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第二十三章 アメリカ大陸編其のニ アメリカ横断旅行、延長戦にゃ~
666 ベティの帰郷4にゃ~
しおりを挟む「大人気ね」
「にゃ? もういいにゃ?? ゴロゴロ~」
わしが村の子供達に囲まれておもちゃにされていたら、ベティとエミリが近付いて来たので、お菓子を投げて子供達は離れさせた。
「ええ。顔を見れただけで満足よ」
「猫さん、違うんですよ。おじいちゃん達がママの子供の頃の話ばっかりするから逃げて来たんです」
「ちょっ! エミリ!」
「オネショでもしてたにゃ~?」
「するわけないでしょ!」
「ウフフ。悪い男の子をね~」
「ワーワーワーワー!!」
ベティが邪魔するので念話で続きを聞いてみたら、悪ガキを凝らしめる為に、深い落とし穴に閉じ込めてめっちゃ叱られたんだって。
その他にも、魔法で燃やしたり吹き飛ばしたりとやりたい放題で、どっちが悪ガキかってくらいの武勇伝があるそうだ。
「ベティって、みんにゃに調子に乗るなって言われてにゃかった?」
「子供の頃だけよ! それに魔法があるんだから使いたくなるでしょ~」
「これは大人になっても変わってなかったんだにゃ」
「ですね。さっきもひどかったですもん」
「エミリまでひどい~!!」
生前のベティはエミリの前ではどんな人だったと聞くと、優しくて料理の上手いお母さんと記憶されていたので、わしは信じられない。
たぶん素は、猫被りまくって隠していたのだと二人で笑っていたら、わしもベティとエミリに笑われた。わしはリアルに被ってるもん。
そうして笑っていたら村長が獣の解体を終えたと呼んでいたので、毛皮は全て受け取り、肉は半分受け取って残りを支払いとする。依頼完了書を貰ったら、これで依頼は全て終了。
ベティとエミリには泊まって行くかと聞いたが今日は帰ると言うことなので、最後に老夫婦にまた来ると告げて、王都に向けて飛び立ったのであった。
「あ、そうにゃ。カミラパーティのお墓があるんにゃけど、寄ってくにゃ?」
戦闘機から一号車に乗り換えたところで、わしはベティに問う。
「あたし達の? ああ、共同墓地か……遺骨が無いのは残念だけど、手を合わせて行こっかな」
「全部持ち帰ったから安心するにゃ~」
「はい??」
ベティの声が裏返っていたので、一号車を走らせている間に少し説明。わしの趣味でカミラパーティを探して、陽気なゴリラ達の縄張りで安置されていたから持ち帰ったと説明した。
「そう言えば……初めて会った時に『藤原恵美里』って呼んでたわね。遺書を見付けたからか」
「順番が逆にゃ。エミリに残したレシピブックに名前を書いてたにゃろ?」
「そだっけ??」
「うん。私もいまは読めるよ。日ノ本のハルちゃんに教えてもらったんだ~」
「ベティだって異世界人だと隠す気あったにゃ~?」
「も、文字なら読めないから大丈夫よ!」
反論しながら一号車は墓地に到着し、ぺちゃくちゃ喋りながら歩き、カミラの墓に到着したらベティの顔がしわくちゃになった。
「わっ……わふぅぅ~う」
「犬の鳴きマネにゃ??」
「和風って言ってんのよ! やっぱ隠す気ないじゃない!!」
「日本があるって知らなかったんにゃ~」
異世界人隠し合戦はドロー。
「刀に電車に車にビルにエレベーターにお墓に遊戯施設に……」
「わしの完敗ですにゃ~」
いや、ベティが指を折りながら数えるので負けを認めるしかない。わしにだって自覚がちょびっとはあるし負けを認めたんだから、もう出さないでくださ~い!
いつまで経ってもベティの羅列が終わらないので、隣の洋風のお墓には仲間が眠っている事と、わしのポケットマネーで建てたと話を逸らしたら、ようやく止まった。
さらに線香と献花、お酒も有料で承るとベティに言ったら「ムキッー!」って奪われた。冗談のわからんヤツじゃ。
エミリはいつも通りカミラのお墓を軽く掃除してお花を飾り、わしの渡した火のついた線香を供えて手を合わせているけど、お母さんは隣で見てるよ?
