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第二十三章 アメリカ大陸編其のニ アメリカ横断旅行、延長戦にゃ~

669 ナイアガラの滝にゃ~

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 ジョージにサインをねだられ、猫王様シリーズの出版を約束させられたら、バスに乗り込んで露店の集まる広場に直行。うるさいベティに道案内させて、行列の出来ているとある露店にて足を止めた。

「にゃんかまた一段と行列が伸びてにゃい?」
「あたしが抜けたからかも!? みんなもちょっとだけ手伝って!!」
「わしたち王族なんにゃけど……」
「お願い! 信用がなくなっちゃう~!!」

 ここはベティが両親に始めさせたフィッシュアンドチップスのお店。司令塔のベティが抜けた事と、復活の余波で大繁盛となっていた。
 なのでベティは「猫の手でも借りたい」とか言うので、仕方なく貸してあげる。だって何度も言うからリータ達が笑うんじゃもん。
 ただ、リスの手は邪魔なのか、コリスは列の整理に回らされた。だってつまみ食いが止まらないんじゃもん。
 結局リータ達の力だけでなんとかなりそうなので、わしも戦力外通告。猫の手も借りたいって言ったのはそっちなのに……

 わしもコリスと一緒に列の整理をしていたら、行列に並ぶ人は居なくなった……
 どうやら鎖の付いていない猫とリスが怖かったようだ。

「結果オーライ! ありがとう!!」

 項垂うなだれながら二人で謝りに行ったら、ベティは何故か褒めてくれた。どうも行列の原因はベティが抜けただけではなかった為、この間に体勢を立て直したかったみたいだ。

「もう! こんなにメニュー増やしたら手が回らなくなるに決まってるじゃない!!」

 ベティが言う通り、こんな小さな露店で十品も出していたら作るのに時間が掛かるに決まっている。両親もそれはわかっていた事なのだが、客からの要望が多くて仕方なく増やしてしまったようだ。

「ちょっと貴族対策で料理を増やし過ぎちゃったか。さすがあたしの料理ね」

 理由を知ったベティは怒るでなく鼻高々。

「これってベティのせいじゃにゃい??」
「そうとも言うけど言わないでよ~!!」

 なのでわしが叩き折ってやった。

「というわけで、サンダーバード捜索は三日後に変更ね!」
「にゃにが『というわけ』にゃ~。元々連れて行くにゃんて言ってないにゃ~」
「ええぇぇ~~~!!」

 ベティを置き去りにするちょうどいい理由が出来たので、露店の料理を全て十人前だけ買ったら逃げ出すわし達であったとさ。


 原住民の静養している公爵邸に寄り道してから城に帰ったら、ベティ料理を並べて批評会。高級食材を使っていないのに、どれも露店で出て来るようなレベルではないので大満足。
 猫の国に戻った際には、ふんだんに高級食材を使って作ってもらおうと話をしていたら、ジョージが匂いに釣られてやって来た。

 美味しいから猫の国料理かと聞かれたので露店で買ったと言ったら、明日お忍びで買いに行くそうだ。フットワークが軽すぎるので、暗殺されないように護衛のエルフを一人連れて行くように言っておいた。
 それから猫軍魔法部隊の休む宿舎にも顔を出し、労いと高級料理のプレゼント。エルフには白い獣の干し肉を補充しておいたので、期間の延びた出張にも対応できるだろう。

 このあとジョージと酒を酌み交わしてから、わし達は城の一室で眠りに就くのであった。


 そして翌朝早く、城の庭から猫パーティを乗せた戦闘機はぐんぐん上昇。UFO騒動が起こらないように朝早くに飛び立たせたわしは、出来る猫だ。
 例の如く超高高度から航空写真を撮ったら、北北西に機首を向ける。二枚ほどインスタントカメラでも写真を撮ったので、ナイアガラの滝もバッチリ映っていたから探すのも楽チンだ。

「これが全部滝なんですか? 大きいですね~」
「湖になってる箇所もあるから、全部とは言えないかにゃ~?」
「その近くの白い森もおっきいニャー!」
「だにゃ。四神の縄張りよりおっきいかもにゃ~」

 リータやメイバイ達とぺちゃくちゃ喋りながら真っ直ぐナイアガラの滝に向かって数時間……お昼近くになってようやく辿り着いた。
 これほど壮大な滝壺なんて西の地にはないので、リータ達も感動しているようだ。ただ、ナイアガラの滝は黒い森に包まれているので、強い獲物にも心惹かれている。
 わしとしては、絶景を前にランチをしたいだけなので、ナイアガラの滝がいい角度で見えるカナダ側に回って着陸した。


「「「「「にゃ~~~」」」」」

 正面にある大パノラマの滝に、一同感動の嵐。あのコリスでさえ、食事を忘れてしばらく見入っていた。
 それから「にゃ~にゃ~」感想を言い合い、コリスのお腹が鳴ったらランチだ。

「本当に二つの土地が別れているように見えましたね」
「あの婆さんも昔の人も、よく言ったもんだにゃ~」
「これって何メートルぐらい滝が続いてるニャー?」
「たしか……横幅が700メートル無いぐらいだったかにゃ? 高さが50メートル以上にゃ」
「おっきいですね~。白いマンモスさんもすっぽり落ちちゃいそうです」
「こんなのが自然に出来るって不思議ニャー」
「にゃはは。前にもグランドキャニオンで言ったにゃろ? 水は、にゃん千、にゃん万年と掛けて岩を削るにゃ。いまも刻一刻と削られているにゃ~」

