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第二十四章 アメリカ大陸編其の三 南米で遺跡発掘にゃ~
685 巨人の群れにゃ~
しおりを挟む黒スカンクを倒してにおいチェックも終わったら、リータ達はめちゃくちゃ褒めてくれたので、わしも鼻高々。ただ、黒スカンクを次元倉庫に入れようと近付いたら、またにおいチェックをされてしまった。
元々風魔法で風上を作っていたからくさくないですよ? 刀で斬ったから、肉球もくさくないと思いますよ? なんかリラックスするのですか……イサベレはどこのにおいを嗅いでるんじゃ!
リータ達を宥めていたら、イサベレがお尻辺りに顔を近付けていたのでさっさと撤収。強い獣を探さないのかと言ったら、わしを置いて走り出してしまった。
わしも遅れまいと走り出して追い付いたと思ったら、猫パーティ全員コリスに拘束されてモフモフ言っていた。どうやらランチの時間だからコリスに止められたようだ。
楽しくお弁当を食べたら、また爆走。黒い獣や白い獣をリータ達が蹴散らしてわしが回収して進んでいたら、白い木が増えて来た。
さらに進むと真っ白な空間に。どうやら白い木の群生地に入ったようだ。なので、一旦外へ出て話し合う。
「イサベレさん。どんな感じですか?」
「私達じゃ敵わない強いのが一匹いる。けっこう強いのも三匹。あと、数も多い。30以上」
「主の領域に群れですか……珍しいですね。オニヒメちゃんは何か意見ある?」
「パパから習った探知魔法を使ってみたけど……」
「どうかしたの?」
「人間みたい。おっきいのも人間みたいなの」
「人間……集落でしょうか……」
皆の話し合いを聞きながら、わしはその時を待つ。
「では、もしも人間だった場合は、シラタマさんの指示に従うってことで……行きましょう!」
「「「「「にゃ~~~!!」」」」」
「わしにも意見を聞いてくれにゃ~~~!!」
今度こそ作戦会議に入れると思っていたわしは、皆の道を塞いで止めた。
「なんですか?」
「やっと聞いてくれたにゃ~。嬉しいにゃ~」
「ふざけてないで早く言ってニャー」
わしが仲間に入れてもらえたと喜んでいたら、リータとメイバイに冷たい目を向けられたので慌てて話し始める。
「まずはオニヒメ……探知魔法、もう覚えていたんだにゃ~。偉いにゃ~。探索に関してはわしを超えたんじゃないかにゃ~?」
「パパ……」
「では、行きましょう!」
「「「「「にゃ~~~!!」」」」」
「にゃ……」
どうやら褒め言葉は、いまはいらなかったようだ。なので空気の読めないわしを置いて、皆は白い木の群生地に入って行くのであったとさ。
ブツブツわしの悪口を言うリータ達のあとに、わしは続く。
でも「空気を読まない猫王」略して「KYニャー」って、よくその略し方、思い付きましたね。元の世界でも空気の読めない人はKYって言われていたんですよ。
あ、興味ないのですか。でも、もうちょっと興味を持って欲しいな~? いまは忙しいのですか。そうですか。
わしだけぺちゃくちゃ喋っていたら睨まれたので、お口チャック。それと同時にイサベレとオニヒメが同時に上方を見たので、全員の視線が集中した。
「人みたいですけど……モフモフですね」
そこには、両手両足が長い毛むくじゃらの黒い生き物が木にぶら下がっていたので、リータ達はモフモフに反応している。
「アレは猿じゃにゃい? 尻尾も長いにゃ~」
モフモフに興味のないわしが答えを言うと、何やら悩み出した。
「ウサギ族やオオカミ族みたいなものでしょうか?」
「もしも人間だったら戦いにくいニャー」
どうやら立って歩くモフモフを多く見たせいで、リータとメイバイは猿との戦闘は躊躇ってしまっているようなので、わしは違う案を出す。
「じゃあ、迂回して進もうにゃ。無理して戦う必要ないにゃ~」
「あれは猿。あれは猿……」
「猿は人間じゃないニャ。人間じゃないニャ」
「無理するなと言ってるんにゃ~」
「ギャアァ~~~!」
そこまでして戦って欲しくないわしが止めていたら、猿が奇声を発しながら飛び下り、先頭に居たリータに襲い掛かって来た。
「あ……やってしまいました……」
しかしリータは後の先で一撃必殺。飛び掛かって来た猿をひょいっと避けて顔面を上から殴り、地面に叩き付けて殺してしまった。
「うっ……どどど、どうしましょう!? もしも人間だったら……」
「リータは殺人を犯したことになるニャー!」
「あわわわわ」
「落ち着けにゃ~。あんにゃに殺気ムンムンで襲って来たんにゃから、リータのせいじゃないにゃ。それにこれは猿にゃ。一般的にゃ猿より手足が長いから、クモザルと命名するにゃ。にゃ~? ただの狩りにゃ~」
リータとメイバイがあまりにも取り乱しているので、わしは勝手に命名。この時わしは適当に付けたので、メキシコに棲息する猿の名前と同じだった事に気付けない。
わしの命名で少しは二人が落ち着いて来た頃、また二匹の黒クモザルが樹上に現れて、大声で騒ぎ散らした。
「こりゃマズイにゃ。仲間を呼んでるにゃ。逃げるか戦うか、いますぐ決めろにゃ!」
わしの言葉に、皆は目配せして頷き合う。
「「「「「やるにゃ~!」」」」」
「あ、やるんにゃ」
