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第二十四章 アメリカ大陸編其の三 南米で遺跡発掘にゃ~

687 旅の目的は人それぞれにゃ~

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 わしが白クモザルのボスやザコを片付けてコーヒーブレイクに入ったところで、リータ達と白クモザルの戦闘もクライマックス。

 白クモザルは、リータ達の攻撃で両足が使い物にならなくなってヒザ立ちで戦っていたが、機動力が激減しているので素早い攻撃に対応できない。
 イサベレとメイバイに好きなように背中や後頭部を斬られている。いちおう五本の尻尾で捕らえようとしていたが、二人は届かない位置しか斬らないから苛立って来た。

 白クモザルが後ろを向いた瞬間に、コリスとリータの攻撃。わしを除く猫パーティのパワー順位、一位と二位に背中を思いきり殴られて、白クモザルは前のめりに倒れた。

「時間を稼いでください! オニヒメちゃんは私を空に打ち上げて!!」
「うん! 【突風】にゃ~」

 オニヒメの風魔法とジャンプ力が合わさり、リータが空高々舞う。その間、コリスは両手と両尻尾に気功をまとってのリス百裂拳で白クモザルの頭を殴りまくり、地面に張り付ける。
 イサベレとメイバイは、白クモザルを起き上がらせないように右手と左手を斬りまくり、白クモザルもなかなか立ち上がれないでいる。

「コリスちゃん、どいて~~~!!」

 そんな中、大声を出しながらリータが高速で降って来た。

 リータは空中に土魔法の足場を作り、そこを蹴って加速。白い大盾の重みも加わり、凄い速度で落下。
 そして大盾に魔力を流しながら尖った部分を下にして突っ込み、見事に白クモザルの頭の中心に突き刺したのであった。


「うっわ……地面まで貫いてるニャ……」
「メイバイさ~ん。見てないで助けてくださいよ~」

 リータのラストアタックは、悲惨なもの。大盾は白クモザルの頭を貫いて地面深くに潜り、リータはその上で鎖で拘束されて身動きが取れなくなっている。

 それはどうしてか……

 大盾は白クモザルの頭に突き刺さったまではよかったのだが、リータの手をすっぽ抜け、勢い余って頭を貫通。リータは焦って鎖を体に巻き付けて止めようとしたら絡まったので、大盾は地面に潜ったところで止まったのだ。

 そもそもリータの盾はシラタマが作った特別製で、【猫撫での剣】と同じ製法で作られている。
 尖った部分は研いでいなかったのだが、それでも切断力が半端ないので、重量と重力と加速が加わったから、ここまでの威力を発揮してしまったのだ。

「シラタマ殿~! そんなところで落ち着いてないでこっち来てニャー!!」

 わしはその怖い状況を見ていたので、もう少し落ち着いたら行こうかと思っていたが、メイバイに呼ばれたので腰を上げる。

 なにあの盾? 研いでもいないのに、十分な攻撃力があるんじゃけど~?? またわしは、おかしな物を作ってしまったのか……
 アレは、研いだらアカンヤツじゃ。あんなの寝込みに使われたら、わしの首もちょんぎられる。こわっ!

 走ったら一瞬で辿り着けるところを、心を落ち着かせる為に小走りで向かい、大盾がどこに行ったか探したら、地面に埋まっていて見えない。

「ありゃりゃ。よく鎖を絡めたにゃ~。体は大丈夫にゃ?」
暢気のんきなことを言ってないで助けてくださ~い」
「わかったにゃ~。痛かったら言うんにゃよ~?」

 リータは鎖が食い込んでいるはずなのに痛そうにしていないが、コリスを白クモザルの頭に登らせて鎖を支えてもらう。それから地中に埋まった大盾を引っこ抜いて地面に置いたら、次は鎖の処置。
 【猫撫での剣】で白クモザルの頭を割ったら鎖を横から抜く。その時、皆はさすが的な事を言って褒めてくれたが、わしはグロ映像が目に映っていたので吐きそうだ。
 リータを地面に下ろして白クモザルを次元倉庫に入れたら、残りは絡まった鎖をほどくだけ。コリスにも手伝ってもらってほどいて行くのだが、あの一瞬で、よくこれだけ複雑に絡まったな……

