬉しそうじゃし、まぁいっか。

 そして翌日は、わしだけ別行動。今まで先送りにしていたカパック達の相手をしてあげる。リータ達には……観光しているように言っておいた。

 お弁当を大量に入れたキャットケースは何に使うのですか? 観光して来るんだよね? 遠くに行っちゃダメだからね? わしも行こうか? それは~……ダメなんじゃ~。もしもの時は、狼煙のろしをあげてね?

 戦闘も観光らしいので、わしの言い付けは守るみたいだ。守ってくれると信じてる。無事、帰って来てくれ……

 こうなっては、もう祈るしかない。わしが救助に向かわないで済むように祈りながら、会議室のような部屋に入るのであった。


 カパック達の相手とは、猫の国の説明。わしが王様ってのは半信半疑のようだが、アルバムを見せて説明して行く。それにプラスして、わし達の土地には国家が多数あると写真を使って説明してあげた。
 もちろん写真初心者は驚きの連続で、驚きのほとんどは猫の国と日ノ本。だって、獣が立って歩いてるもん。

 各国の王様の写真も並べた頃には落ち着いたので、ようやくカパック達にも質問する余裕が生まれたようだ。

「こんなに国があって、戦争にならないのですか?」
「昔は小競り合いがあったらしいけど、詳しく知らないからにゃ~……ま、いまはどの国も良好な関係みたいにゃよ?」
「はあ……それなら黒い森も生まれないのですね」

 ん? まるで黒い森の生まれる理由を知っているような言い方じゃな。気になる……ちょいとジャブを入れてみるか。

「戦争と黒い森が、にゃんで関係しているにゃ?」
「遠い昔の話なんですが、この地に預言者が現れたそうです」

 カパックの話では、およそ千年前に預言者が各地に現れ、戦争を起こすなと言って回ったそうだ。ただ、その当時は何を言っているのかわからなかったし、文字を持っていなかったので、しだいにその記憶は薄れて行った。
 預言者が現れた数百年後、クスコ王国が大戦を引き起こし、それと同時に黒い森が現れた事によって、記憶の彼方に置き去りにされていた預言者を思い出したそうだ。
 クスコ王国亡きあとも国家にしなかったのは、国を作ってしまったらクスコも黒い森に呑まれるのではないかと思って、部族の集合体と言っていたらしい。


 カパックの長い昔話を聞き終わると、わしは口を開く。

「にゃるほどにゃ~。その預言者の名前は伝わってないのかにゃ?」
「部族によって呼び名が違っていますので、どれが本当の呼び名か……私達は」

 カパックから預言者の名前を発表し、部族の全てから聞き終えたが、わしの思っている名前が出て来なかった。

 ツィツィミメにチャルチウトトリンにミクトランテクトリ……ちょっと名前の由来、教えてくんない? あ、全部災いを呼ぶ神の名から来てるのですか。ポチテカは? あ~。商人さんですか。それが一番マシですね。

「まぁいいにゃ。その預言者は、わし達の土地では時の賢者と呼ばれていた者にゃ」
「時の…賢者……ですか?」
「この砂時計も一緒に配っていたはずなんにゃけど、見覚えないかにゃ?」
「はあ……どこかで見たような……あっ!!」

 わしの出した砂時計は現存する物は無かったが、お伽噺程度には時間を計る物があり、さらにはそのような絵も残っていたそうだ。
 ここクスコでも、宮殿の中に巨大な砂時計があったそうだが、クスコ王国の滅亡と同時に壊され、直すすべも無かったので完全に撤去したとのこと。
 ただし、その部屋には変わった石が置いてあったから、それだけは取っておいたので持って来てくれた。

 カパックの差し出した黒い石は幾何学模様が刻まれており、美術品に見えなくないが、わしには違うものに見える。

 これ、魔法陣じゃよな? ノエミが使っていたのに似てる。それに素材は黒魔鉱じゃ……てことは、これ事態が魔道具になっているのかな?

「これって、ちょっと振ってみていいかにゃ?」
「はい。壊れる物でもありませんし……あ、中には何か入ってるような音がしますよ」
「どれどれ~?」

 もうすでにわしの予想の答えは言われてしまったが、興味があるので振ってみたら、カラカラと音が鳴った。

「あ~。本当だにゃ。じゃあ、これは開けられる物なんにゃ」
「開ける?? 繋ぎ目も何も無いですけど」
「うちではこれのことを魔道具と呼んでいてにゃ。魔力を流せばにゃにかしらの反応があるはずなんにゃ。ちょっとやってみていいかにゃ?」

 このお願いには、さすがに貴重品なのか許可が下りないので、お菓子をバラ蒔いて無理矢理許可をもらった。

「さてさて~……にゃっと……あれ??」

 しかし黒い箱に魔力を流しても、うんともすんとも言わない。

「キーワード……鍵となる呪文も必要なのかにゃ~? にゃんか思いつかないかにゃ?」
「何も……」
「にゃんでもいいんにゃ~。ここの言葉で、開けゴマとか……にゃ??」
「開きましたね……」

 開けゴマでいいんか~い! てか、日本語でって、現地の人に開けさせるつもりがないな。

 まさか雑談しているだけで、黒い箱がガチャンと開くとは思っていなかったので、わしは驚きを隠せないのであった。

「ゴ、ゴホンッ! まぁ中身も確認してみるにゃ~」

 箱の中身は石板だけ。そこにも日本語が刻まれていたので、これは転生者に向けたメッセージなのだろう。

「ここのクリスタルスカルは、パカル王の墓に移動しましたにゃ……だろうにゃ」

 苦労して開けても、予想の範疇はんちゅうを超えない時の賢者のメッセージであったとさ。
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