ベティはなんとも言えない顔でお墓の掃除を魔法でして、線香も自分で焚いて手を合わせている。洋風なのに作法は仏教とツッコミたかったが、ベティは真剣に祈っているので自重した。
わしはベティが居なかったらカミラの墓に手を合わせていたのだが、悩んだ結果やめた。カミラにも会った事はないし、目の前に魂の入った器がある。
なのでベティに向けて手を合わせ、般若心経を唱えてみたら、めっちゃ睨まれた。邪魔するなとのことらしい。
お墓参りはエミリから終わり、お喋りしていたらベティも長い祈りは終わった。それからベティはカミラの墓にも軽く手を合わせ、一周回っていたので、わしが『藤原恵美里』と名前を刻んでいた事がバレてしまった。
なので「消したかったら好きにしろ」と言ったら、自分の土魔法で消してからわし達の元へ来た。
「けっこう長かったけど、にゃにを語っていたにゃ?」
「気のいい仲間だったからね。思い出や感謝がたくさんあるのよ。ま、自分には掛ける言葉は無かったけどね」
「にゃはは。そりゃそうだにゃ」
「ホントに……そうだ! ママはここに居るのに、エミリは何をしてたの!?」
「あ……いつものクセで……」
エミリは自分でもおかしいと思ったのか、照れ笑いしながら、いつもお墓参りの際に語っている決意表明を説明する。
「ママって、王都でお店をやるのが夢だったでしょ? だから毎年お墓の前で、私が夢を叶えてあげるからねって言ってたの」
その言葉にベティは感動の涙を……
「ん? なんの話??」
流さずに、笑顔で小首を傾けた。
「え……だから料理店を……」
「あたし、そんな話したっけ??」
「ええぇぇ!?」
それどころか、エミリの夢を大否定。あまりにも酷いので、わしも話に入る。
「ほ、ほら? 死ぬ前は開店費用を稼いでいたんにゃろ??」
「あ~……ハンター業じゃエミリとお喋りする時間が少ないから、料理店をやろうとしてたの。んで、エミリが一人前になったら、またハンターに戻ろうとしてたのよ。異世界と言えば、やっぱり戦闘が醍醐味じゃない?」
「「にゃ……」」
唖然呆然。わしとエミリは開いた口が塞がらない。エミリだけじゃなく、わしだってその夢を応援していたのだから当然だ。
「だからエミリ……」
そんなエミリに、ベティは真面目な顔で手を取る。
「エミリも好きに生きなさい。王都で料理を作るだけが幸せじゃない。エミリはまだ若いんだから、やりたいことはすぐ見付かるよ。エミリが決めた道なら、ママ、いっぱい応援してあげる。ね?」
ベティはそんなことを言いながらわしにウインクするので、わしはどういう意味か聞こうとしたら、エミリが喋り出してしまった。
「ママ……急に言われてもどうしていいかわからないけど、考えるだけ考えてみる。もしも一緒にお店がしたいって言ったら、その時はママも考えてね」
「え~! これから楽しいハンターライフ第二章が待ってるのに~」
「ママは小さいから、そんな危険な仕事はしちゃダメです」
「ウフフ。言うようになったね~」
「あはははは」
エミリの夢が決まるには時間が掛かりそうだが、二人は嫌味のような事を言い合って楽しそうだ。わしは仲睦まじい親子の会話を見て、うっすらと涙を浮かべるのであった。
わしが「にゃ~にゃ~」泣いていたら墓参りは終了とのことで、二人に手を引かれて一号車の元へと戻る。その道中、エミリが先に行ったタイミングで、ベティに先程のウインクの意味を聞いてみる。
「ひょっとしてにゃけど、ハンター業に戻るって言ってたの、嘘じゃにゃい?」
「バレたか。喋るなって合図だったんだけどな~」
「あ、そゆ意味だったんにゃ。深読みしちゃったにゃ~」
「ま、すぐバレるよね~。エミリが立派な大人になってたら、あたしおばちゃんだもん。ハンターなんて、そんなに長く続けられるもんじゃない。移動だけで大変よ~」
「そりゃそうだにゃ。でも、電車もバスも走ってるから、最近王都でも日帰りで遠くの森に行ってるらしいんだけどにゃ~」