 ナイアガラの滝は遠い未来には消滅してしまうと教えてあげたら、嘘つき扱いされてしまった。こんなに大きな物が消えるとは信じられないようだ。
 なので、毎年2センチ以上削られていると説明していたら、もっと近くで見ようって話になった。大きな話がセンチ単位になったから、ますます信じられなくなったようだ。

 わしも一度は行ってみたかったナイアガラの滝クルージングに興味津々なので、ルシウスキャット号で遊覧してみる。
 滝壺に近付くに連れて音が大きくなるので、皆の感想は聞こえにくい。念話に切り換えたらハッキリ聞こえたけど、近付き過ぎて水飛沫みずしぶきでビチャビチャなんだって。
 まぁこれも楽しい思い出。皆はキャッキャッと笑って楽しそうだ。

 ルシウスキャット号が岸近くで船底を擦って止まると、全員岸に上がって「とお~う」と、大ジャンプ。アメリカ側の崖の上に移動した。

「いい景色ですね~」
「絶好のカメラポイントニャー」
「流れが速いから入っちゃダメだからにゃ~?」
「あはは。モフモフ~」
「パパ~!」

 リータとメイバイと一緒に崖の近くから遠くを見て注意していたら、コリスとオニヒメが上流からドンブラコと流れて来た。

「にゃ~!! コリス~! オニヒメ~!!」

 わしは焦って飛び込み、コリス達にあと少しの距離まで近付いたら、もう滝のそば。いまにも落ちそうだ。

「「よっこいにゃっと」」
「にゃ!?」

 しかしコリスとオニヒメは、水魔法を使って急停止。そして水の上に立ち上がった。

「にゃ~~~……」

 わしは焦って泳いでいた事と、二人がそんな止まり方するとは思ってもいなかったので、水魔法の発動が遅れて滝壺に落ちて行くのであったとさ。


「ぴゅ~~~」

 焦りまくったわしは滝壺で溺れて虫の息。コリスに救助され、リータにお腹を押されて水を噴水のように吐き出している。
 さすがはナイアガラの滝。この最強の猫王様をここまで追い込むとは、世界三大瀑布ばくふのひとつだけはある。

「モフモフごめんね」
「はしゃぎすぎた。ごめん」
「焦り過ぎですよ」
「本気を出してたらすぐに抜け出せたニャー」
「ん。ダーリンは空を飛べる」

 コリスとオニヒメが心配を掛けたと謝っているので、リータ、メイバイ、イサベレも強くは言えないようだ。いつもなら失敗を笑われているのに、それほど心配されるぐらい水の中に居たのかもしれない。

「はぁ~~~。ビックリしたにゃ~。にゃははは」

 皆が心配しているように見えたので元気アピール。からのスリスリ。ただ、全員ビチャビチャなので効果は少なかったから、滝から離れた所で体も服も乾かしてからスリスリ。

「それで……これからどうします?」

 わしが愛想を振り撒いていたら、リータから質問が来たので時計を確認する。

「もう夕方だにゃ~。別行動は明日にして、キャンプでもしようにゃ~」

 ここでは滝の音がうるさいので、静かな場所まで移動する事となった。わしの目的地の白い森はナイアガラの滝から西に行った所なので、全員で向かうと決定。たぶん、そっちのほうが強い獣が居ると思って……
 そうして黒い森を駆けていると、イサベレとオニヒメがコソコソ喋っていたので、わしは探知魔法を使う。予想通り、わしに報告なく獣の群れの場所に向かっていたから、ちょっとぐらい文句を言ってみる。

「にゃんか獣どうしが戦っているみたいにゃけど、乱入するつもりにゃの?」
「ん。当然」
「ニ匹強いのが居るよ」
「遠回しに止めてるんにゃ~」

 わしが止めてもイサベレとオニヒメには通じない。リータとメイバイに至っては、強いと聞いてやる気満々。コリスはいつも通り。
 獣どうしの戦闘に乱入するのも面倒だが、戦闘狂の集団を止めるほうが面倒なので、わしも続くしかなかった。


 獣の戦闘区域に近付くと、イサベレから指示が出て、大きな黒い木の陰から戦闘を覗き見る。

「白い何かに白クマと黒クマが襲い掛かっているみたいですね」
「あの白い毬栗いがぐりみたいのはなんニャー?」
「あっちゃ~。あれはヤマアラシにゃ~」

 10メートル以上ありそうな白い毬栗は、ヤマアラシ。そのヤマアラシを狩ろうと、同サイズの白グリズリーと10メートルから3メートルはある黒グリズリーが集団で襲い掛かっていたのだ。

「あっちゃ~って、そんなに強いのですか?」
「ほら、トゲがいっぱい立ってるにゃろ? 白ハリセンボンみたいに攻防一体にゃから、リータ達には直接攻撃は厳しいかもにゃ~」
「なるほど……では、まずはクマを処理してから……」

 またわしは遠回しに止めてみたが無視。リータから指示が出て、皆は気合いを入れて歩き出したのであった。

「わしには指示はないにゃ?」
「シラタマさんは待機です!」

 わしも猫パーティの一員なのに指示が無かったので聞いてみたら、リータに怒られるのであったとさ。
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