 なんとかかんとか鎖がほどけたら、場所を変えてお風呂だ。
 今日はもう夕方が近いので、ここで一泊。主の縄張りなら、一日くらいは獣が入って来ないからちょうどいいのだ。

 揉み洗いされて奇麗さっぱり湯船に浸かったら、リータ達の戦闘談も聞いてあげる。

「まさかあんなに切れ味がいいなんて思っていませんでしたよ~」
「わしもにゃ……」

 戦闘よりも、今日の主役はリータの大盾。もっと強い敵でも必殺技として使えるんじゃないかとわいわい喋っているけど、無理はして欲しくないな~?

 お風呂から上がったら、ディナーをしながらコリスにも質問。

「コリスだけ武器がないけど、欲しくにゃい?」
「う~ん……ごはんのほうがいいかな?」
「そっか。べティの新作あげるにゃ~」
「ホロッホロッ」

 やはりコリスは通常運転。武器より食い気が勝っているので、白メガロドン肉のソテーにヤマタノオロチのレバーが乗っている料理を食べさせてあげた。

 当然「星みっちゅ!」だったけど、白メガロドンバーガーも「星みっちゅ」だったよね? 違いは~……わからないか~。

 白メガロドンとヤマタノオロチのロッシーニ風は、高級フレンチに超高級食材の合わせ技なので、価値のわからないコリスに食べさせるのは少しもったいなかったと思うわしであったが、幸せそうな顔だから、まぁいっか。

 こうしてわいわいと楽しく過ごし、夜が更けて行くのであった。


 翌日……

 念の為、地下で寝ていたので地上に出たら朝ごはん。準備を済ませて出発しようとしたら、リータ達が歩き出したのでわしは止めた。

「なんですか?」
「あのですにゃ~……わし、探し物をしたいから、戦闘機に乗ってくれにゃいかにゃ~??」

 リータがあまりに冷たい目で見て来るので、わしは両肉球をモミモミしながら下手したてに出た。

「探し物ですか……」
「ほら? 前に観光地を探そうって言ってたにゃ~。時の賢者の足跡が見付かるかも知れないにゃ~」
「言ってましたね……でも、獣が……」
「ちょっと上から確認するだけにゃ~。お願いにゃ~」

 どう考えてもわしの目的のほうが旅の醍醐味だと思うのだが、リータ達は集まって会議。その結果、30分の飛行許可がもらえる事になった……

「ちょっと短すぎにゃい?」
「じゃあ、20……」
「30分でありがたいにゃ~」

 文句を言ったら減らされそうになったので、すかさず感謝のスリスリをするわしであったとさ。


 皆が戦闘機に乗ったら、少し高い位置をキープして真下に取り付けた窓から航空写真。わしが撮ろうと思っていたけど、コリスとオニヒメに操縦させたら進まなそうなので任せられない。
 メイバイにインスタントカメラを渡して航空写真は任せ、極力南に進みつつ、東に行ったり西に行ったりしていたら、誰とは言わないが「チッチッチッチッ」と舌打ちが聞こえて来た。どうやら制限時間を超えていたようだ。

 たった一分でそんなに苛立たなくても……は~い。降りま~す。

 機内の雰囲気が悪いので、わしは着陸準備。戦闘機が着陸したら、皆は笑顔に変わったので、わしの命は助かった……

「では、行きましょう!」
「「「「「にゃ~~~!!」」」」」
「にゃ~……」

 先ほど撮ってもらった航空写真を確認したかったのだが、皆は元気よく走り出したので、わしは元気なく続く。
 とりあえず写真の確認をしたいので、移動はコリスの背中に乗せてもらい、戦闘中はわしだけ写真の確認。そこうしていたら、コリスにかじられたのでランチ。