さすがに逃げるかと思っていたけど、リータ達はやる気満々。士気も上がったのはいい事だと思うが、わしは予想が外れて少しテンションダウン。
「来た!!」
イサベレが声を出した数秒後、巨大な黒クモザルの群れが樹上や地面にずらっと並んだ。
「じゃ、わしはフォローに回るから、好きにやっちゃってにゃ~」
「「「「「にゃ~~~!!」」」」」
黒クモザルもやる気満々で威嚇しているので、わしからの指示で各々動く。
リータとコリスが前に出て黒クモザルの注意を引くと、二人に一斉に襲い掛かって来た。しかし二人の敵ではないので、先頭から順番に気功パンチで弾き返す。
イサベレとメイバイは空中戦。イサベレは空気の足場を踏んで、空中に浮いている黒クモザルを細身の刀で斬り捨てる。メイバイは木を蹴って行ったり来たりしながら、小刀二刀流で空中のクモザルを斬り刻む。
オニヒメは風魔法で対応。皆の手が間に合わない黒クモザルに向けての【鎌鼬】。正確に射貫き、皆を援護する。
わしはと言うと、暇なもの。と、言いたいところだが、黒クモザルが援軍を呼んだようで、探知魔法には大きなクモザルが近付いていたから、戦闘空間を走り抜けた。
白が三匹……10メートルから20メートルってところか。単体ならリータ達でもなんとかなりそうじゃけど、その後ろに50メートル近いクモザルが木を薙ぎ倒して近付いて来てるんじゃよな~。
どうしたもんか……
目の前の白クモザル三匹は、とりあえず【風玉】で牽制。三匹とも惹き付けてわしは相手取る。
地上で踏み付けや拳をかわし、空中では牙や爪をかわす。わしに掛かれば、避けてカウンターは余裕なのだが、リータ達の戦闘に目を移した。
あんだけ殺す事を躊躇っていたわりには、容赦ないな。もう殲滅してしまいそうじゃ。
悩んで三匹とも残すとリータ達に不利になりそうじゃし、ここは真ん中のヤツだけ処理しておくか。
わしは白クモザル三匹の猛攻を嘲笑うように避け続け、15メートル近くある白クモザルを一撃で倒せるタイミングを合わせる。
そして空中で、わしは逆さのまま刀を抜いた。
その直後、白クモザルは飛び移った木にぶら下がった状態で頭をポトリと落とすのであった。
さてと……リータ達のほうも終わりそうじゃし、わしは主に向かおうとするかのう。
二匹の白クモザルが、頭を無くして木にぶら下がっている仲間に目を向けている内に、わしは消えるのであった。
* * * * * * * * *
一方、リータ達は黒クモザルの群れを殲滅したら、集合して一塊になっていた。
「シラタマさんは……居ませんね」
「ダーリンは主に向かった」
リータがシラタマを探すとイサベレが補足してくれたので、作戦会議に移る。
「シラタマさんが一匹倒したみたいですけど、どう思います?」
「私としては、全部残して欲しかったニャー」
「どうだろう? 三匹相手はきつかったかも??」
「ん。戦力が分散されるから厳しかった」
リータとメイバイは数が減って残念そうにしているが、オニヒメとイサベレは相手の力量からちょうどいいと判断している。
「さすがシラタマさんということですか……」
「あんなにふざけていたのに、やっぱりやる時はやる猫ニャー」
「まぁ過保護な感じはしますけどね」
「ん。死力を尽くせば勝てたと思う」
リータとメイバイがシラタマについて喋っていたり、イサベレも怖い事を言っていると、頭の無い白クモザルが力尽きて地面にドンッと落ちた。
「あ、こっち見たニャー」
「では、私とメイバイさんで、小さいほうを相手します。イサベレさん達は、防御重視でお願いします」
「チャンスがあれば一気に決めるけど、いい?」
「頼もしいですね。でも、そう上手くいかないと思いますから気を付けてくださいね」
「ん。わかった」
作戦が決まると、皆は頷き合って声をあげる。
「行きますよ!」
「「「「にゃっ!!」」」」
こうしてリータとメイバイは白クモザル小に向かい、イサベレとコリスとオニヒメは白クモザル大に向かうのであった。
* * * * * * * * *
その頃わしは、「ドーン、ドーン」と木が倒れる音の方向に走り、巨大な白クモザルが目に入った瞬間に木の頂上に飛び乗った。
おお~……巨人じゃ。あそこまでデカイ猿が二足歩行していたら、もう巨人にしか見えんな。木を薙ぎ倒して進撃しておるし……
てか、自分の住み処なんじゃから、自然破壊するなよ。酷いことしやがる。いつもどうやって移動しておるんじゃ? あ、たまに横向きになって通っておる。
いちおう最小限の被害で押さえているつもりか……じゃ、わしも手伝ってやるかのう。
「【大風玉乱舞】にゃ~~~!!」
ひとつが20メートルはある風の玉を数十個作ったら、一発目を発射。ボスクモザルは横に避けて住み処を壊すのを嫌ったのか、ヒット。と言うよりキャッチ。
しかしわしは気にせず、ガンガン発射してボスクモザルにぶつければ、一発では動かせなかったボスクモザルは後退。その圧力は【大風玉】が増えれば増えるだけ大きくなり、ボスクモザルは電車道を作るのであった。
あ……わしも自然破壊しておる。ごめんねごめんね~。
ボスクモザルより多くの木を薙ぎ倒した事を若干反省しながら、わしはボスクモザルを追いかけるのであったとさ。
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