「なにそれ!? ハンター寿命延びるじゃない!!」
「ベティの夢……おばちゃんハンターも夢じゃないにゃ~。にゃははは」
「いつからあたしの夢はおばちゃんハンターになったのよ!」
自分で言ってた夢なのに違っていたようだ。
「美幼女魔法使いベティと呼びなさい!」
「美熟女魔法使いベティにゃ~」
「熟れてない! ピッチピチッ!! アレ? 美が付いてるから褒めてるのか。おばちゃんハンターよりずいぶんマシかも??」
わしは別に褒めてないのに、ベティは考え込んでいるので無視。エミリが一号車の前で手を振って呼んでいたので、ブツブツ言ってるベティを担いで走り出すわしであった。
王都に帰ったわし達は、ハンターギルドに寄って依頼の報告と買い取りをしてもらう。その時、ティーサに「ここまでやらなくていいのに」と怒られてしまった。中堅ハンターの仕事を奪ってしまったようなので、謝ってから我が家に帰る。
そこでは、居間でゴロゴロしているフレヤとエンマとガウリカを発見。ベティには女を連れ込んでいると思われてしまったので、こいつらが寄生してるだけと説明しておいた。
三人はもう酒が入っていたから、半分は信じてくれた。ただし、「今日は泊まっていかないの~?」とか甘えて来たから振り出しに戻った。
無断外泊は説教案件なので、白メガロドンの串焼きと生肉を大量に置いて、三人が肉に気を取られている内に逃走。着の身着のまま猫の街に転移した。
「今日はどうでしたか?」
夕食時には、リータとメイバイの浮気チェック。ハンターの仕事をして来たと言ったらめちゃくちゃモフられたので、ベティとエミリも誘って、離れで月を見ながら説明する事にした。
「仕事するなら言ってくださいよ~」
「だから急遽決まったと言ったにゃ~」
「その理由も教えてくれないニャー」
「双子王女が居たから詳しく言えなかったんにゃ。もう、ベティのせいで大変だったにゃ~」
「なんであたしのせいなのよ!」
わしが説明している間もベティがツッコんで来るが、説明が終わった頃にはリータ達にも、ベティの厄介さが伝わったようだ。
「エミリちゃんのおじいちゃんの家に行っていたのですね」
「そりゃ、あの場で言えないニャー」
「ベティにゃんて変な魔法で獣を呼び寄せるから、やりすぎってティーサに怒られたにゃ~」
わしの愚痴にはいらない情報が含まれていたので、リータとメイバイの目が妖しく光った。
「何その魔法……教えてください!」
「黒い森の中で使えば狩り放題ニャー!」
「危ないからやめようにゃ~」
戦闘狂の二人は、四方八方から獣が押し寄せる恐ろしい作戦を考えているのでわしは必死で止めるが、ベティにお菓子を出して口説く二人であった。
「あたしは子供か! 頭を撫でるな!!」
ただ、ベティはその子供扱いが気に入らないらしく、二人に【デコイ】の魔法を教えないのであったとさ。
「ちょっとちょっと~?」
お菓子を両手に持つベティはわしを空中庭園にこっそり呼び出すので、何か用かとわしは続く。
「あの二人は普通に転生のこと喋ってるけど、どゆこと??」
「わしの家族には転生のことを教えているから大丈夫にゃ。みんにゃすぐに信じてくれたにゃ~」
「まぁ猫がこんなに不思議なことしてたら、猫と言われるほうがおかしいか……」
「ちにゃみにリータも、異世界転生者にゃ~」
「うそ!? どこから来たの? やっぱり日本人??」
「いや、岩にゃ」
「い、わ……なんて?」
ベティは同郷の人かと興奮していたので、わしの言葉は聞き取りにくかったようだ。
「あ、岩手の人??」
「だから岩にゃ~」
「いわって、あの岩? 石を大きくしたような」
「そう言ってるにゃ~」
「はあ!?」
やはりベティも岩が異世界転生している事が信じられず、補足を求められても岩だから補足する内容も無いので、ますます混乱するベティであったとさ。
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