「みんにゃも手伝ってにゃ~。一人で寂しいにゃ~」

 わしが涙目でスリスリしたら、長時間も放置していた事を悪く思ったのか、リータ達は謝罪と餌付けと撫で回し。そのまま夢の世界に旅立ちそうになったが、ギリギリ踏み留まった。
 ランチを平らげたら、テーブルに写真を番号順に並べて、リータ達の意見を聞いてみる。

「ところで、何を探したらいいのですか?」
「万里の長城のことは覚えてるかにゃ? たしかメイバイが木が並んでるみたいとか言って発見したにゃろ??」
「あ、そんなこともあったニャー」
「それと同じにゃ。木が不自然に揃って見えるところを探して欲しいんにゃ。ひょっとしたら遺跡があるかもしれないにゃ~」
「なるほどです」

 皆に手伝ってもらえば、ほぼ真っ黒な写真でも些細な違いがわかるかもしれない。わしは一通り見たけどさっぱりわからなかったので泣き付いたというわけだ。
 皆もいろんな角度から見て確認していたが、難易度の高い間違い探しのようだから苦戦している。そんな中、オニヒメが難しい顔をして唸っていたからわしは隣に座る。

「にゃんか見付かったかにゃ?」
「う~ん……ここ、四角く見えない??」
「う~~~ん……」

 わしもよくわからないので唸ってしまうが、皆にも写真を見てもらったら似たような感じ。一旦保留にして、他にも気になる物を探してもらったら、三ヶ所の候補地が決まった。

「どれも不確かにゃけど、全部回ってみようにゃ~」
「何も無かったら……」
「にゃにも無かったらにゃに!?」

 空振りでも、それも旅の醍醐味。なのにリータ達が怖いので、その続きは聞かないわしであっ……

「もう遺跡探しは……」
「聞かなくても大丈夫ですにゃ~。さあ、出発しましょうにゃ~」

 続きを聞かされそうになったので、さっさと皆を戦闘機に積み込み、遺跡探しを開始するわしであったとさ。


 さっきちょちょいと書いた簡単な地図を見ながら低空飛行を続ければ、まず最初の候補地に到着。ここに着陸して探すつもりだったが、降りるまでもなく何も無かったので、次へ。
 わしはガッカリしていたが、リータ達が代わる代わる撫でてくれているので気分が変わる。

 でも、その笑顔が気になるわ~。

 次の候補地も何も無さそうだったけど、着陸して現地調査。やっぱり何も無かったので、次へ。またガッカリしていたら、めちゃくちゃ撫で回されて気分が変わる。

 その笑顔が怖いからやめて欲しいわ~。

 たぶん無駄な時間に付き合わされているから、こんな顔をしているのだろう。もうわしの我が儘を聞かなくていいように、釘を打とうと……

 しかし三ヶ所目は、かなり怪しい。岩肌が多く見え、高さもあるように見える。皆も「遺跡かも?」とかコソコソと言ってるけど「遺跡じゃありませんように!」とか祈らないで欲しい。
 わしは皆とは逆に、遺跡が見付かるようにと祈りながら着陸態勢に入る。そして平地そうな場所に戦闘機を降ろして、先ほど見た岩肌の場所へと草を掻き分けて進んだ。

「やった……やったにゃ! 100%遺跡にゃ……にゃっほ~!!」

 木々の間からは四角い石が積み重なって見えるので、間違いなく人工物。わしは「ひゃっほ~!」と飛び跳ねて喜び、リータ達は……

「「「「「うわ~~~」」」」」

 その荘厳なたたずまいに感動してるっぽい。

 意外と遺跡には興味があるのだと受け取り、わしは安心して遺跡調査に取り掛かるのであった。
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